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七瀬ヒカリ編

【いとも容易く行われるえげつない暴力】

放課後の校舎裏。

夕日に照らされたグラウンドでは、何人かの応龍がぐったりと倒れていた。周囲に吹く風は静かだが、そこに立つ一人の生徒の存在が、空気を凍らせるような緊張感を孕んでいた。


「これが…お前たちの“絆”ってやつか?応龍ごときが束になったって俺たち虹龍にはポテンシャルで勝てないってのにな」


そう言い放ったのは、学級委員長・七瀬ヒカリ。

短く整えられた金髪と、無表情で何かを見下すような目。制服の腕章には「虹龍階級・戦闘許可」と刻まれ、まるで誇示するかのようにその腕を組んでいる。


「校長に認められた存在に逆らうなど、身の程知らずもいいところだ。」


その言葉を合図に、残っていた応龍の一人が立ち上がるが——瞬間、七瀬の体が虹の軌跡を描きながら相手に接近、拳一発で地に沈めた。


力の差は歴然。

虹龍である七瀬は、異常な再生力と肉体強化能力を持ち、どんな傷も瞬時に治す。まさに“正義の鉄槌”と呼ばれ恐れられていた。


その光景を、木陰から見つめていた王。

拳を握りしめ、歯を噛み締める。


「こんなことが“正義”なら、俺が変えてやる…!」



【応龍の逆転】


その夜、人気のない体育倉庫にて。

七瀬ヒカリは次の「応龍狩り」の計画を立てていた。そんな彼の前に、王が立ちはだかる。


「七瀬…!もうやめろ!」


「やめろ?王、お前は何もわかっていない。俺はこの力で、秩序を守っているんだ!」


七瀬が振りかざした拳が虹の軌跡を描いて空を裂く。王はかろうじてかわすが、速度と威力が桁違いだ。防戦一方、ボロボロにされる王。


しかし——。


「なら、その力を借りる…!」


王の瞳が光ると同時に、あえて攻撃を受け止め七瀬の腕に噛み付いた。


王の体がうっすらと虹色に輝き出す。

それは、王の禁術「応龍喰おうりゅうしょく」。

相手の能力を取り込み、寿命と引き換えに模倣する禁術だった。


王の噛み付いた傷口から、虹色の光が脈動のように王の体に流れ込んだ。

「……ッ、熱い……けど、止まれねぇ……!」


「なっ…!?」


自身と同じ力を持った王に混乱する七瀬。そのわずかな隙を突き、王が跳び上がり渾身の一撃を七瀬の胸に叩き込む!


「お前の正義は、誰かを傷つけるためのものじゃない!」


七瀬は吹き飛ばされ、地に伏した。


「……偽善、かと思ってた。だけど……違うんだな……俺が、間違ってたのか……」


「応龍が秩序を乱す。俺たち虹龍が秩序を保つ。それが“正しさ”だと教わってきた」


その瞳には、今まで見せなかった“迷い”が浮かんでいた。



七瀬は敗北ののち、心に空いた穴と向き合いながら少しずつ変わっていく。

正義は押しつけるものじゃなく、寄り添うものだと気づいた彼は、やがて心からの優しさを知る一人の少年へと成長していく──。


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