第3話 悪魔に魅入られた侍女
僕は気分が良くなってつい『夢』について話してしまった。
だってしょうがない。
僕を認めて、褒めてくれたのはメイが初めてだったんだから。
気付くとメイの頬に雫がつたっていた。
あぁ…また僕がなにかしてしまったんじゃないか?
僕は怖くなった。
「ごめん…メイ。泣かないで?」
そう言うとメイは首を横にふって、
「坊ちゃまが…エリシア様が謝られることはありません。むしろ謝らなくてはならないのは私の方です。申し訳ございません」
僕が泣かせてしまったのになんでメイが謝るんだろう?
「エリシア様の『夢』は絶対に叶います。私が保証しますよ!」
メイはそう力強く言ってくれた。
僕はますます気分が良くなった。
「ねぇ、もっとお話していい?」
「はい」
「もっと僕の魔術見せていい?」
「もちろんです!」
あぁ、父上や母上もこうやって褒めてくれるだろうか?
∆ ∆ ∆
私は今とある部屋の扉の前に立っている。
「入れ…」
扉を開けるとそこにいるのは今年八十になる侍女長のハディだ。
「メイ、私になんのようだい?」
「侍女長、折り行ってご相談があります」
ハディは私を探るような顔になった。
「私をエリシア・ヴァリアルト様の側近にさせてはもらえないでしょうか?」
ハディは信じられないという顔をした。
エリシア様はその容姿から恐れられ長らく側に付くものはいなかったからだ。
「なんだい?メイ。悪魔に魅入られでもしたのかい?」
そう言われて私の顔にはシワが寄った。
「あの子は悪魔なんかじゃありません。まだ八つの子供です!」
「ふん…そうかい」
ハディは今度は呆れたような顔をして言った。
「いいだろう。旦那様には私から話をつけておいてやる。明日からはあれの世話でもしときな!」
すっごい嫌な言い方!
でもまぁとりあえず、これでエリシア様のお側にいられる。
∆ ∆ ∆
目を覚ますとそこには侍女がいた。
「ねぇ、メイ。なんでここにいるの?」
疑問をぶつけると侍女は笑顔で答えた。
「今日からエリシア様のお世話をさせていただきます。」
「じゃあ、ずっと一緒にいられる?」
「はい。ずっと一緒です!」
僕は嬉しくてたまらなかった。
メイが僕をギュッと抱きしめてくれた。
僕は今までに感じたことない感情で溢ていた。
これは何なのだろう?
本に載ってるかな?