表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

一つの馬車に、二人の女⑤


 我ながら、薄情で非情、卑怯だと思う。

 彼女の笑顔と勇気に助けられたくせに、今まさに死線を行く彼女を見捨てて逃げようとしているのだ。

 それでも、眼前で行われる命のやり取りに加わろうという勇気も自信も無い。

 ここで逃げねば、私のせいでまた彼女が――

「おい!もう一匹が逃げるぞ!」

 心臓の一拍が大きく響く。走らねば。そう思って踏み出した一歩目が、轍に取られて大きく崩れる。

 慌てて両手を前に突き出すが、運動不足気味の細腕では身体を支えることさえ出来ない。私は無様な有様で地面に頭突きをしてしまう。

「コウッ!」

 背後から切羽詰ったメイの声が聞こえてくるが、すぐに金属がぶつかり合う音に紛れて消えてしまった。

 まずい。まずいまずいまずい。

 そう思った瞬間、巨人のような力で髪が引っ張られる。

「痛っ!」

 「離して」と叫ぼうとした口が大きな手で塞がれ、続いて訪れた腹部への衝撃に私の意識は遠のいていく。

 薄れゆく意識の向こうで「離せ!離せ!」と女性の声が響き続ける。


 嘲笑、鈍痛、麻のちぎれるような音、土の匂い。


 悲嘆と悲観と、それから――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