9.孫子曰く(そんしのたまわく)
誤字脱字、読みづらい部分を加筆修正いたしました。
おはようございます。池上翔太 魔法高等学校ーさいたま校ー2年C組 兵法研究家です。
今日は、通っているダンジョン施設でお勉強です。
朝、今日は、昨日の夜買った、スーパーの半額弁当です。海苔弁です。
スーパーの惣菜担当チーフのお兄さんは、半額シールを気分次第で貼っていきます。神です。
お兄さんの貼る瞬間が勝負です。3m先からその一挙手一投足に全集中、最早スローモーションに見えます。すすすー、と近寄ります。十時の方向に敵接近2名。歴戦の主婦、強敵です。貼リ終わる瞬間手を乗せます。タッチの差で勝利です。お腹の脂肪で圧力をかける主婦の必殺技は脅威ですが、お腹の下が見えないのが弱点です そこから手を出せば勝ちです。勝負に”もしも”はないですが、買い物籠でガードされたら負けてました 間一髪です。もう一人のリーマンのおやじはヘタレでカートを押していました 基本がなってません 買い物カゴは腕で持たないと機動力で負けます。やはりダンジョン攻略で培った俊敏性は世界制します。
海苔弁とシャケ弁の2つをゲットできました。シャケ弁は昨日の夜食べました。
とっても美味しいです。
今日はアライさんちは無視です。昨日の長男長女の生首事件のせいで、夜夢を見ました。
子鬼達が俺の頭を取り合いする夢です。悪夢でした。
・・・・・・最悪です。忘れるまで無視です。
青ツナギでなく、普段着で速攻ダンジョンに行きます。
<おべんきょ、おべんきょ>
今まで気にしていなかったのですが、このダンジョンの名前は、さいたま第5ダンジョンと言います。
ダンジョンにある協会の施設には、必ずそのダンジョン固有の情報を閲覧するコーナーがある。
壁面には、魔石の納品推移表などが貼ってあった。おおー、10クラス魔石がぐんぐん伸びてますね。
今日も190個納品した。少しづつ減らそう自然消滅偽装キャンペーン中なのだ。
守秘義務があるので個人は特定できないはず。はず。
国の発表が正しければだが、個人情報保護法の改訂で、ダンジョン探索者個人の魔石納品数は、ダンジョン協会職員であっても閲覧できないはず。裁判所が当人の同意を得て閲覧が許可されると書いてあった。
今日は、お勉強、お勉強
さて次は5階層なのだが、ここは、ゲートキーパー部屋だ。
子鬼最後の関門となる。
4層から5層の階段を降りると、扉が2つある。右の扉がゲートキーパーの部屋行きで、左の扉がスキップルートだ。何度でもゲートキーパーへの挑戦は可能だ。
スキップルートは、一度ゲートキーパーを倒すとスキップして6層に行ける。倒してない者は頑強な壁だが、倒した者は、何も無いように壁をすり抜け6層へ行く。ファンタジーだ。
ゲートキーパーの部屋は、20m四方の正方形だ。
ここで問題なのが、ゲートキーパーを倒すのにソロとパーティーでは出てくるモンスターが違う。
パーティーの場合は、剣ゴブ、槍ゴブ、メイジの子鬼3体だ。4層まで攻略できるパーティーなら楽勝だ。
ところが、ソロの場合は、ホブゴブリン3体棍棒持ちが出てくる。
強さは、オークと同程度の筋力と防御力だが、俊敏性が高い。つまり6層のオークより強い。
それとソロの時だけ、周りの壁にトラップが3つ現れる。
それは、壁に大きく❖のマークが入口から見て左側の壁中央に銀、右側に金、中央奥にレインボー色になって、輝いている。
銀は触れると魔力を吸い取るが、何とか頑張れば逃げられる。
金色は、1m手前から勝手に体が引っ張られる。
レインボーになると3m手前から引っ張られる。
実験のためソロで入った上級冒険者の話では、銀色のマークに手を置いている間は、魔物は動かなかったそうだ。だが魔力を吸われ必死になって剥がした時には魔力があまり残っていなかった。運良く2体までは倒していたので必死で3体目を倒した。
