第21話
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【ユナ 視点】
クリフとノアに事情を説明したわたしとフィナはそのままクマハウスに戻り身体を休めた。そして翌日。
わたしはフィナを連れてクリモニアのクマハウスから転移門を使い、タールグイの島にあるクマの転移門へとやってきた。わたしのクマの召喚獣であるくまゆるたちを召喚しようかと思ったが、特に危険はなさそうに見えたので今は召喚していなかった。
「………それでどうするの、ユナお姉ちゃん?」
わたしの隣にいたフィナが尋ねる。わたしはフィナを抱きしめながら言う。
「………タールグイってさ、まだまだわたしたちが行っていない場所に行けることってあるでしょう。もし、ティリアの向かった先がわたしに馴染みのある場所で、フィナが行ったことのない世界に繋がっているなら、多分そこにいる可能性はありそうなんだよね」
と、それっぽく言ってみる。実際わたしもこのタールグイを使った新たな島探しには目が向いていた。
ただ、調べる勇気がなかっただけだ。それと、確証がなかったのもある。
もしかしたらどこかに越えられないはずの壁をとりはらえることができ、かつ、わたしが元暮らしていた世界に一時的に帰還できるなら………そう思ったからだ。
ただ………問題はそういったワープ装置があるのかどうかなんだけど。
でもそこはさすがくまゆるたち。くぅ〜んと、鳴くとその先に何かがあるのはわかった。
わたしはフィナを抱きかかえると、クマの水上歩行と水中遊泳のスキルを使ってその小島の中に入ってみた。
すると、いかにもそれっぽい祭壇のようなものがあり、わたしは意を決してその転移魔法陣に乗ってみた。
くまゆるたちを送還するとわたしの魔力を使ってまばゆい光が輝きを放った。
そのままわたしたちはこの世界ではない場所へ、転移されたのであった………。
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わたしたちが辿り着いた先はたしかにあの異世界とは違う正しく違う場所だった。わたしは隣に立つフィナを見てみる。世界観に沿うようにして一般的な市民の服をまとっていた。くせっ毛な髪はそのままに大きなリボンもしていた。
「………ユナお姉ちゃん、もしかしてここが?」
「………かもしれない。危険はないと思うから、クマさんの着ぐるみは外してパペットとクマ靴だけにしておくよ」
じゃないと、何かあった時動けないからね。
ちなみにくまゆるとくまきゅうはここでは召喚できない。何かあったら色々と騒がれるのは目に見えるからね。
というわけで ………、わたしたちは改めてティリアを探すことにした。フィナは物珍しげに周りの建物や行き交う人を見つめていた。
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【如月 無月 視点】
休日になり、オレはティリアと妹の奏を連れて街中を探索。するとすぐ近くにクマのパペットをした女の子がいたのでティリアに確認したらそうだと言うので、近づいて話を聞くことにした。
その女の子の名前はユナさん。聞けばこの世界から異世界………ティリアたちが暮らす世界にクマの着ぐるみをつけてあちこちで人助けをしていたらしい。
その数を聞いて驚く。確かにそれはチートスキル装備と戦闘技術がなければ戦えないだろう。
神様という………また、なんとも言えない存在もいるもんだなと思った。
「………ユナ、それにフィナも!」
「………ティリア………久しぶり? あっちの世界でみんなが探していたからわたしはフィナを連れてやってきたの。ごめんね、来るのが遅くなって………」
「………いいのよ、ユナはほら、こうやって探しに来てくれたじゃない! せっかくだから、フィナと一緒にこっちの世界のこと、色々と案内してよ」
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ここから後のことを簡単に触れておこう。あの後しばらくオレたちの世界で堪能したあと、彼女たちは元の世界に帰っていった。オレも奏も気分転換を終えたので、家に帰ることになったのだが。
「………お兄様、今日はありがとうございます。わたしのわがままに付き合って下さって………」
そういうはにかみながら笑う奏に、オレは抱き合ったのだった。