第18話 エピローグという名の新たな異世界の幕開け
◆◇◆
【如月 無月 視点】
んぁ………?
オレのかいこう一番はまずそれだった。オレ達は本当に………あの敵を倒したのか………?
割愛したが、なかなかヤツは手強かった………ような気がする。あまりよくは憶えてはいないんだけれど。
オレの傍には妹の奏がスヤスヤと眠っている。それだけじゃあなかった………。
オレ達の他にも知らないようで知っているような1人の眠っている少女がいて………。妹かどうかはわからないが………確かにいるのだ。こう、はっきりと。
オレがかっとうを繰り返していると奏が目を覚ました。
奏「………どうかしましたか、お兄様?」
無月「………おはよう、奏。なぁ、奏、もしかしてそこにいるのって………」
奏「………? 多分、袮音さんじゃないかと………思います」
自信なさげにそう呟く奏。オレも同感だった。まぁ………とりあえずは起きるか。
無月「奏、それにえっと………袮音? 朝だぞ」
オレの呼びかけに寝ぼけまなこをこすりながら、袮音らしき少女は身体を起こし返事を返した。
袮音?「ふっ……あっあっ。おはよう、お兄ちゃん、奏ちゃん?」
そうして何ともなく顔を洗いにパジャマ姿で部屋を出ていく。
オレと奏も顔を見合わせながら部屋をあとにした。
◆◇◆
支度を済ませたオレ、奏、袮音の3人は家を出て改めて外の世界を見て回ることにした。体感的にはまだそんなに時間が経っていないように感じられた。
………………。
(………オレ達がいるこの世界は、本当に取り戻した日常の世界、なのか!?)
オレが頭の中で考えていると、それに気付いた奏は念話で会話を挟む。
( ………私とお兄様はどうやらお互いをそう呼んでいますし………これがちがう並行世界なら私は呼び捨てでお兄様を呼ぶんじゃないでしょうか? それに、私もここにいる袮音さんのことは………お姉様と言うはずでしょうし。これは、私がいる別の時間軸の私の記憶らしいです、はい)
とのことだった。確かにオレの中にはかつての記憶もかなり混在した特殊な状況に置かれているらしい。戦う力が奪われず今もまだくすぶり続けているってことは……そういうことだよな?
無月「……彼女たちは、元気にやっているかな?」
袮音「………彼女たち? 誰のこと?」
そっか。ここにいる袮音は知らないんだっけか。
えーと……。
オレや奏が出会った彼女たちは………。
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【前話までに夜会話をして、好感度が2以上ある相手】
①巽 芹葉
②千羽 緋奈
③七草 鈴菜
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オレが選んだのは………。
※彼女たちの個別ルートを全部展開するとエピローグが終わりそうにないので、1キャラにします。よって選ばれたのは………芹葉ちゃんとなりました。
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エピローグ
【巽 芹葉 視点】
………。
私たちは無月くんたちと協力してあの敵を倒したけど、まだ胸の不安は消えてくれなかった。
その後の話をまずはしておくことにするよ。
世界が終焉を迎えた私たちは不安定な存在となり、私たちはそれぞれの世界に戻された。夏っちゃん達は原因不明の奇病から長年目を覚まさなかったあの日から、しばらく経ってから意識を取り戻した。
私たちは文字通り泣いちゃったんだよ?
夏っちゃんたちは不思議そうな顔をしていたんだけどね。
緋奈ちゃんや鈴菜ちゃんも記憶や魂に刻まれたものは消去されることなく残っているみたい。私も、戦う力はまだ残されているのがその証拠だった。
今日、私はひとりで檻姫学園から抜け出した。私の身体はいつもあなたの意のままに操られて私の意思では動かせられないんだけど、この日はそういったことはなかった。
もちろん緋奈ちゃんも鈴菜ちゃんもね。
それで話を戻すと………。
私は誰かに呼ばれた気がしたんだ。
多分、無月くんか奏ちゃんのどちらかなんじゃないかな?
