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終わりなき輪舞曲(ロンド)  作者: 雨音結花
19/22

第19話

外伝的作品とのクロスオーバー作になります。

◆◇◆


【??? 視点】


(……ここは、いったいどこなの……?)


わたしはついさっきまで自分がいた国のお城でわたしの妹やメイドと話をしていたんだけれど、今自分がいる場所は見慣れた場所とは全然違った知らない世界でした。


わたしはキョロキョロと辺りを見回してみます。するとわたしの目に映るのは自分の国ではおよそ見慣れないたくさんの大きな建物があちこちそびえ立っていたのです。


街の中を歩く人たちの中にはわたしが知らない服を着ており、せわしそうにバタバタと歩き回ったり走り回ったりしていました。その人たちの片手には何かを持っていました。


それ以外にも、小さな動物? をリードのようなものでしつけながら辺りを散歩する人、杖? のようなものを地面についた高齢の老若(ろうにゃく)男女(なんにょ)がいきかっていました。


さらにわたしは目を向けてみます。銀色とだいだい色?をした大きな乗り物? が乗り合わせた大勢の人たちをどこかに運ぶ光景が映りました。


その人たちは見慣れない四角い板のようなものを持ち、画面をスワイプしていたのです。その何もかもが違うわたしはそのことをひとり不思議に思いました。そこは文字通り異世界としかいえませんでした。


さらにわたしは違う場所に目を向けました。


向こうには何かのお店? のような建物があり、食べに来たお客さんのテーブルにはおいしそうな料理がたくさん並べられていました。遠目からでもわかるその中にはわたしもよく知る、お米、パン、ハンバーグ、パンケーキ、ショートケーキ等があったのです。


………それらの名前をわたしは既に見聞きしています。わたしの友人がこれらの料理をよく振る舞っていたことがあったのを思い出した。


(………ここはユナのいた本来の世界………?)


そうだとするならば全て合点がいきます。多分あれは食事を提供する場所でそういった場所は実はわたしの世界の国にもあった王都の憩いのレストランと似たようなものだろうと。


次にわたしは自分の着ていた服を見てみました。うん、完全に場違いな服を着ていることはわかります。どこからどう見ても………自分のそれは高価な服のそれだよね?


わたしはユナのあの変な格好を思い出す。友人(ユナ)はいつも自分が目立つことはしたくないと言っていたわね。失礼ながらわたしも何度かその手の質問をしたことがあるよ。だけど………、いつもその手の質問は濁していたことをわたしはよく覚えている。


わたしがこの世界に来たことで友人(ユナ)がどうしていつも言葉を濁し続けていたのか、なんとなくわかった。


わたしの予想が正しければ、ユナはこの世界の住人であり、わたしの世界から見れば異世界人のそれなのだろう。つまりユナは………簡単に話したくなくて常にぼかしていたし、知られると変な目で見られてしまうからだと思ったのだろう。


わたしだっておそらくこの世界から来た存在ならばその人のことを変な目で見て怖がることになるだろう。


それにーー、あのクマさんの格好もなにか秘密があるように思える。ユナは加護がどうとか言っていたけど………。


ユナはそういった特異な存在だと、わたしは考える。


(まぁ、今のわたしもユナのそれと大差ないよね………)


残念ながらわたしはユナと違って、そういった特殊能力には引継ぎでもってきたわけではない。あったとしても異世界文字や異世界言語くらいしか持っていないのだろう。


ましてやわたしは騎士としては程遠い。


そう考えると、わたしはユナのように振る舞えるかどうかはわからない。わたしはユナの戦いを、フィーゴやルトゥムの試合、マリクスやシアたちの試合を間近で見たことはあるが、戦闘技術に関してはからっきしだ。


服装こそ違えど、今のわたしは同じようなものだ。むしろ、わたしの今の服はこの世界では着る人はいないのだろう。


それともうひとつ。


この世界にやってきてから、なぜかわたしは魔法が使えなかった。こんなことは初めてだ。もしかしたら………この世界にはそういったものはないのかもしれない。


わたしがそんなことを考えているとーーー。


???「……あのお姉ちゃん、知らない服着てる!」


わたしを見て指をさす小さい男の子の子供。それを隣にいた女性が子供に注意をしている。


???「………人を指差しながら見ちゃダメッ!」


女性が子供を叱る。それはわたしがいた世界でもなんら不思議なことではない光景だった。その親子はわたしをいちべつするとさっと立ち去っていってしまった。ただ、いきなり攻撃をされなかっただけまだマシだった。


改めてわたしは今の自分が置かれているこの状況は特異なのだと知ったのだった………。

−–−–−−–−−−––−–−–−−–−−−––−–−−–––−––––


−–−–−−–−−−––−–−–−−–−−−––−–−−–––−––––

◆◇◆


【ユナ 視点】


護衛の仕事を終えしばらくまったりとした日常を過ごしたわたしは、いつものようにクマの転移門を使って王都にある自分のクマハウスへ移動し、そのまま王城におもむいてフローラ様の部屋でいつものごとく、フローラ様に絵本の読み聞かせをしたり、持参した食べ物や飲み物をふるまっていた。そんな時だった。


国王(こくおう)陛下(へいか)が、いつも呑気な表情ではなくいつにもまして珍しく娘がどこにもいないと言ってフローラ様の部屋にやってきた。


わたしに向かって言うから驚いちゃったんだよね。


もちろん、わたしにも探すように言われたよ。


探したんだけど………見つからない。


というかその姿はどこにもなかったんだよ。


「………おねえしゃま、どこにいっちゃったの?」


そうつぶやきながらかなしい表情を浮かべるフローラ様に、わたしはしばらく考えごとをし始めた。


(可能性はなきにしもあらずだけど、もしかして………わたしとは違った状況に陥ったとか………?)


