4.いざ、初めてのダンジョン攻略
ツナギのサイズがおかしいので、変更しました。
誤字脱字、文面の表現が不自然なところを加筆修正致しました。
おはようございます。池上翔太 魔法高等学校ーさいたま校ー2年C組です。
今日は、初めてのダンジョン攻略です。
朝、目玉焼きを食パンに乗せて頂きます。調味料は塩です。
パンは5枚切り20%OFF、卵は不ぞろいのやつです。
美味しいです。
服装は、青の長袖ツナギ4L(半額で買いました。サイズがデカくて残ったようです)です。
だぶだぶなので袖、丈を捲りまくります。超短足になってしまうのでお腹の所を折り返して縫いました。カンガルーいやワラビーのお腹みたいです。(猫型ロボットでは断じて無い。お腹白くないし)結構物が入ります。(4次元ポケットではない。大きめの腹巻きですアライさん家の末っ子が入りそうです)
安全靴、安全第一ヘルメット、プラスチックの防護メガネは、近くの建設現場のゴミ箱から拾いました。現場の偉そうなおじさんに怒られそうなので、朝の4時ころ漁りました。ゴミなのでセーフです。
ちょっと傷だらけですが3セットは揃ったのでもう来ないと思います。
腰に金属バットを紐で括り付けました。あ、バットは背負いバックに入れました。
カチコミと間違われると大変です。
背中にバッグを背負って準備完了です。
出掛けにアライさん家の娘さんが”じー”っとこっちを見てました。
「ふっ、俺に惚れるなよ」と一応手を振っときます。
さいたま校の近くには、7つのダンジョンがありますが、全国的に見ても多い方です。
学校近くのダンジョンは、生徒が多いのでパスします。30km離れた場所にダンジョンがあるのでそちらに行こうと思います。寮から見れば25kmですし辺鄙なので探索者が一番少ないと言われています。
あちらにはコンビニが無いので、お昼は近くのコンビニで鮭おにぎり2個と奥秩父2Lの天然水です。
今回は主要幹線道路を通ります。舗装されているので楽ちんなんですが、舗装道路は、基本的に有料になりました。ETC付きで勝手に口座から引かれます。今回は往復300円です。
さいたまにある全てのダンジョンは、1層がスライム、二層が子鬼と初心者階層にはほぼ差がない。
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1時間で着きました。信号が殆どありませんでした。朝の8時です。
まず受け付けに行きます。ダンジョンマップを買うためです。ダンジョン内の形状がダンジョン毎に違います。
「すいません。ダンジョンマップください」
「学生さんね。学生証見せてちょうだいね。」
そう、学割が効くのだ。
「はい半額の5000円になります。」
結構お高いが、1階から10階までのA3十枚綴なのだ。
「一人なの。攻略するならパーティーでないと危ないよ。出直してきなさいな。」
いちいち面倒くさいが、ここは、綺麗なお姉さんなので我慢我慢。
「大丈夫です。危なければ戻りますので」
「あのねー、危なくなってからでは遅いのよ。ソロを推奨しないことぐらい学校で習ったでしょ」
学校でも斥候(索敵と遊撃)、盾持ち片手剣(前衛)、メイン剣士、第3経路発現者の遠距離魔法使い(後衛)の4人が基本パーティーと教わる。ここに各パーティオリジナル要員を加えて優位性を確立するのが一般的考え方である。
斥候役は、目が良く、逃げ足が早く、目立たない小柄の者が良いとされている。
盾持ち片手剣は、タンク謙アタッカーで、モンスターの初撃を受ける役目のため、力の強い者が良いとされている。
メイン剣士は、タンクの足止めから、臨機応変に攻撃する。一番モンスターを倒す花形だ。剣技が優れていることが重要視される。
第3経路発現者がいわゆる魔法使いで、遠距離攻撃以外の遊撃も行い剣も持っている。単体撃破、範囲殲滅など得意魔法によって戦略は様々である。