と思って導かれるままに行ってみたら………その先で私は無月くんたちと再会を果たしたのでした。
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◆◇◆
芹葉「無月くん………!!」
私は彼の名前を呼ぶと………。
彼も優しく笑った。
彼は奏ちゃんとあともう一人の少女と一緒に行動を共にしていた。
無月「………久しぶりだな。そっちは元気でやっているか? あと………学園のみんなは?」
私はもちろん、みんなは元気になったことを伝えると奏ちゃんも彼も顔をほころばせた。
彼とはまた約束を交わし、私はまた元の場所に戻っていきました。
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【無月 視点】
芹葉さんと別れたオレたちは水月学園へと辿り着いた。袮音も一緒だ。というわけで、オレ達は久しぶりに教室へと向かうことにした。
???「………おっす、如月兄妹と確かそっちは袮音ちゃんだったか?」
オレ達のクラスメイトの級友、新田 康宏が話しかけてきた。
というか………。
普通に知っているんだな。袮音のこと。
無月「………あぁ、おはよう。久しぶりだな、こうやって面と向かって話をするのは」
康宏「………そうだったか? あー、まー、確かにそうかもな」
更に級友の安井 祐介と、麻上 涼子も輪に加わってきた。
祐介「そうだったけ!? あんまり覚えていないんだよね」
涼子「………でも、確かにあなた達とこうして話すのは久しぶりかもしれないね。なぜか知らないんだけど、その辺りのことを思い出そうとすると………少し身体が拒否反応を示すのよね」
康宏「………それな。俺たち、また何かに巻き込まれたのか?」
オレと奏は顔を見合わせていた。なぜならオレと奏はその時のことを覚えているし、元々は彼らとゲームセンターに行く予定をしていたからだ。
オレは苦笑いを浮かべてうまくごまかした。
授業が始まってもオレはまだ彼女たちのことを考えていた。
オレの身体はもう一人のオレの分身がかわりに授業を受けて、オレ本体は不思議と彼女たちの学園に向かっていた。
何故か知らないけどそれは隣にいる奏本体も同じようで奏の身体はもう一人の自分に任せてきたようだった。
というわけで………、オレと奏はあの学園へまっすぐ向かって飛んでいった。
〜私立 檻姫 学園〜
オレと奏が幽体の状態でやってきたのは芹葉さんたちが共同生活をする女子寮だった。
霊力が高いことからなにがしかがあったことはわかる。この状態では身を守る術はないのでオレと奏は顔見知りになっている芹葉さんか緋奈さんか鈴菜さんのいずれかの少女の身体をかくれみのにしようと彼女たちを探そうと飛んでいった。
すると………。
???「………この気配、まさかまた?」
???「………待って! お姉ちゃん。この気配は違うの」
一人は七草鈴菜さん。しかし、一卵双生児のこの彼女は、もしかして?
鈴菜「………もしかして、無月さんと奏ちゃんだったりするの!? だったらこのままとりあえずお姉ちゃんの身体には無月さん、私の身体に奏さんが憑依しちゃっていいよ!」
そう言ってくれたのでその通りにした。
◆◇◆
鈴菜ちゃんのサポートでどうにかお互いに身体を手に入れたオレたちはその身体を借りて鈴菜ちゃんについていった。
向かった先でオレたちは芹葉さん、緋奈さんと再会。少し前に奇病で眠っていた彼女たちの仲間たちと自己紹介がてらあいさつを交わす。
芹葉さんたちから聞いていたが、それはやはり恐怖ものだとわかった。最初は抵抗していた鈴菜さんの姉、今はオレの手足になってくれている清白さんも、オレの精神が宿りつつも解呪に回らないのはひとえに鈴菜さんのおかげだった。
彼女たちに断りを入れてからオレは清白さんの身体で、奏は鈴菜さんの身体でお互いの寮部屋で過ごす。しかし………まるっきり同じなのには驚いたな。
彼女たちの記憶を通してオレの中にも逆流していく記憶があった。
それは、少し特殊な世界で別時間軸のオレたちが秘密組織であるオルタナティブに属する調理師として任務をしていること、2人の姉妹が実は特殊な中で生み出されたこと、諸々だ………。
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◆◇◆
【如月 奏 視点】
私とお兄様を取り巻く環境は目まぐるしい。先日は袮音さんを救うべく、彼女たちと協力して戦いに挑んだかと思ったら、今私たちは七草さん姉妹の身体に憑依して過ごしている。
私は鈴菜さん、お兄様は清白さんになっているなんて。
私の上ですやすやと寝息を立てているお姉ちゃん………(どうやら私が鈴菜さんの身体を借りているからか、記憶からにじみ出てくるその想いが無意識のうちに私をそう呼ぶように訴えているかのようだ)を見ると、あぁ、本当に何から何まで瓜二つなんだなと思ってくる。
私は彼女の身体を借りつつ、同じように眠りにつく。
◆ ◇ ◆
ーーーー鈴菜さんの身体で眠っていたはずの私は、その中で夢、というかひとつの現実をまのあたりにしていた。ここが異常であると、お姉ちゃんも気付いたみたい。霊能者の力に導かれるまま、私はお姉ちゃんと協力してこの世界で彼ら年端もいかない少年少女に友好的に接さない外敵をしりぞけるため、物理無効、魔法無効の空間を意図的に作り出した。
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【??? 視点】
………? 僕たち雪花小学6年1組の1階組の23人の中で、木佐貫君と湯村さんを僕らの中から外した状態で僕たちをかくりする膜が張られたんだけど………。
いや、どういう状況………?
