デーモンズ襲来
――レイの寝室。
レイは窓の外を眺めながら、今日一日の出来事を思い返していた。
(エルビン様はああ言っていたけれど……今までマスターソードを完璧に扱えた人なんていなかった。このままだと……世界が……)
エルビンとのお茶会の後、彼はガリア王に会いに行った。
ガリア王は「エルビンならば任せられる」と判断し、マスターソードの使用を許可した。
だが、レイの胸の不安は消えることがなかった。
レイは窓を閉め、ベッドに入ろうとした——その時だった。
ドカァーン!! バゴォーン!!
激しい爆音と共に、城全体が大きく揺れた。
「一体、何!?」
レイが慌てて窓を開けて外を見ると、王国の入口が半壊し、炎が上がっているのが見えた。
レイはすぐに寝巻きから鎧へと着替え、戦闘の準備を整える。
その時、一人の兵士が慌てた様子で部屋へ飛び込んできた。
「レイ姫!! 大変です! デーモンズが襲撃してきています! 急いで避難してください!」
レイはすぐに問い返した。
「お父様やみんなは無事なの!?」
兵士は息を切らしながら答える。
「王、王妃、そしてミラ姫はすでに避難しております! あとはレイ姫だけです!」
レイは胸をなで下ろすように小さく息をついた。
「……そう、良かったわ。エルビン様は?」
兵士はすぐに答えた。
「入口へ向かい、デーモンズと交戦中です!」
――王城・牢獄
薄暗い石造りの牢獄。
湿った空気が漂い、どこからか水滴の落ちる音が響いている。
剣夜は牢屋の床に寝転び、ぼんやりと天井を見上げていた。
「……暇だ」
ぽつりと呟く。
(記憶を消すなら早く消して、さっさと帰してくれねぇかなぁ〜)
片足をぶらぶらと揺らしながら、完全にやる気のない顔で寝転んでいる。
牢屋の中とは思えないほど気の抜けた姿だった。
しかし――
ドゴォーン!!
突然、轟音が響いた。
続けて、
ガゴォーン!!
大きな衝撃が城全体を揺らす。
石の天井からパラパラと砂が落ちてきた。
「うおっ!?」
剣夜は驚いて飛び起きる。
「嘘だろ!? 今度はなんなんだよ!」
慌てて周囲を見渡した。
牢屋の外の通路では、兵士たちが慌ただしく走り回っている。
鎧のぶつかる音、怒鳴り声、慌てた足音。
明らかに異常事態だった。
「おい! 何か起きたのか?」
剣夜は鉄格子に近づき、近くを通りかかった兵士に声をかけた。
しかし兵士は一瞬こちらを見ただけで、
「……」
何も言わず、そのまま階段を駆け上がっていった。
「ちょっと待てよ! おい!」
剣夜は鉄格子を掴み、叫ぶ。
だが誰も振り向かない。
牢獄は次第に騒然としていった。
周囲の囚人たちは恐怖に怯え、隅でうずくまっている。
「なんなんだよ……」
剣夜は舌打ちした。
その時だった。
ふと、鉄格子に違和感を感じた。
「……ん?」
よく見ると、鉄格子の一部が歪んでいる。
さっきの揺れのせいなのか、根元が少し浮き上がっていた。
剣夜は目を細める。
「……マジか」
ゆっくり鉄格子を揺らしてみる。
ガタッ。
思った以上に動いた。
「これは……」
一瞬だけ考える。
そして小さく笑った。
「やるしかねぇな」
剣夜は距離を取り――
思い切り蹴りを叩き込んだ。
ガンッ!
鉄格子が揺れる。
もう一度。
ガンッ!!
さらに歪む。
三度目の蹴り。
ドガァン!!
ついに鉄格子が外れ、重い音を立てて床へ倒れた。
「……!」
剣夜は一瞬固まる。
それからニヤリと笑った。
「脱出成功」
牢屋の外へ一歩踏み出す。
だがすぐに気を引き締めた。
「……って、まだ安心はできねぇな」
周囲を見回す。
兵士は全員、上階へ向かって走っている。
牢獄にはほとんど誰も残っていない。
遠くから、爆発音のようなものが聞こえてくる。
剣夜は拳を握った。
「とりあえず……ここから出ないとな」
牢獄の通路へ足を踏み出す。
その先に何が待っているのか――
まだ剣夜は知らなかった。




