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タイトル未定2025/09/30 16:29

婚約破棄された“無能令嬢”ですが、処刑寸前に世界最強の力に目覚めました

第一章 断罪の日


 王都最大の広場には、朝から黒山の人だかりができていた。

 石畳の中央に建てられた断頭台。その上には、縄で両手を縛られた一人の少女が立たされている。


 侯爵令嬢リリアナ・グランチェスター。

 かつて王太子アルバートの婚約者として栄華を約束されていた娘。だが今は「魔力を持たぬ無能」と蔑まれ、反逆罪の名の下に処刑を待つ身であった。


「見ろよ、あれが“無能令嬢”だ」

「婚約破棄されただけでなく、処刑までとはな」

「ざまぁみろだ」


 群衆の嘲笑と罵声が、彼女の耳を打つ。

 リリアナはそのすべてを静かに受け止め、顔を上げた。

 蒼穹は青く澄み、雲一つない。――まるで、彼女の最期を見届ける舞台を整えたかのようだった。


 壇上の中央に立つ王太子アルバートが高らかに宣言する。

「リリアナ・グランチェスター! お前は無能でありながら王妃の座を欲し、王家に仇なす陰謀を企てた! よって、本日ここで処刑とする!」


 群衆は歓声を上げた。

 リリアナは静かに目を閉じ、唇を噛んだ。

(……私は、本当に“無能”だったの?)


 幼い頃から、魔力の欠如を理由に冷遇されてきた。学園でも使用人にも嘲られ、唯一の救いは婚約者である王太子の存在だった。

 だがその彼も、より強大な魔力を持つ令嬢イザベラを選び、リリアナを断罪したのだ。


「無能は無能らしく、ここで終わるがいい!」

 アルバートの嘲笑が響く。


 刃が振り上げられ、太陽の光を反射した。


第二章 目覚める力


 その瞬間だった。

 リリアナの胸の奥で、何かが砕け散るような音が響いた。

 視界が揺らぎ、世界が金色の光に包まれる。


 カシャン――!

 振り下ろされた刃が、彼女の頭に触れる前に粉々に砕け、光の粒となって消え去った。


「な、なんだ!?」

「刃が……消えた……?」


 広場がどよめく。

 リリアナの両眼が黄金に輝き、周囲の空気が震えた。

 彼女の足元から魔力の奔流が巻き起こり、観衆の持つ灯火や護衛兵の魔法が次々と吸い込まれていく。


「まさか……魔力を“吸収”しているのか!?」

 廷臣の悲鳴が上がった。


 リリアナは縛られた縄を意識することなく砕き、ゆっくりと立ち上がった。

「……これが、私の力……?」


 掌をかざすと、集まった魔力が渦を巻き、炎となって天に噴き上がる。

 群衆は息を呑み、跪いた。


第三章 逆転の宣告


「ば、馬鹿な……! お前は無能だったはずだ!」

 アルバートは蒼白な顔で叫んだ。

 隣のイザベラも震えながら後ずさる。


 リリアナは冷ややかに彼らを見据えた。

「無能? いいえ。私の力は“全ての魔力を無効化し、取り込む眼”。――世界最強の力です」


 アルバートが必死に炎の魔法を放つ。

 だがその炎は一瞬で霧散し、黄金の光となってリリアナの身体に吸い込まれた。

「な……なぜだ……!」


 イザベラが悲鳴を上げる。

「そんな力、存在するはずがない!」

「存在しているわ。私が、証明する」


 リリアナは掌を振り下ろし、地を揺るがす雷を叩きつけた。

 石畳が割れ、衝撃に群衆がひれ伏す。


「――これが、あなたたちが“無能”と切り捨てた私の真の姿」


第四章 ざまぁの果てに


 王都は騒然となった。

 群衆は恐怖と畏怖の入り混じった声で叫び、やがて一斉にひざまずいた。

「聖女様……!」

「いや、“魔眼の女王”だ!」


 リリアナは玉座の間を思わせる断頭台の上から告げた。

「私は王妃の座を望まない。権力にも興味はない。――けれど、私を無能と呼び、嘲り、切り捨てた者たち。覚えておきなさい」


 黄金の瞳が光を放ち、群衆を照らす。

「“無能”と呼ばれた者が、最強となり得ることを」


 アルバートは蒼白のまま膝を折った。

「リ、リリアナ……許してくれ……!」

「許し? それは、私の口から出る言葉ではないわ。――あなたが自らの罪と向き合いなさい」


 彼女は背を向け、群衆の中へと歩き出した。

 もはや誰も、彼女を無能と呼ぶ者はいなかった。


第五章 結末


 その後、リリアナは“聖女”とも“魔眼の女王”とも呼ばれるようになった。

 だが彼女自身は、王宮にも権力にも興味を示さず、ただ人々を癒し、守るために力を使った。


 彼女を処刑しようとした王太子とその取り巻きは、民衆の怒りによって失脚し、やがて歴史の闇に消えていった。


 ――一人の“無能”と呼ばれた娘が、国を揺るがす存在へと変わったのだ。


 黄金の瞳を持つ彼女の物語は、この日を境に新たに始まった。

 だがそれは、また別の物語である。

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