第17話 時空を超越した空間で日向と袮音と対峙する無月たち
日向「………ん? そこにいるのは我が息子と、奏ではないか。悪いがな、俺たちにはまだやらなければならぬ使命があるのだ。悪いが、これ以上先にはお前たちを進ませてはいけないのだ」
奏「………お父様! どうして………私たちの邪魔をするというのですか!」
日向「………邪魔? 何を言っているのだ? もうすぐ、新たな世界が創造されるのだぞ? 人間は弱い。これより先の世界には弱き命など不要。強き命がある俺たちのような融合生命体で充分。消えよ!」
日向の放つ【威圧】を無月たちは受け、まともに立っていられなくなりました。
そこに袮音と呼ばれし少女が追撃をし……。無月たちは力及ばず倒れてしまいました。
◆◇◆
日向「………行くぞ袮音。邪魔者は片付けた」
???『………はい、お父さん』
日向は袮音の手をとり、時空の彼方へと消えていく。無月たちはすでに戦闘不能にちかしく、まともに闘う気などなかったのだった………。
◆◇◆
【半透明の女の子 視点】
………………。
わたしはお兄ちゃんたちの戦いを空中に漂いながら見つめていた。お兄ちゃんたちは強い。
けど、それ以上に今目の前にいるこの日向という男の人と、袮音とよばれた少女の力は今の私たちの手にはあまりにも力の差がありすぎた。
わたしはお兄ちゃんたちになんとか戦いを続けたくていのっていたんだけど………。
無月「………悪い。今のオレたちじゃ親父たちにはかすり傷ひとつつけられねぇ。オレたちを信じてくれていたのにこのザマですまねぇ」
無月お兄ちゃんがみんなの気持ちを代弁してわたしに対して言葉を紡いでくれるけど………それも見ていていたたまれない感じだ。
無月お兄ちゃんだけじゃない………。
芹葉お姉ちゃんも、緋奈お姉ちゃんも、鈴菜お姉ちゃんも、みんなもう一度戦う勇気が持てなかった。
(…………わたしはみんなと一緒がいい……………)
やっとわかった。わたしはみんなのことが好き。あの時、音楽室で耳を傾けなかったら………わたしは今のわたしじゃなかった。
みんなとの戦いを経て、わたしの中にも自分の姿を欲したいという願望がめぶき始めた。
もう見てみぬふりはしたくない。なにより、お兄ちゃんたちには笑っていてほしい。
もしも………世界を壊され新たに創造されたら?
そうしたら………もうみんなとは離れ離れになってしまう。
そんなのは絶対にイヤだっ!!
こんな気持ちはなかった。だけど、わたしにはみんなを守り抜き、戦いたいという意志がある。
だから………!
(………わたしにみんなを守り抜く力を………戦うためのみんなと同じ人間形態を………わたしは望む)
ーーパァァァ!
半透明だったわたしの姿が不思議な光の結集により、人の形をとり始めた。背中には天使の翼が生え、槍を構えた20代以上の成人女性のような見た目になったーー。その名前は白き大地ファスティアナが召喚獣の1体、シャイニーベルそのものに近い形態を得るのだった。
早速私は与えられた力の加護を使う。
『………光の翼よ、傷ついた者たちの身体と心を慈愛の光で浄めたまえ! 【聖なる祝福】!』
傷ついていたみんなの傷を癒した私はさらに、
『………【魔力のベル】! 【光速のベル】!』
お兄ちゃんたちの魔法攻撃力を最大まで上昇、素早さを最大まで上昇した。
◆◇◆
【七草 鈴菜 視点】
半透明の女の子が人の形をとったかと思うと………、次の瞬間、私たち全員の傷ついた身体と心が塞がっていた。
だけど、バフをかけても日向さん達に届くのかはわからない。
でも、このまま世界の滅亡を指をくわえて見ているわけにはいかないよ。
お姉ちゃん………お願いだよ。
私に………私たちに力を貸して………。
その時、私の中にお姉ちゃんの声が聞こえた気がしたんだ………。
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【日向 視点】
俺は今袮音と共にこの世界の心臓部にまで来た。だがここに来て想定外の事態が起こった。息子たちがまだ息をしていたのだ。あれだけダメージを負わせれば起き上がれないはずなのに、誰かがそれを手助けしたようだ。
日向「………仕方ない。お前は先に行っていろ」
???『………お父さん! 私も………』
日向「………だめだ、ここは俺が食い止める。だから先に待っていろ、袮音!」
そうして俺は息子たちの相手をしに戻ることになった。
◆◇◆
【??? 視点】
ふふ………お父さんが扱いやすそうな男でよかった。私がか弱い存在になりさえすれば、簡単になびいてくれた。
あとは……、早くこの世界を終わらせてしまえばいい………。それなのに………。
???『………なんでこんなに胸が苦しいの!?』
私の胸の中を謎の激痛が襲う。
何………何が起きているのっ!?