それはありえそうでありえないと決めつけたわたしのミスだ。


なぜなら、わたしはこの世界で元々暮らしていたわけじゃない。神様と呼ばれる存在に、別のVRMMOゲームからこの世界に連れてこられたからだ。


以前わたしは、氷竜(ひょうりゅう)の一件でそのことを契約魔法を使って和の国のカガリさんには自分の秘密の一部を打ち明けたことがある。


でもそれは同時に今わたしがいるこの王都で暮らす国王たちや気心知れた冒険者のみんな、貴族たちには一切打ち明けていない。


そのことをわたしは今さらながら打ち明けるべきか非常に悩んだ。もし話すならクマの契約魔法は必要だ。


命の恩人である、フィナにすらわたしは秘密を打ち明けたわけではない。


わたしが出会った子供たちが領主であるクリフやグランさんたちに話すとは思えないが、うっかり話してしまうのは避けたい。


わたしのクマの転移門を知っているのは、フィナ•シュリ•ティルミナさん、ノア•シア•ミサ、王都冒険者ギルドのサーニャさん、エルフの里のルイミン•ムムルートさん、デゼルトの街のカリーナ、領主のバーリマさん、和の国のスオウ国王•サクラ•シノブ、前述のカガリさんくらいだ。


「………残念だけどわたしの探知魔法でもひっかからないね。きっと王都の中にはいないかもしれないから、わたしはちょっと行動範囲を広げて探してみるよ」


「………あぁ、頼む。おまえさんだけが頼りだからな」


国王にそう返事を交わしたわたしは、城の廊下を歩いているとーーー。


◆◇◆


???「………あら、ユナちゃん?」


わたしを呼ぶ声がしたので振り返ってみるとわたしを呼んだのはノアとシア姉妹のお母さんのエレローラさんだった。


わたしはエレローラさんに自分の秘密を打ち明けるべきか非常に悩んでいた。しかし、わたしの心を読んだかのようにエレローラさんの口から意外な言葉が出た。


「………ユナちゃん、もしかして………ティリア王女がいないから探し回っている、とかかな?」


………………。


エスパーか、なにかなの?


もしかして、わたし、そんなに顔に出てた?


「………どうして、エレローラさんがそんなことを聞いてきたのか不思議なんだけど?」


ぼかしたようにわたしは呟く。するとエレローラさんは顔に手を当てて呟く。


「………ユナちゃんの今までのパターンを見てきたから多少はわかっているつもりよ。あぁ、でも、無理に聞き出す気はないわよ。だってユナちゃんだってわたしやクリフにも言えない秘密は多くあるみたいだしね。だから、ユナちゃんなら平気だろうけど、気をつけて行ってきて、と伝えたかっただけね」


「………ありがとう、エレローラさん。わたし、しばらく王都から離れるからあと色々迷惑かけちゃうけどよろしくね」

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◆◇◆


【ユナ 視点】


お城を抜けたわたしはその足でそのまま王都の冒険者ギルドへ向かった。ギルド内に入ったわたしはそのまままっすぐ受付に向かう。


「………あら、ユナさんじゃないですか! どうしたんですか、こんな昼間に?」


「………ちょっと、ね。ギルマスのサーニャさんに伝えておきたいことがあって」


「………わかりました、少々お待ちください」


少し待つとわたしはギルマスのサーニャさんの部屋に入室した。


「………あら、ユナちゃん久しぶりね?」


「………ちょっとサーニャさんに話しておきたいことがあって」


わたしは今日ここに来た理由を考えながら話す。


いつものようにお城でフローラ様と会って話していたら国王がティリアがどこにもいないので探しているがどうやらこの王都のどこにも探知魔法にひっかからないこと、


一応わたしが少し遠出すれば見つかるかもしれないこと、しばらくこのエルファニカ王国とその他から離れるのでわたしが対象できない場合は、ジェイドさんたちやウラガンたちやハーレムパーティーのブリッツたちといった一部の冒険者にわたしのお店や孤児院などを守ってほしいこと、等を伝えた。


それを聞いたサーニャさんはわたしのお願いを快く聞き入れてくれた。


「………そうね。ユナちゃんがいたからこの国は平和になったのよね。その点においては感謝してもしきれない恩があるわね。わかったわ、ユナちゃん。気をつけて行ってきてね」

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◆◇◆


【ティリア 視点】


わたしがこの世界にやってきてから周りの反応から見て少しずつ状況がわかってきたので整理してみる。


この世界では武器を持っているだけでお役御免になること。これが大きくわたしがいた世界とは異なる点だ。だからいくらユナの力でもこの世界でクマを呼び出したら最悪捕まる可能性があるということだ。


さらに、この世界には色んなタイプの人がいるけれど、したてに出て親切に人にものを聞いたりよくわからないのに応対してしまうとよくない関係に連れ去られてしまうらしい。


特にわたしはそういったことにまだよくわかっていないところも多いところだ。たんてきに言えばこの世界では少し息苦しい。そんなわたしは今、さっきいた場所から少し離れた公園にいた。もちろん、人の目を気にしながらだ。


(わたし………うまくやっていけるのでしょうか?)


不安でたまらない。だけどこの世界の住人とどう接したらいいのかわからない。

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