もし最初にトラップに触っていたら生還できなかったと話したそうだ。
金色、虹色に捕まったら死を意味する。
左側で戦うのがセオリーだ。
最後に入口と反対側の扉が開いたら6層へ行ける。魔石を拾うのを忘れずに。
この試みは全世界で行われていて、出てくるモンスターが違うだけで、概ね結果は同じだった。
ゲートキーパーのランクがソロの方が上がり、トラップが付いていることから、ダンジョンは、ソロは嫌い、パーティーは通り易くしている。というのが安全性だけでないソロを忌み嫌う原因なのだ。
それでも俺は、ボッチで攻略する。何が何でもだ。
ホブゴブには、膂力は負ける。
俊敏は俺が勝る。
人数は負ける。
フィールドは20m四方と狭い。
銀のトラップは、弱い。
左側で戦うか・・・
うーん
・
・
作戦が閃いた。
それから、立ち回りを考えながら攻略方法を煮詰めていった。
厳しい戦いになるのは明白だ。一瞬の動作もミスできない。
痺れる。
昔、アメリカ大リーグに二刀流で殴り込みをかけた日本人がいる。
彼がバッターボックスに立つと、敵の監督は、苦手なピッチャーに替える。
彼は、タブレットで簡単な情報を見るだけでバッターボックスに立つ。
彼は、対峙している今の相手を見ている。
相手は、エネルギー充分、抑える気満々だ。
だが、彼は、ホームラン王になった。MVPを獲った。
勝負は一瞬、相手の弱点を見るだけで充分。
過去の相手のデータをすべて見れば今日の相手がそう動く確率は高い。
では、今日だけそうでなかったら?100回中99回がそうでも今日は違ったら?
探索者の場合、それは死を意味する。
そんな賭けは真剣勝負ではしない。
相手を上回るものだけが常勝するのだ。
唯ひたすら動作をトレースする。相手の攻撃予測と反撃を頭に叩き込む。
ノートに書いて夜にもう一度反復練習をしよう。いや、納得するまでだ。
俺は相手に臆しない気持ちを作るためにしているだけだ。
実践ではその通り動く気はさらさら無い。
ただ、体は自然体に常にニュートラルにリラックス。
今、そこにいる敵、臨機応変こそ技だ。
何があっても、勝つのは、俺だ!
<帰ろうとしたら>
受付の前を横切ると後ろから
「ねえ、君、青ツナギの子だよね。」
年の頃は、20前後?。セミロングの中肉中背、目はぱっちりの美人さんかな。
「いいえ、人違いです。」
立ち去ろうとすると、腕をガシッと掴まれた。主に胸で、もう一度いう主に胸で、ぷにと柔らかいものが。
一瞬モテキ?と過るが、そんな事は絶対にないと知っている。
でも振り解けない。物理的でなく心理的に。
「離して下さい」
「だって、逃げようとするんだもん。話聞いてくれる?悪い話じゃないよ ねえねえ」
悪い話じゃないとは、絶対悪い話だ。
学校でパープルちゃんに”嘘告”された時と同じ顔だ。
屋上で「間に合ってます」と言ったら、動画を撮ってた奴に、「好きです」って言えと強要されたっけ。無視したら仲間にフルボッコにされたな。
再度、振り解こうとすると
「あなたボッチでしょ。一緒にパーティー組んであげようって話よ。
私みたいなナイスバディーな18歳に言い寄られるなんて、あなた持ってるわね。
今OKすれば取り分は、なんとフィフティ・フィフティよ。ホームランと盗塁なら前人未到よ。
あなたは、私の”どストライク”だし、人生初めての一目惚れってやつ。夜も一緒に、ふふふ」
はい、アウトー、これってハニトラだ。ダンジョン協会からお達しがあったやつだ。
探索がしたくない、魔法が弱い女性が、体をチラつかせ働かさせる。
ここまでは、一応当人もOKならば恋人として合法だ。二人が幸せなら二人で乗り越えてね。
それ以上に酷い奴は後ろに㋳さんがいて、俺の女をむりやり・・・訴えて出てもいいんだぞ。網走行くか?
