16.いざ、ダンジョン10層超え
おはようございます。池上翔太 魔法高等学校ー2年 新店キラー男です。
今日からダンジョン11層から20層攻略です。1ヶ月の本格遠征です。
朝ご飯は、カツ丼弁当です。
昨日、協会の特捜課の人に”しょっぴかれ”(逮捕連行)てカツ丼食わしてもらえなかったので、買ってきました。
嘘です。やっぱり出陣する”験担ぎ”は大事です。
”カツ”と勝つの寒いダジャレなのは百も承知ですが、不思議と気合が入ります。
美味しいです。
近頃、熟成食品を食べてないので、お通じが悪いです。
贅沢は・・・・体に悪いです。
ドアを開け、大量のお菓子、主にキャラメルコーンを軒下にばら撒きます。 (雨降ると湿気るから)
暫く帰らないので、アライさん家にお裾分けです。
末っ子・・(10分待つ)・・・・見れませんでした。
<さたさて>
今、さいたま第5ダンジョン入口にいます。
いつもは、パスを通すだけですが、今日は、帰り数値1を50にして通します。
これで、滞在期間予定50日になります。
この期間を過ぎて帰りのパスタッチがないと、1日の時は1週間後に、30日以上の時は設定日数プラス30日後に登録しているメールアドレスへ通知が来ます。協会に生存通知メールが返信されないと、所在登録された家に協会員の人が行って生存確認します。それでも所在が分からない場合、訃報を出すシステムになっています。
一切、助けに来てくれまん。
冷たいようですが、まず既に亡くなられた遭難者が多い。
また、救助に向かうと2次災害になる確率が高いためです。
当然、探索者が襲われ帰れない場合、相手の魔物が強いことが予測できます。
探索者は自己責任です。非情です。これが現実です。
<さてさて、気を引き締めて>
ショートカットしながら11層に。
この階層から、出てくる魔物はランダムだ。
階層ごとに傾向は、あるにはあるのだが、命のやり取りに”想定の範囲外”は、通用しない。
11層からは、人型トカゲ(リザードマン)剣士、毒吐き大蛙、角大ウサギ、大蜘蛛、魔吸大コウモリ、爆弾モグラが沢山出てくる。それに、ブタ男各種、子鬼各種、スライムも混ざる。それ以外も細々と出現する。
学校の授業で、初見殺しと呼ばれるのが、角大うさぎだ。見た目は凄く可愛い黒いうさぎ。特に目がきょとんとして虜にされる魔物だ。
遠近がおかしいと気づけばあまり怖くない。1m先にいると思ってしまうが、実は10m以上先にいる。
人間の一般常識では、30cmくらいの大きさが、実際は3m超えの大熊サイズだ。
武器は、爪と牙で、前足の爪は30cm以上ある。
脱兎のごとくと言うが、猪突猛進なのだ。”モフモフかあいい”なんて思ってると一瞬で頭が胴体からさようならだ。5,6回突進をサイドステップで避ければ動かなくなる。そこをフルボッコするのがセオリーだ。
ただ、注意が必要なのは、通り過ぎる時、稀に角ウサギのツノが落ちている時がある。その時は必死にその場を離れないと手榴弾のように爆発して吹っ飛ぶ。
あの角は刺すのではなく爆弾なのだ。
この魔物により、毎年、可憐な女性探索者が命を落とす例が後を絶たない。
俺の場合は、すれ違いざまに首を落として終了。
探索初日は、とにかく”新しい剣に慣れる”がテーマだ。
11層から19層の魔物に遅れを取るとは思えない。慢心ではなく確信だ。
ただ、正確に。ただ、愚直に早く。切る時の力加減。魔力の乗せ加減。無駄のない軌道は美しい。
只々狩るのみ。
1日目は、11層12層をただ駆け巡り狩りまくった。マジックバックがあるので運搬には困らない。
取説では知っていたのだが、毒吐き大蛙の毒霧を浴びると数秒後に全身麻痺で動かなくなる。1日で治るがぼっちだとゲームオーバーだ。スーツのマスクは解毒すると解っていたが、実際に攻撃を受けるのは躊躇してしまった。問題は無かったが、過信は禁物だ。
