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第三章 ヒロインとの出会い
学院のヒロイン──ルネッタ・ヴァレンス。
平民出身ながら魔法の才能に恵まれ、優しく謙虚な性格で誰からも好かれる少女だ。
彼女は王子であるヴィクターに恋をし、アンジェリカがそれを妨害する──典型的な三角関係。
それが王家の描いた構図だった。
だが、エリオはルネッタに会った瞬間、胸が締めつけられて苦しくなる。
あんなに純粋な人には会った事がない。
ルネッタ自身も、エリオが演じる『悪役令嬢』に怯えながらも、決して憎んではこなかった。
寧ろ、ある日こんな事をアンジェリカに言ってくる。
「アンジェリカさん……貴方は本当に人を傷つけるのがお好きなんですか?」
その言葉にエリオは言葉を失ってたじろいだ。
「……好きだなんて……思ってる訳ありませんわ……」
思わず零れた本音。
だが直ぐにその事に気づいて、口を閉ざすと扇子で顔を隠す。
ルネッタはエリオにふわりと微笑みかけた。
「きっと何か訳がおありなのですね」
その優しさに、エリオの心が少しずつ溶けて、揺らぎ始める。