この4人がいることで、負傷時リスクが大幅に減ることは間違いない。探索者ソロは、一撃貰えば簡単に挽回できない。フォロー役がいる強みは大きい。
ああ、めんどい。そんな事は探索者なら誰でも知ってる。俺は初歩の身体強化すら使えないんだから、誰がパーティーに入れてくれるんだという話だ。でもここで身体強化が使えないと言えば火に油だ。
「ぼっち、いやソロで入るのは自分の意志なので」
「そんなこと言ってんじゃないのよ。死亡率知ってるの?半分この世からいなくなるんだよ半分。それをビギナーがソロで探索しまーすなんて頭おかしいんじゃないの?普通、許されるわけないでしょ」
そこまで言うなら、魔力の通らない金属バットもディスって欲しいな。感情的で分析力が足りないぞお姉さん。
「それは、あなたの許可がないと入れないという事ですか」
「あんた、これだけ言って分からないの。これは先輩からのアドバイスでしょ。先輩の話は聞くものよ。
早く帰りなさい」
人の話を無視して自分の意見が全て正しいと思う人は、信用できない事を嫌というほど学んできた。
最早こんな不毛なやり取りはしない。
「ダンジョン探索者は、ダンジョンに入るのは自己責任であり、如何なるものもそれを妨げることは出来ない。そのため他者は一切の責任を負わない。この法律知ってますか。私の意志でと言ったはずです。そちらの事情は知りませんが、これ以上引き止めるなら訴えますよ。早く地図を下さい」
受付のお姉さんは、地図を投げ渡してきた。小さい声で「☓ねよ」と聞こえた。
お金を払い、ダンジョンに向う。そんな言葉は耳にタコが出来るくらい聞いてきたよ。
<気を取り直して>
一階の入口にダンジョンパス(又はダンジョンカード)を通す。
ダンジョンパスは、高校入学時に自動的に配布される。非接触カードになっており、一生使える。再発行もダンジョンの受付で簡単に出来るが、500円取られるので要注意。
今日の探索は、一階のスライムが狙いだ。
通常、探索初心者は、2層の子鬼(ゴブリン、チビ鬼とも言う)を標準で狩る。これはスライムが不人気だからだ。需要は結構あるのだが、ちょっと問題がある。
それは、スライムの溶解液が問題なのだ。スライムを倒す方法は、核と呼ばれる部分を破壊するか、中の体液を全て外に排出するかのどちらかだ。99%は青スライムなのだが、体の中が見えない。また、剣で突くといくら魔力を込めていても少しづつ溶けてしまう。10から20体ぐらいで剣の先っぽが無くなってしまうのだ。
青銅剣は一本5万円するに対して魔石は一個500円だ。つまり1万円なので4万円の赤字なのだ。
ファイヤーボールで倒すと初心者など10発打てれば良い方だ。それからスライムは剣には弱いが一般の遠距離魔法に耐性が高く一発で倒れないことが多い(ぷよぷよした表面の弾力性が衝撃を逃がすからと言われている)スライムは、何もしなければ襲ってこないが、襲われると反撃の体当たりをしてくる。これが厄介で体当たりした時に剣などで払いのけると弾けて溶解液を全身に浴びてしまう。当然全身が溶けてしまうので、身体強化(身体強化中は、肌についても溶けない)しながら速攻で真っ裸になり、全身の溶解液を洗い落とさないと大変なことになる。一般的には全身洗うのに10Lの水が必要だと言われているが、誰も10L(10kg)なんて持っていない。
こんな状況なので、協会も買い取り価格を300円から500円に上げたがほぼ誰も積極的に収穫しないのだ。大体が、探索の帰りの一層で、遠距離魔法使いが余った魔力で狩るだけだ。あまりにも少ないので指名依頼を赤字覚悟で全国で行っている。探索者中級の魔法の精度が高い人がほぼボランティアで狩っている。噂では1個700円の買い取りキャンペーンを行うのだがスーパー銭湯の11枚綴の券が付いてくるそうだ。それでも女性探索者は、絶対参加しない。だって溶解液を顔に浴びたらお嫁にイケなくなっちゃうよ。