人型トカゲとの戦闘は、剣士となっていたので剣で対峙したが、オークキングとの立会での感覚と違ってチャンバラにしか感じなかった。剣速が遅すぎ、軌道がメチャクチャ、バランスも取れていないし、膂力も足りないので蹴って倒した。訓練にならなかったので魔弾の的にした。
魔石は、100個以上になり、それ以降数えていない。お金には困っていないが、有るに越したことはないので、しっかり回収した。
お泊り場所は、10層のゲートキーパー扉前、30m四方くらいのスペースがあり、モンスターは入って来ない。過疎化ダンジョンなので、人は居なかった。
居れば居るで面倒なのだが、居なければ居ないで寂しくも不安がちょっとある。
人間ってなんだろう。
2日目から5日目は、11,12,13、14,15層と壁際探索。
ただひたすら壁を触りながら走る。
偶に来る魔物を切り捨てただ走る。
12層1度目は、人型トカゲ5匹の槍バージョン。魔弾で処理。
お宝は、赤いビニール雨合羽、スーツに溶け込むと炎熱耐性フィルムだった。
14層2度目は、でっかい猪。剣で処理。
お宝は、スマホと同じ形をした黒い板。スーツのベルトに溶け込むと少しベルト幅が広がり、ポコっと膨らんだ。魔力バッテリーで魔力を貯蔵できる。
普段は走る時、剣が邪魔なので背中に背負っているのだが、剣の鞘から音がする。”ぴんぴん”と。
魔物が近づいてくると音が大きくなる。剣を抜くと鳴り止む。
1kmから200mの時は、小さく”ぴーん、ぴーん”
30m以内になると”ぴんぴん”と頭に響く。
剣を腰に付けたり、剣を抜くと鳴らないのに。鞘を握ると音がしなくなることが分かった。
ちょっと煩い。お便利機能なのだろうけど、これに頼ったら自身の感覚が鈍くなる。
仕方がないので無視するが煩い。
もう一つ、人が1km圏内に入ると1分毎に”ぶるぶる”震える。近づくと震える間隔が短くなる。
鞘を握ると震えなくなる。
これも邪魔な機能だ。
なぜ気づいたか、いくら過疎化のダンジョンとはいえ偶に探索者は来るのだ。
毒吐き大蛙2体に毒を吐かれて、5人パーティーの一人が倒れて苦戦していたので、遠距離から魔弾で倒した。
別に恩を着せる気はないし、会うと面倒くさいのでそのまま去った。
15層にセーフティーエリアがある。一応襲われた事はないとの事だが、剣を立てて体育座りで仮眠をとる。この時ばかりは、この機能に助けられた。
鞘の中間に緑色のポッチがあったのでそれに魔力を流すと白になり音がしなくなった。
取説に書いとけ。
6日目から10日目は、16,17,18、19層を探索。
ここから、魔物が大きくなった。全ての魔物が一回り程大きくなった。
素早さも上がり、魔法の能力も上がってきた。
角ウサギなんてもう熊よりでかい。可愛くもない。もう大熊でいいんじゃないか。
ツノが3本あって、雷撃を撃ってきたぞ。初動がわかり易いんで簡単に避けられるけど、試しに受けてみたらスーツが少し焦げた。今のスーツの耐久力考えるとオークジェネラルなら倒せるぞ、このうさちゃん。
このうさちゃん、瞬間魔力障壁のいい練習になった。今では、相手の魔法と同等の大きさ、威力で相殺できるようになった。
稀にカウンターで相手に返す事があった。
これは、大変な進歩で、相手が強くなれば相殺する魔力も大きくなる。この辺の魔物に苦労しないが、下層に行けば行くほど相手が強くなる。魔力はどんどん消費される。コスパ重視だ。
魔弾、スイング魔弾、魔力インパクト、瞬間魔力障壁も絶好調だ。
込める魔力も相当濃度が上がっていて、今だったらキングをワンキル出来るかも。
一番進まないのが盾、だってこの層では必要なさすぎ。過剰装備化してる。
剣を使う時は、ただ、正確に。ただ、愚直に早く。切る時の力加減。魔力の乗せ加減。無駄のない軌道。
これらを心がけながら進んでいく。
只々・・狩る。