そしてこの結界を張った彼女たちは誰?
いや、それよりも………。
???「………あ、ありがとう?」
責める言われはないはずだ。だから僕は素直に感謝を口にする。
後方では曽我さんやガモ、ミソ、妹の佐羽、親友のコンケンやナギたちが唖然としている。その表情は見なくてもわかる。
みんなも今の僕と同じ思いを心に抱いているということに。
2人の女の子のうち、右側にいる女の子がガモのほうを振り向いて言う。
???「………須鴨 光輝さん」
光輝「………あぁ?」
???「………あなたはサブリーダーがお似合いです。そこにいる、芦原 佑馬さんでも見抜けない悪魔の恐ろしさをよくわかっています」
光輝「………なんとなく、そう思っただけだ」
そう言いながらガモは、僕を見る目がいっそうきつくなる。思わずたじろいでしまう。
???「………そして、佑馬さん。あなたは自分の中にいる未詳の悪魔や、他の友好的な悪魔から既にその恐ろしさは聞いているでしょう?
シェルターに入ろうとしているそこの湯村 雪美さんは4階組のリーダー格が差し向けた罠であるということをもっと早く疑うべきですよ」
佑馬「………えっ、どういうこと!?」
今度は僕の左にいた同じ顔の女の子が言う。
???「………あなた達と同じように彼女も悪魔に憑依されているわ。しかも、その悪魔はサワさんにいるヴァラクやナギさんにいるクローセル、アリアさんにいるオセなんかとは違う………。
現状、今のあなたたちでは手も足もでない厄介なチート能力を持つ力をその内に秘めている。彼女はそこから逃げ出し、いえ送り込まれた刺客なのは明白。欺きの仮面うんぬんより、あなたは既に綿巻さんがクリーチャーになったその怖さを体験しているでしょう?
サワさんが言っていましたよね? レシオ50以上は申告してほしい、と。
そして彼女のレシオは爆発寸前。こうなると、もはや湯村さんの意識は手の内にあり、記憶から読み出すのもたやすいし、さらに言えば彼女を助ける術は限りなくもうないにひとしい。
私たちが介入しなかったら………蒼衣さんも多田君も死んじゃうよ………?」
蒼衣「………じゃあ、私は雪美ちゃんに捕まったら逃げ出せずに、殺されちゃうの!? そんな………」
光輝「………どこのどいつかは知らんが助かった。で、オレや曽我たちをハメようとしている、湯村の姿をしたそいつは誰なんだよ!?」
???「………そうですね、まず湯村さんに取り憑いている悪魔は………好戦的でしぎゃく心を持つ危険な存在、名前はアミー………です。
彼の能力は自身を傷つけるありとあらゆる事象をバフも含めてなかったことにする最悪の能力。いわゆる無敵ですね。そしてそれだけじゃあない。
そこにいる木佐貫さんもテルキさん、あなたを殺してカード化して高笑いする魔人化に至ってしまうの。それもあるけど………」
佐羽「………もしかして………二木だけじゃなくて4階組含む、灰崎も?」
???「………そうよ。まぁ誰かが言ったんじゃない? 次は総力戦になるって。だから私たちが介入しなかったら、最悪多田さんや曽我さんたちだけのぎせいじゃすまなくなるってこと。
あと湯村さん側としては情報を提供するかわりにあなたたちを油断させてその隙に曽我さんをカルシナの街に連れて行ってあわよくばひっそりと死亡させる………なんていう恐ろしい筋書きを、灰崎さんに憑依した悪魔はギルドリーダーでみんなを洗脳してあなたに命じたんじゃないかしら?
