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第2話 書物庫の悪魔

 部屋を出た僕が向かったのは書物庫だった。


 先代公爵、つまり僕のお祖父様が趣味で集めた古今東西あらゆる本が保管されている。


 お祖父様が亡くなってからは利用者がほぼいなくなり、誰とも顔を合わせたくない僕に取っては最高の居場所だった。


 2ヶ月ほど前にここで魔術書を見つけてからは僕は魔術の虜になっている。


 僕は魔術の才能があるのか今ではもう初級魔法はマスターしていると言っていいと思う。


 魔術について、基本的には八つの属性がある。


 身体強化魔法や結界、治癒ヒールができる無属性。


 熱や炎を操る火属性。


 水や氷を操る水属性。


 風を操る風属性。


 雷や電気を操る雷属性。


 土や岩を操る土属性。


 光を操る光属性。


 闇を操る闇属性。


 普通の人は無属性と他の属性を一、二個しか使えないらしいけど、僕は八つの属性すべてを使えるようだった。


 やっぱり僕には才能があるのかな?


 ヴァリアルト家は数多くの王宮魔術師を排出してきた名家だ。


 凄い魔術師になればきっと、父上や母上だけじゃなくてみんなが僕を見てくれるんだ!


 そんな思いを胸に今日も魔術書を読んでは魔術の練習に励んだ。





 ∆ ∆ ∆





 書物庫に白いローブを着た妖精が現れる。


 そんな噂を耳にして私は書物庫に来ている。


 いや、決して仕事をサボって来てるわけじゃないんだよ!


 ちゃんと書物庫の掃除を頼まれたうえでここに来てるんだ。


 早速扉をあけて書物庫に入ってみる。


 すると何やら声が聞こえてきた。


 先代の当主様が亡くなってからここを使う人はいないって聞いていた。


 きっと書物庫の妖精だ!


 私はそんな期待を胸に恐る恐る声の聞こえる場所を覗いてもみた。


 そこに居たのは白色の髪に白色のローブをまとった子供だった。


 私は体に緊張が走った。


 今日二度目のこの感覚。


 その子供は自分の右腕を前に突き出して魔法を放っていた。


 あぁ…この子は。


 何が書物庫の妖精だ。


 居たのは悪魔じゃないか!


 この場から離れようとすると…


 ガタッ!


 思わず音を鳴らしてしまった。


「ッ!……だれ?」


 気づかれしまったのなら大人しく姿を表すしかない。


「……侍女のメイでございます」


 そう言って私は姿を表した。


「メイか…。見てた…よね?」


 彼は表現を変えずにそう言った。


 怒っているのか、そうでないのか分からなかった。


「はい…。す、素晴らしい魔術でした」


 引き攣った笑顔で私はそう言った。


 どうすれば機嫌が取れるのか、それしか考えていなかった。


「それほんと!?」


 先ほどの無表情とは打って変わり彼は子供らしい笑顔を浮かべた。


「はい、もちろん!坊ちゃまがこんなにも素晴らしい魔術をお使いになるとは思ってもいませんでした」


「ねぇ、僕って凄い?」


 表情は笑顔のままだが、どこか寂しそうにそう訪ねてきた。


「はい、とっても」


「ッ!そう言ってくれたの今までの人生でメイだけだよ!」


 彼は笑顔だった。


 しかし私の緊張は解かれるどころかむしろさらに強まった。


 何故かって、それがまるで何か悲願を達成した悪魔の姿に見えたからだ。


「そんなメイには僕の夢を話しちゃう!あのね、あのね。僕さ、もっと魔術を使えるようになって、国一番の魔術師になって、父上と母上に褒めてもらいたいんだ!」


 そう言われて私はハッと我に返った。


「そしてね、そしてね。いっぱいギュッてしてもらいたいの!」


 あぁ…この子は。


 何が悪魔だ。


 ここに居たのはただの八歳の子供じゃないか。


 私は自分を恥じた。


 今日で二度目だ。

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