第24話 無月Side / 如月無月と晴原想河 ①
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【如月 無月 視点】
(………ここはどこだ?)
オレーーー如月無月は途方にくれてしまった。見慣れた部屋にいたからじゃなかった。目の前には大きな樹木が天へと伸びていた。すぐ近くにはオレと同じくらいの少年が立ってこの樹木を見つめていた。
無月「………そこの君!」
オレはすぐ近くにいた少年に声をかけた。少年は一瞬だけビクッと震えながらもオレのほうを見た。
???「………えぇと………今、僕を呼びましたか?」
無月「………あぁ、そうだ。オレは如月無月。「如」「月」「無」「月」………こういう字を書く名前の異世界人だ。君の名前は………?」
???「………僕は、「晴」「原」「想」「河」………とこういう字を書いて………晴原 想河と言います。よろしく………」
とりあえず自己紹介を済ませたオレたちは目の前に立つ樹木が白露病を患った、彼の恋人でかつて人間の少女だった、午堂 夕妃 と別の場所に立つこの子の姉、午堂 朝妃 であることを情報提供してもらった。
なぜ、元は人間だった少女たちがこんな変わり果てた姿になったのかーーー、彼ーー、想河は見知らぬ異世界人であるオレに色々と情報提供をしてくれた。それによると、この時間軸の世界上における地球には『黒曜雨』 なる死の雨が世界各国で降りたくさんの人間や生き物たちが犠牲になったんだそうだ。彼にそのことを教えたのは、テキサスで樹木になったクロエさんという女性の旦那さんである、神志名 耕代 という、カッシーナの愛称で呼ばれている研究者に、ガイア理論などを教えられたそうだ。
彼もかつては兄、智哉と想い人である朝妃とのしがらみに、取り返しのつかない罪を犯したらしい。
白露病に患ってしまうと、人間の姿に戻るのは不可能だそうだ。
想河「………よかったら無月さんも、僕の彼女………といっても人間だったけど今は樹木になってしまった、夕妃 に手を合わせてもらってもいいですか?」
無月「………あぁ、そうさせてもらう」
というわけで ………オレは夕妃さんの樹木のすぐ近くまで寄り目の前で手を組み祈りを捧げてみた。
(ここでのオレの役割は………この樹木組織に変質させられてしまった夕妃さんや、研究所近くに植樹された朝妃さんの樹木をなんとか別の形で人間の身体に分身体として生き返らせるという………実現不可能な問題ということになるのか………)
オレはこの世界での役割にとてつもない重責を押し付けられた気がした………。
◆◇◆
想河から教えられたのはいいけど、人間体を喪った者を人間の少女の姿に戻すには、この時間軸だけでは難しいと判断したオレは、ダメ元で彼に聞いてみた。
無月「………なぁ、想河。お前は恋人である夕妃さんと、彼女の姉である朝妃さん、さらにはその神志名先生の奥さんのクロエさんの樹木をなんとかして白露病患者から救い出したいと、そういう認識で合っているんだよな?」
想河「………はい、特に僕の恋人になってくれた夕妃との死別はあまりにも早すぎて、僕が悲しくなっていますから………できるなら、タイムリープして彼女たちが行き着く運命から少しでもハッピーエンドになるように、破滅を変えてあげたいなぁと。でも、本当にそんなことが可能なんです………?」
無月「………お前の中に贖罪を代償にするのと、わずかに残った彼女の樹木からほんの少し力を貸し与えてもらうことと、彼女の遺言の手紙を媒体にして、とにかく強く願えば理論上はいけるはずだ。
できなかったら………テラパゴスの力で無理やりでもタイムリープしてオレもついていくさ。
但し、この条件を満たした場合、朝妃さんと夕妃さんとクロエさんだっけか? 他にも本来の時間軸で樹木のいけにえになるはずだった彼女たちが正史ルートからそのルートを逸脱するわけだから、当然樹木になる人間は性転換含めてかわりに犠牲になってもらうが………多分お前の中では今までの痛みからおのずと枠は決まってるんじゃないのか?」
想河「………そうだね、当然僕の中では決まってる。幼い頃から何かと兄さんばかりを優遇してきた僕の両親には今まで僕が受けた痛みを同程度以上に両親にも味わって犠牲となってもらう。
特に母さんの平手打ちやシエルに対して蹴り上げようとした父さんの罪も僕の中では許しがたいし。
兄さんは………タイムリープした時間軸できちんと向き合って、破滅な未来を回避して別の道を歩ませたい。朝妃さんも破滅から救って兄さんとの関係が続くようにしてあげたい。夕妃は破滅を変えた時間軸で今度こそ幸せにしてあげたい。あとは………植花 彩葉 のことだけど………『黒曜雨』 に怯えなくても生きられる時間軸で幸せになってもらいたいな」
無月「………苦しかったな、お前の痛みは。ちゃんとそれ相応の報いを受けてやらなきゃだめだよな。というわけで、さっそくタイムリープしようぜ」
オレと想河、そしてこんな破滅な未来を迎えてまで他者を救済しようとした世界各地に植樹された樹木でかつては人間だった少女たちを救うべく、想いの奔流を時空の彼方に飛ばしていく。
ここから人間を排除しようとする、『黒曜雨』 VS 異世界人のオレ&想河による長きにわたる戦争が静かに幕を開けたのだった………。




