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第6話 双子

 ここまで来れば大丈夫かしら?


 私は目の前の扉を開けて中に入る。


 ここはこの屋敷の書物庫。


 お祖父様がお亡くなりになってから誰も使ってないって聞いたし、ここには流石にアイツも来ないでしょう?


 中に入ると二つの人影が見える。


 一人はこの屋敷の侍女のようだ。


 もう一人は…白い髪、碧色の瞳。


 なるほどね…


 私は後ろから彼に話かける。


「いつもここにいらっしゃるんですか?エリシアお兄様」


「リアか…」


 振り返ると彼は少し不機嫌そうな顔で私を見つめる。


 あの髪と瞳の色はこの世界では恐怖の対象とされているらしい。


 私なんてせっかく魔法の世界に来たのに黒髪だし、目はお父様譲りで紫だけれど、少しつまんない。


 だから彼が少し羨ましい。


 こんなことを口に出したら彼は絶対に怒るでしょうね。


 彼は少し気まずそうな顔をした後、口を開いた。


「最近はずっとここで魔術の練習をしているんだ」


「魔術の練習?」


「うん。父上が魔術学園の入学試験を受ける許可をくださったんだ。条件付きだけどね…」


 へぇー…あの冷徹なお父様がねぇ。


 お兄様は周りから嫌われてはいるけれど、ヴァリアルト家の一員であることには変わりないし、私と同様に魔術師の素質があるのかしら?


「お兄様、実は私も魔術学園の入学試験を受けることになっていますの」


「へぇー、リアも?」


「えぇ、ですから私たちは同じ試験を受けるライバルということになります」


「たしかにそういうことになるね」


「ですからお兄様、私と魔術比べをしませんか?」





∆ ∆ ∆





 父上から許しが出てからちょうど三カ月がたった。


 起きて魔術の訓練をして寝る。


 あれから同じことをずっと繰り返していただけだったから時間の進みがとても早い気がする。


 今日も魔術の訓練をするために魔術書を読んでいると突然声をかけられる。


「いつもここにいらっしゃるんですか?エリシアお兄様」


「リアか…」


 そこに居たのは双子の妹、リア・ヴァリアルト。


 母上譲りの黒髪を腰辺りまで伸ばし、父上譲りの紫の瞳で僕を見つめる。


 少し微笑みながら僕を見ているが作り笑いだとバレバレだ。


 2ヶ月ほど前からこいつは人が変わったように思える。


 屋敷内でも噂になるほどに。


 わがままだった性格から一変、何事にも勤勉になった…らしい。


 たしかに今までのリアだったら嘘でも僕の顔を見て笑ったりなんかしないしな。


「最近はずっとここで魔術の練習をしているんだ」


 僕は正直にそう答える。


「魔術の練習?」


「うん。父上が魔術学園の入学試験を受ける許可をくださったんだ。条件付きだけどね…」


 そう言うとリアは少し黙り込んだ。


 何かを考えているようだ。


 数秒間考えたあとリアは口を開いた。


「お兄様、実は私も魔術学園の入学試験を受けることになっていますの」


「へぇー、リアも?」


 驚いた演技をしたが、まあ分かっていたことだ。


 ヴァリアルト家の子どもを魔術学園に入れない訳が無いのだ。


 僕は例外として。


「えぇ、ですから私たちは同じ試験を受けるライバルということになります」


「たしかにそういうことになるね」


「ですからお兄様、私と魔術比べをしませんか?」


「魔術比べ?」


「えぇ、そうです」


 リアは続けて答える。


「同じ試験を受ける身として、ライバルであるお兄様がどれくらいの実力があるのか知っておきたいのです」


 なるほど。


 たしかに僕も自分がどれくらい魔術を使いこなせているのかは気になっていたところだ。


「良いよリア。だけど場所を移動しよう。書物庫でやったら本が傷んでしまうよ」


「わかりました。屋敷の南棟にある魔術訓練場はわかりますよね?私も準備がありますので一時間後にそこに集合しましょう」


 そう言うとリアは書物庫から出ていく。


「よろしいんですか?エリシア様」


「何が?」


「あのリアお嬢様のことですから、何か裏があるに決まっています!」


 たしかにリアは屋敷の中で僕を一番嫌っていた。


「大丈夫だよ」


「何を根拠にそう言い切れるんですか?」


 メイが少し強い口調でそう言う。


 それだけで彼女が僕のことを思ってくれていることが分かり少しいい気分になった。


「何年リアからの嫌がらせを受けてきたと思ってるの?リアが何か企んでいるかどうかなんて見ればわかるよ」


 そう言うとメイは少し悲しそうな表情をして僕を抱きしめてくれた。

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