湯村さん………いえ、湯村さんの肉体を奪った悪魔、アミー?」
その名を口にした瞬間、湯村さんをまとう雰囲気が重苦しいものに変わった、ような気がする。
僕の中にいる未詳の悪魔も『気をつけろよ、ユウマ………その甘さが命取りだぞ?』 と言っているような気がしたのだ………。
まさに一触即発なその時………。
▶︎4階組の敵対生徒と1階組の味方生徒 (木佐貫は除外)のレベル差などの戦力にあまりにも差がありすぎるため、【バランス】を発動します。
▶︎ユウマたち味方の非戦闘経験者のレベルが敵対生徒の配下生徒のレベルと同程度にレベルを変更します。
▶︎ユウマ•サワ•コンケン•ナギ•テルキ•アリア•アオイ•ハルキ•チナミ•トモリらの主力級キャラのレベルを灰崎•二木のレベルよりも少し高いレベルに現在のレベルを変更します。
▶︎ユウマたちは憐の悪魔チート<鉄化>が使用可能になります。
▶︎ユウマは<二回行動>が<六回行動>に変更します。
▶︎ユウマは二木の悪魔チート<魔法成功率ブースト>、灰崎の悪魔チート<ギルドリーダー>を敵から奪い使用可能になりました。
▶︎ナギ•トモリ•アオイの僧侶クラスは高度な支援ができるようになりました。
▶︎アオイ•ナギ•トモリは雪美の悪魔チート<破邪>を奪って使用可能になりました。
▶︎ユウマたち(味方から敵対生徒になりうる者は除外)は畏怖がレベルMAX、全反射のスキルが使えるようにします。
▶︎テルキは相手のキャプチャー対象から除外されます。
▶︎綿巻すみかのクリーチャーにより死亡した生徒を【再生】し復活させます。
えっと………つまり、僕たちが二木たちよりも強くなったってこと?
スキルのおかげで、さっきまで感じていた湯村さんに潜むアミーの威圧がまるで消え去っちゃったよ。
しかも僕は灰崎と二木の悪魔チートだけじゃなく、飯田さんたちの悪魔チートも使えるようになったってこと?
それに、みんなのレシオが0に限りなく小さい数値におさまっているみたいだしね。
そこは………助太刀してくれた彼女たちに感謝かな?
僕たちは4階組の悪魔チートを多用することにした。この戦闘中は僕たちの悪魔レシオは数値が上がることはないようなので遠慮なく使わせてもらおう。
まずは藤川さんの悪魔チートの<鉄化>で自身の防御力を高め、そして二木の悪魔チートを使い、確率を100%にして底上げ。
ほんの数秒前まで苦戦を強いられていた僕たち1階組のメンバーが生き残りをかけて強い意志を芽生えさせていた。彼女たちはそれがわかると、その存在を消していたんだ………。
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【七草 清白 (IN 如月 無月) 視点】
私たちは………元いた世界に戻ってきた。彼らがこの先どうなるのかは、さすがに私たちにもわからない。
だからそこから先は………彼ら次第だ。
(………オレたちもそろそろ身体を返さないとな)
私の中には無月くん、妹の中には奏ちゃんが宿っている。また、彼らが私たちの前に現れたとき、また身体を貸してあげればいい。その日を夢見て私たちは彼らに別れを告げたのだった。
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【如月 無月 視点】
オレと奏は元の並行世界の時間軸に戻ってきた。分身と入れ替わった時の記憶は頭の中に全て入っていた。分身が言うには結局、康宏たちがどうしてああなったのかは全くわからなかったそうだ。康宏たちがわからなければそれでいいと思う。オレと奏だけが覚えていればそれでいいのだ。あとは………、そう。袮音のことだ。結局、袮音もこの並行世界の時間軸ではその概念は消失してしまったらしい。オレの側にいるこの奏は今も相変わらずオレのことを『お兄様』と呼んで慕われている。
あとは………なんだったけな?
……………………。
母さんと、父さん? それに………『オルタナティブ』のことだったか?
母さんに話した内容も、父さんに話したことも今のオレの記憶からはすっかり抜け落ちてしまっている。覚えていないのだから、そんなに大した話ではなかったのだろう。
いつもと変わり映えのしない平和な日常が続いていく。でも、オレと奏の中に培った様々なスキルなどは今も変わらずに残り続けているようだ。
オレはこれからも………奏と共に歩んでいこう。
※第19話以降の外伝的なストーリーに続きます。