前に苦労した氷牙大蛇も一刀両断できるようになった。鎌首を軽く撫でるだけ。
今は、切った時、音がしない。前までは、”ザシュン”とか”シュン”と切る音がしていたのが、”フイン”と小さい音がするのは、剣の風切り音。
ここから1.2mくらいの狼が出てきた。10〜30匹くらいの集団だ。
遠距離から数種の魔法で撃ってくる。火、氷、土の球だ。
この敵には、遠距離攻撃が最も有効なはずと思っていた。
だが、的が大きくないうえに、姿勢を低くし常に動く、狙うのは相当の狙撃能力が必要になる。
それでも、俺としては100m先から魔弾で倒せるので、動く小さな的の訓練に最適だった。
しかし、集団が20匹を超える場合、最初の数頭が倒されると全頭が不規則な動作をし始め、狙撃を阻害しながら包囲してきたのだ。
こいつらの攻略が一番厄介だった。
全員が連携を取り、四方10m位の位置からランダムに魔法を撃ってくる。撃っては逃げを繰り返す。
四方4匹の後ろ5mの位置に8匹が囲み、前衛の包囲網が崩れそうになると入れ替わりカバーに入る。残り数匹が全体を見ながら指揮している。
鉄壁の包囲網だ。
攻撃は、典型的なヒット&アウエーを繰り返す。スタミナが無尽蔵に感じる程、しつこくしつこく繰り返してくる。
魔法の威力は、それなりだが、俊敏性が高く、逃げ足が特に速い。
地味だが、ボッチには効果的だ。
普通に対応すると、こっちの俊敏性が高くとも、追いつこうとする前に別の一匹が魔法を撃ってくるので、そちらに対応すると逃げられる。この微妙な攻撃タイミングと追いつかれないギリギリの位置を攻めてくる。
こちらが、攻撃力・防御力・スタミナ・俊敏性が優れていても、余程の差がない限りこのチームワークには及ばない。
今は俺のほうが走る速度は上回っていたので、数発の被弾覚悟で逃げようと思えば逃げれたが、それでは意味がない。
何度か攻撃を喰らいながらも、常に冷静に相手を細かく分析した。
俺は、前方の敵を追いながら、後ろのカバーに入る一匹を狙う。
なぜなら、最前面にいる4匹は、こちらに集中しているが、カバーの8匹は、俺の動作と前衛を確認しながら動いている。
つまり、動作が限定的になる瞬間が存在するのだ。前衛が動く時に俺を見ないで数歩遅れて追随することを発見した。
この予測位置に魔弾を撃つ。これを繰り返し頭数を減らしていき倒した。
中々の強敵だった。戦いは力だけでは、頭のいい奴に必ず敗ける。良い教訓になった。
11日目から15日目は、16から19層の壁際探索。
ただひたすら壁を触りながら走る。
偶に来る魔物を切り捨てただ走る。
19層で1度だけ、トラップ部屋が出現した。人型トカゲ5匹の槍バージョン。魔弾で瞬殺。
お宝は、透明ビニール、盾にかけて魔力を流すと吸い込まれる。盾の耐性強化。
これしか書いて無くて、何が強化されたのか分からない。真面目に取説を書けよ。
盾の訓練も追加したが、魔法、打撃を受けても全く衝撃を感じない。この辺の魔物では訓練にならない。
お泊りは、20層のゲートキーパー扉前。
誰も居ません。ここまで来ると上位冒険者でも大人数になるので、このダンジョンには来ません。
寝る前の魔力循環、バッテリーへの補充は忘れない。
鞘への充填を何十日も行ってきましたが、変化が少しも分からない。
魔力バッテリーは、目盛りがついているので、発見してから充填している。
魔力バッテリーは、ラノベで言うところのマジックポーションに似ている。魔力が無くなると、ここから簡単に補充できる。
ここ数日で、1割溜まった。毎日、体に残った魔力を充填している。自分の魔力量は、人類史上最高だと思っていたが、そうでもないな。
体内魔力は、夜寝ていると少しずつ増え、今までは翌日には満タンになった感じだった。
今は、魔力を放出しても翌日には満タンにならなくなった感じだ。実際に便利なMP量なんてものは無いので、感覚でだが滾る雰囲気が満タンとしていたが、それがなくなって何日経つだろう。
