第7話 vs妹①
私は書物庫を後にすると屋敷の離れにある森へ向かった。
私が森に着くと後ろから魔術が放たれたのを感知する。
「ッ…!」
私は間一髪でそれを避けると元いた場所の地面はエグれていて、水溜りができていた。
「私を殺す気なの?」
私の問に後ろに隠れていた男が姿を表し答える。
「まさかぁ、そんなんで死ぬとは思ってないよ。俺の弟子なんだからね」
男の名前はヨハネス。
史上最年少の10歳で王宮魔術師の地位を得た、私と同じく『英雄の生まれ変わり』と称される天才だ。
そして私の師である。
「そもそもまだ俺が与えた課題が終わっていないだろ?気を抜いてる場合じゃないんじゃねぇか?」
「何が課題よ!こんな幼気な美少女に飲まず食わずで2日間アンタと鬼ごっこなんてやってられないわよ!」
「幼気な美少女?中身はもうすぐ成人すんだろ」
「身体がまだ幼いんだから無理させんなって言ってんの!」
そう。
私はこいつのせいで2日間何も食べれず何も飲めず一睡もできてないのだ。
考るだけでムカついてきた。
「だからそれはお前の魔力量の少なさを補うためにだなぁ、こういう極限状態で訓練することによって…」
「てか、そんなことはもうどうでもいいのよ」
私はヨハネスの言葉を遮る。
「私、エリシアお兄様と魔術比べすることになったから。一時間後に」
「はぁ?何勝手に決めてんだよ」
「お兄様も魔術学園に行くらしいのよ。だから少し手合わせしてみたいなって思って」
そう言うとヨハネスは目を見開いて驚いた。
「魔術学園に行くって…お前の親父がそんなこと許すわけねぇだろ!?」
「それが許しがでたらしいのよ。だから気になるじゃない?お父様が許しを出すほどに才能があるのかもしれないし」
「まぁ、たしかにそれは気になるけど…」
「ってことで私いまから寝に行くから。三十分くらいたったら起こしに来てちょーだい」
「は?なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ?」
「私はアンタのせいで寝れてないんだから、それくらいはしなさいよ!」
私はそう言うと、後ろで何か文句を言っているヨハネスを無視して自分の部屋に向かった。
∆ ∆ ∆
今私たちがいるのは魔術訓練場。
周りが魔障壁で囲われているため、ここでなら思う存分に魔術を扱える。
私は目の前にいるエリシアお兄様と目が合う。
綺麗な瞳、サラツヤな髪、端正な顔立ち。
この世界じゃ無ければ絶対にモテてるわよね、お兄様って。
「魔術比べって言ってもどんなことするの?」
お兄様の問に私は答える。
「まぁ、一言でいえば…『タイマン』でしょうか?」
「タイマン?」
『タイマン』なんて言ってもこっちじゃ伝わらないわよね。
「つまり、一対一どちらかが音を上げるまで魔術を使った殴り合いをするんです」
「なるほど…」
なんとか伝わったようね。
「それじゃあ、準備は良いか?俺の合図で始めるぞ?」
ヨハネスの問に私とお兄様は同時に頷く。
「よーい…始め!」
合図と同時に私は両手に赤い魔法陣を発生させる。
両手の魔法陣から巨大な炎の柱を出し、それを一瞬にして凝縮。
二対の短剣に形を変える。