魔石の探索者買い取り価格と流通問屋卸価格、一般市民への小売売価は、8クラスまでは全て全国一律に決まっている。
10クラス スライムなど 買い取り 500円 卸売 700円小売売価900円
9クラス 子鬼(チビ鬼、ゴブリン) 2000円 2500円 3000円
8クラス ブタ男 7000円 8500円 10000円
ここまでは一般家庭で利用するので値段が決められている。数も多い。
8クラスは乗用車やトラックに使われているが、8クラス魔石1個の能力だと乗用車が時速50kmで1日8時間使用で約5日間走れる。走行距離の合計は2000kmになる。1万円だ。
2020年代の乗用車がガソリン1L200円で20km走る(燃費が良く、価格も高く見積もっている)と想定すると2000km走るには2万円になる。
魔石の場合、最高出力で走ると、1日のインターバルが10時間以上必要になる不便さはあるが、3個持ってれば24時間走行も可能だ。
ざっくりとした計算だがコスパは倍以上いいのだ。
業者も儲けは少ないが、社会事業だと頑張っている。実際は別に国から補助が出ている。
<さてさて本題へ>
翔太です。今からスライム狩りをします。
まず装備の確認です。この前行った工事現場で作業前にしていたのがカッコよかったので真似てみます。
「指差し呼称は心を込めて!」
・ヘルメット装着よし!
・ツナギよし!
・防護メガネよし!
・安全靴よし!
・金属バットよし!
・バックよし!
すべてよし! ”パチパチパチ”
次にラジオ体操するんだけど、お姉さんとのバトルで疲れたのでまた今度にします。
次に地図の確認です。
ほぼ丸い円のようです。半径5kmですから、円周は約31kmです。
とりあえず左側から回っていきます。
いよいよ狩りがスタートです。(ワクワク、緊張もしますが高揚感が凄いです)
入口から左回りに進みます。石ころが多くて歩きにくいです。
第一スライム発見です。ぼっちです。(俺じゃないよスライムだよ)
スライム側から攻撃はしてきませんので余裕で準備します。
今回考えた秘策は、パンチの拳の前に魔力を集中させ、楽器のシンバルのように内側を凹ませた円形にします。次に「硬化」させます。
次に静かーーにスライムの真上に移動します。
そして「ハイパウアー・メガトン・パンチ!!」掛け声大事です。力が籠もります。
「ビュシュアーー」
成功です。スライムが上からの圧力で破裂しましたが、こちらに被害はありません。
シンバルが傘になって地面にしか飛び散りませんでした。
「ふーー、やったぜ!!俺だってモンスターを倒せる」
ちょっと叫んでしまいました。うれしいですーー(≧▽≦)!!
遂にスライム大量攻略の道筋ができました。
??
あれ?・・・何か臭い?ふんばったから?”クンクン”いや違う臭い?
足下にふと目が行った。
「がああーー靴から煙がーー」
と、と、とにかく靴を脱ごう、あ、足に魔力だ。「ふんむっ!」
ビックリしたなあもう。心臓がまだバクバクしてるよ。
<ちょっと落ち着こう>
まず足の確認からだ。
とりあえずなんとも無いな。魔力纏をすると溶解液で溶けないようだ。魔力の濃さが違うからだろう。
靴はつま先が無い、安全靴はつま先に鉄板が入っているのに無くなっている。靴底も失くなっている。
周りには溶解液は飛び散らなかったが地面に広がるから足が地面についていれば浴びてしまうのか。
俺は、10クラス魔石一個(500円)を拾い、裸足で家に帰った。
とっても、とっても、悔しいです。
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