と脅すやつだ。
ふざけんなよ。そんな手に誰が引っかるか。こちとら、チビ・デブで女性が嫌う3種の神器にリーチかかってんだ。父ちゃんはてっぺん薄いんだぞ。ボッチ歴≒学歴のパーフェクトDT、いじめられ事案は、てんこ盛りの俺にそんな美味しい話があるか。
俺を好きになる女なんてこの世にいないんだよ。ちょっと悲しくなってきた。目からケチャップが・・。
あまりここは客観的に見たくない領域なのよ。でも人なんか絶対信じない。そうやって生きてきたから。
「結構です。間に合ってます。他を当たって下さい」
伝家の宝刀、母さんがしつこい勧誘を追い払っていた時の口癖だ。
「魔石30%でいいからさ、あんたが数週間、毎日100個以上魔石納品してるの知ってんのよ。私の体を自由にしていいからさ、どんなプレイもOKだよ。ねえねえ」
うん?
「ちょっと待ってください。何で毎日納品しているのをあなたが知っているんですか」
「え?そんな細かい事気にすると剥げちゃうよ。ねえお願いよ。あなた素敵だから我慢できない。もうホテル行こう。」
振り払っても今度は手を両手で握って離してくれない。
そのまま引摺りながら受付に行く。
「お姉さん、なぜ彼女は俺が魔石を納品していることを知っているんですか。見ているはず無いですよ。いつも魔石受取機に入るのが見えるのは、あなたしかいないんですから」
「隠れてみていたかも知れないでしょ。私は知らないわ。」
閑古鳥が泣いてるダンジョンの受付横だぞ、通り道なら分かるが、受付けには、誰もいない時を狙って納品している。しかし、例外がいる。それは受付嬢だ。
「わかりました。では、協会のコンプランス委員会に通報しますね。個人情報保護法違反の疑いがあると。ここにはカメラが3つあります。個数が分かるはずないので、パソコン履歴も調べてもらいましょう。俺が来た時、彼女が写っているといいですね。俺そんなに納品してないし学生ですよ。それじゃ」
パソコン履歴はハッタリだ。建前上協会関係者は個人の魔石納品のクラスと数は分からないはずだが、抜け道あるかも知れないし。
「ちょ、ちょっと待ってよ。私は、毎日顔は見るけど沢山魔石納品したなんて言ってないわよ。個人成績だって見れるわけ無いでしょ。だからちょっとやめてくれる。それに、彼女を紹介したのは事実よ。だって誰もパーティー組んでくれないんでしょ。だから今空いてる彼女に話しただけよ。善意だからね。善意」
するとセミロングのお姉さんが参戦してきた。
「ちょっと、聞き捨てならないわね。あなた優良物件だって言ったじゃない。魔石だって100個くらいビニール袋で納品してるって。それじゃなきゃこんなチビ・デブ・ハゲに媚び売ったりしないわよ。訴えられたらあんたに言われたって言ってやるから」
流石に高校二年生でハゲていない。リーチだからツモってないから。
ギャーギャー二人でやり合っているが、収集の目処はつかない。
仕方ない。
「お二人共、シャラップ!黙って下さい。訴えませんから。だからもう俺には構わないで下さい。今度絡んできたらお二人の話協会に渡しますからね」
おれは、徐ろにスマフォが録音状態なのを二人に見せた。
一瞬二人共、俺のスマホに手を伸ばしたが、サっとポケットに戻す。
「いいですか、ネット保管ですからスマフォ奪っても意味ないですよ。そちらから何もしなければこちらも何もしません。ただなにかしたら分かりますよね。」
そう言ってその場を去った。
まったく、こっちは明日ゲートキーパー戦なのに無駄な労力を使わせないでくれ。
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