魔力の貯蓄量が供給量を上回ってしまった感じだ。この階層では、毎日全魔力を使うほど魔物との戦闘に使っていないにも関わらずだ。剣への魔力供給もそんなに持っていかれないのに。
ここで、このまま周回しても得られるものはない。少々早いのは否めないが、既に雑魚になってしまった。
数ヶ月でここまで来るのは自分でも驚いている。常識では、5年以上必要な状況を数ヶ月で踏破している。
慢心は無いが、ゲートキーパーに何が必要か分からないし、何処まで強くなれるかも不明。
スーツも剣も盾もまだまだ能力は伸びるだろう。
ここで、安全狩りをしていていいのか? いや、否だ。
16日目、20層ゲートキーパー戦をする。
まず、一般でのキーパーは、大トカゲが出てくる。
大きさは、体長15m、体高5m。伸びる舌での攻撃、尻尾攻撃と踏み潰し攻撃。魔法はない。
攻略は、20人以上のパーティーがチクチク槍で突いて倒すのがセオリーだ。
今度はもっと大きいのが来るのかな。そう言えば、トラップ部屋でスーツに火耐性が付いた。
炎系の大蜥蜴か、あり得るな。盾は何の強化かわからんし。
よし、気合を入れていざ出陣。
ゲートキーパーの扉を開ける。
右手に盾を持ち、剣は帯剣したままで速攻、❖銀の紋様にダッシュ!
中心から大きな黒い塊が出てくる。ゴリラ?
大きさは8m前後か。キングゴリラかな。
足は短いが、何だあの腕は、ドラム缶より太いぞ。
スピードもそれなりに早い。
駄目だ、紋様まで間に合わない。
”ブオン”と音がしながら、俺の身長ぐらいあるんじゃないかと思われる拳が前方から飛んでくる。
こんなのパンチ貰ったら、後ろの壁まで吹っ飛んでくわ。
横っ飛びで避ける。即立ち上がって壁まで走ろうとしたが、一瞬身の毛がよだつ。
速攻、五体投地(地面に張り付くともいう)。真上を後ろから”コ゚ーー”とパンチが通り過ぎていった。
即立ち上がり銀の紋様へタッチし魔力を流す。
危ねー、横目で見た時、体が捻ってた様に感じたので、もう片方のパンチが、後ろから来るような予感がしたのだ。
狼軍団との戦闘で、見えない真後ろから魔法攻撃されて結構被弾した。
あの時の場の空気感に似ていたので助かった。やっぱり実践に勝る訓練はなし。
あんなパンチ貰って、壁に引っ付いたらボコボコにされるどころか、何発も貰ったら煎餅になるわ。
真正面から対峙したら、体がデカすぎて、左右のハンマーパンチが真横から来るから見えないだろ。
横向きだったら、さっきみたいに片方のパンチが真後ろだもんな。
こんな魔物、今まで記録されてないぞ。どう見ても32層以降の魔物だろ。
片方のパンチを受け止められたとしても、チンパンジーのシンバルのおもちゃのようにもう片方のパンチで挟み撃ちだ。どっちみち煎餅は免れないぞ。
盾で防いだら、壁に挟まれて”イカの一夜干し”か”のしイカ”の出来上がりだわ。
パンチを横っ飛びで飛んだ時、”ブオン”って音してたし、その風圧だけで体が少し持っていかれた。
今回のゲートキーパー戦は、予想の斜めを大きく上行ってるよ。
❖銀の紋章がひかり、いつものアナウンス。
「魔力品質 極上、魔力濃度 最高3、魔力量 特大3。適正者と判断します」
光が収まると、3m四方の眩い空間。
そこには、短い靴下、スニーカーソックスが置かれていた。
光の球で取説を読み込む。
靴下をブーツの上から履き、魔力を流すとブーツへ吸い込まれていった。
❖金は、デカゴリラの向こう側にある。絶対前を通してくれるわけがない。
あの速さであの大きさのハンマーパンチを避ける自信は全く無い。
うーん、どうしよう。この部屋から追い出されるのは、あっという間にやってくる。
ふっ飛ばされて壁に頭から激突は、絶対避けなければ潰れたトマトになっちゃう。