◆◇◆
【日向 視点】
俺は再び息子たちの前に立ちはだかる。
日向「………なぜお前たちは俺たちに刃向かう!?」
無月「………親父たちには親父たちの使命があるように、オレたちにも役目があるんだよ。オレはどっちの世界がいいとか関係ないんだよ。確かに人はもろいし弱いのかもしれねぇ。けどよ、それ抜きでいち個人の勝手な願望で他者の人権を奪っていいことなんかあるわけがねぇんだよ!」
奏「そうです。お父様!! 私たちは私たちの日常を取り戻すため、ここまで来ました。たとえ何度絶望に染まっても、力を失っても………戦うこと、逃げることから目を背けたりなんか、しませんっ!」
日向「………ふん、口ではなんとでも言える。そこまで言い切ったからにはなおのこと倒しておく必要がある。くらえっ! ヘルファイア!」
【炎魔法】の最上位魔法をてのひらから放った日向に対し、後方からあくあが【水魔法】の最中位魔法である【ハードレイン】を放ちそれをそうさい。
さらに、わためが【雷魔法】で【サンダーチェイン】を発動し、間接的にダメージを与えていく展開に。
鈴菜「………私たちもいきます!」
芹葉ちゃん•緋奈ちゃん•鈴菜ちゃんの3人による協力技「守って! ヴェール」で不可視の攻撃から完全防御。
無月•奏による兄妹の2人技協力技「ラグナロック」で日向に大ダメージを与えつつ、味方全員のアクティブゲージを底上げ。日向が動くよりも早く見事な連携協力技を放つ。
さらに、天使の少女サラと、悪魔の少女ルナによる協力技で日向が放つ特殊攻撃系を発動不可にして形成逆転。
瀕死に近かった無月たちによる無双コンボ。日向の自由を拘束させ一行は袮音の姿をした者の場所へ向かったのだった。
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無月たち一同は袮音の姿をした誰かの元に辿り着いた。かいこう一番に無月が口を挟んだ。
無月「………もう鬼ごっこは終わりにしようぜ、袮音………いや、『袮音という人間の少女の記憶から身体を構築した者』よ………」
奏「………え、お兄様。それは本当なのですか!? 目の前の人物がそういうものだったと?」
無月「………今、確かに胸をおさえて苦しんでいるように見せているその姿も………袮音がいた時間軸からその記憶を投影させたんだろう。親父のほうはかいもくつかないが、あれも種明かしすればけして辿り着けない問題じゃあないはずだ」
???『………そうだね。私の正体………最初から見抜いていたなんてね。計算外だったよ。そう………私は………我は他者の記憶を喰らい成長する者………異識体なり!』
無月「……いいや、気付けたのはここにいるみんなのアドバイスから推察したからだ。オレ達は仲間、友達に囲まれているからな。だから、他者の記憶や存在を喰らってかてにしかできないアンタは一生わかりはしねぇよ。アンタを倒してみんなもこのつぎはぎだらけの世界を終焉させてやるよ! 真実を知るのはそれからでも遅くないからな! 行こう、みんな! これが最終決戦だ!手強いが、オレたちは負けない! 絶対に勝つ!」
激しい攻防の末に彼らがどうなったかは詳しくは割愛するが、この敵を撃破した瞬間、彼らの存在があいまいになり何も知覚することができなくなった………。
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