やるしかないのだが。前回ゲートキーパー戦も最大のピンチだったけど、今回は、それより最大のピンチ。
どうか”のしイカ”になりませんようにと祈りつつも冷静に、まず切り抜けることに全集中だ。
左手に盾、右手に剣を持ち、魔力を盾と剣に込める。「ふんむ」。
部屋が暗くなる。タイミングを見誤るな。タイミングだ。
元の部屋に戻されると、真正面にデカゴリラが仁王立ち。
左の拳から相手の顔に向けて、魔力弾を二発打ち込む。全く怯まず、やはり右ハンマーパンチが飛んでくる。こちらも瞬間魔力障壁を最大で応戦。そのまま障壁はぶち破られ、盾に激突。
「ドッゴーン!」
俺はそのままライナーで壁まで吹っ飛んだ。アニメなら”ぴゅーん”て音がしそうだ。
四つん這いで壁に着地?するが、手、腕、足、膝、腰に凄い衝撃が走った。
「ぐっ」何とか耐えた。手足が痺れる。肘と膝が痛い。今はそんなの無視だ。
俺は、そのまま壁を走った。デカゴリラが追ってくるが、何とか❖金の紋章に辿り着いた。
そのまま魔力を注ぎ、お宝部屋に入る。
ギリギリだった。
左手に盾、右手に剣を持ったのは、盾と剣なら盾の方を狙う。わざわざリスクを負う事はしない。
もし、剣の方に来たなら、剣で捨て身の攻撃にしようと思った。剣は刺さると痛いよね。
瞬間魔力障壁でパンチを少しは減速できたはず。プラスで盾が強化され、衝撃をある程度吸収する。
足で壁に着地することに成功し、腕と足腰のクッションで受け止めた。
吹き飛ばされながら体勢を整えるのは、猫並みの運動神経がいる。ここに全集中していた。
殆ど賭けだった。それでも、もの凄い衝撃だったのは、驚きを隠せない。
最後、デカゴリラは、壁から落ちてくると思い、落下する地点に向かったが、俺が落ちてこないで走っていってしまった時、追う事に一瞬遅れてしまった。
そりゃあ驚くよね。だって壁を走っているんだもの。
この壁を走るのが今回の❖銀部屋で獲得した装備だ。
スーパーグリップ。
足裏に粘着性の魔力をコーティングし、足裏と地面(今回は壁面)が設置したとき全く滑らない状態にする。足を上げようとするとその足がグリップしなくなる。その気になれば、天井裏だって歩けるスーパーなグリップなのだ。
問題は、普段衝撃を吸収するのに滑るのは重要で、滑らないと足腰への負担は大きい。
そのため、この機能もON/OFFがある。
この頃は、体重が軽すぎて攻撃時の力を自然とセーブしていた。このスーパーグリップは、攻撃時の能力を上げてくれる。ただ、今の力でデカゴリラにタイマンは無理だ。何か策が必要だろう。
しかし、逃げていても勝てない。魔弾も障壁も盾だってお構い無しの化物だ。
スイング魔弾だって押し負けそうだ。残るは剣だけだろう。
とにかくお宝拝見拝見。
そこには、全身網タイツが置いてあった。
ふざけんなよ。いくらなんでも17才、彼女いない歴=年齢、DTにこの道に進めとはどういう了見だよ。
思わず地面に叩きつけた。足でグリグリしそうになる自分をなんとか収め、取説を取り込む。
今から俺は、禁断の行為に及ぶ。誰か止めに入るなら今だよ。誰も居ないけど。
俺は、手甲、スーツ、ブーツを脱ぐ。
それは素っ裸になったということだ。
徐ろに網タイツを履いていく。
なぜかこの網タイツきつい。
頭まで全身網タイツ、すごーく締まる。
当たってはいけない部分にも締め付けが、、。
そのまま、スーツ、ブーツ、手甲を着ける。
魔力を「フンッムームム!」全身に吐き出すと、網タイツがスーツに吸収されていくのが分かる。
スーツが熱い。あ、スーツから体の神経に接続されて行く、いつものサブイボが、熱いサブイボになる。
「ふー、ふー」
スーツが少し大きくなったような感覚。
ここで、「快感」なんてなったら、行ってはいけない世界の住人になってしまう所だった。
良かったー。俺はノーマルだ。
スーツの表面に六角形の模様が全身に出来ている。強度も上がっている。
今まで、敵を倒すために有用なアイテムが出てきている。
しかし、鬼畜仕様だよ。いつも数分で策練って命のやり取りだ。
人間の追い込み漁は良くないよ。俺って褒められて伸びるタイプだよって言いたくなる。
いかんいかん、この機能を使う方法を考える。冷静に深く深く。
段々暗くなり、元のへ戻る時が来る。
体の痛みは消えた。充分やれる。
左手に盾、右手に剣
元の部屋に戻る。
俺は、❖レインボーの紋章に走る。
デカゴリラが迫ってくる。スーパーグリップにより走行能力は格段にUPしたが、ほぼ互角だ。
デカゴリラが追いつきざまに右ハンマーパンチを繰り出す。
俺は急停止。「ぐっ」足腰にきつい。
デカゴリラは、止まろうとするが、ずずーと滑って手をついて止まる。
慣性の法則。重いデカゴリラのほうが、簡単には停まれない。
パンチを出せない体勢のデカゴリラにダッシュする。
「オーバーリミット」
デカゴリラからは一瞬消えたように見えただろう。
デカゴリラの右腕から血が吹き出る。
「ちっ、浅かったか」
デカゴリラがこちらを向いて威嚇してくる。”ぐるるるー”ドッラミングはしないのかい。
デカゴリラの腕から煙が出て傷が塞がっていく。超再生持ちかよ。これ何層の魔物なの?
これは、俺の魔力量じゃ出来て後2,3回、時間はかけられない。コツは掴んだ。
全身に魔力を全力で巡らす。
「ふうむむむ!」 赤色六角形の模様が赤くなる。
剣にも魔力を注入する。「りーん、りーん」
「一気に行くぞ、デカブツ」
一気に駆け寄る。相手も低い前傾姿勢からの渾身の右ハンマーパンチが襲ってくる。
「ごーーー」、あと1mで衝突の瞬間。
「オーバーリミット!」
再加速して一瞬の内に前傾姿勢の首元に、そして分厚い首を狩る。
「がっ」硬い。
だが、押し切る!「うおーーーー!」
・
首の皮に頭がぶら下がっている。首が太すぎて落とすまでには至らなかった。
ゆっくりデカゴリラが霧となって消えていった。
皮一枚で、生き残った。
俺は、膝立ちのまま地面に突っ伏した。
「う、動けない」スーツが固まって動けない。
あの網タイツは、オーバーリミット。
スーツに大量の魔力を流しパワーを生み出す。
とにかく、バッテリーで魔力補充をしないと。ぎぎぎと音がしそうな腕をお腹の所に持っていき、魔力を吸い取る。「ふーーーー」
今度は、魔力をスーツに流す。「ふんむー」
バキバキになったスーツが動き出す。
生身の体にも結構負担だが、スーツの負担は物凄い。なんか焦げ臭い気がするな。
スーツも使えば使うほど強くなるそうだ。希望的観測でなければいいんだけど。
オーバーリミットは、魔力バカ食い仕様だ。リッター10km走る車が一気にリッター10mになった感じだ。
二回で魔力枯渇は酷い。バッテリーは、体内魔力が10%を切ると自動補充する仕組みらしいんだけど、バッテリーが2割を切ると手動補充に切り替わるセーフティー設計なのよ。未だに1割しか補充できないのにいつになったら自動補充になるんだか。
オーバーリミットも本当は、小、中、大、全力とか出来るらしい。今後も鍛錬鍛錬。
とにかく❖レインボーを獲得しよう。
今度は、湿布だ。それも一枚のペラペラの湿布だ。
確かに腰痛いよ。スーッとして気持ちいいよ。でもそれはいくらなんでも酷くない?
「ご苦労様、明日も父ちゃんがばって」
そういうご褒美が欲しいんじゃないんだよ。偶には見た目もカッコいいのが欲しいだよ。
とにかく、取説を脳にロード。
また脱ぐ?真っ裸なの?
そして、スーツの腰の部分に貼る。本当に腰の部分なのだ。
効能は、魔力回復補助だった。
これだよ、本当に魔力足りなくなって、魔力インフレ進み過ぎだよ。
スーツを着ると、腰がぽかぽか暖かい。こりゃ本当に腰にいいかも。
おもしろかったと思いましたら”いいね”をお願い致します。




