第13話 学園の生徒たちの救出、わためとの出会い
ナレーション「あなたは肉体を持たない幽体でしたが、この学園にいる全ての女子生徒の身体を奪ったあなたは女の子たちの身体で気持ちよさを味わうべく何度も望まぬ快楽を女の子たちに刻んでいました。そんなある時のことです。あなたは最初に憑依した女子生徒、芹ちゃんこと、巽 芹葉 ちゃんの身体で手指を動かして学園を徘徊していた時のことです。芹ちゃん……あなたは自分の学園に見慣れない女子が何体か紛れ込んでいることに気付き、あなたの分身となってしまった霊能力者の2人の姉妹、七草 清白ちゃんと妹の七草 鈴菜ちゃんを呼び寄せました。七草姉妹………要するにあなたはその力で霊視を試みてみました。しかし、そこからはなんの反応もありませんでした。……ごうをにやしたあなたは芹ちゃんの身体の中から"霊力の手"を伸ばして幽体でその不定形少女を操ろうとしました。しかし………芹ちゃんであったあなたがその少女に"霊力の手"で伸ばした瞬間、芹ちゃんの身体が保てなくなり、あなたは芹ちゃんの身体を手放してしまい、2度と芹ちゃんの身体には戻れなくなってしまいました。その少女は黒い泥のような存在だったので、あなたは今の七草姉妹を含めた身体を失うわけにはいかないと思い、その場に残されてしまった巽芹葉ちゃんの身体を残して逃げ出してしまいました」
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ナレーション「………あなたを取り込んだ泥のような少女はうごめくことなく消滅していきました。残された巽芹葉ちゃんの身体に誰かが手を伸ばします。どうやら彼はあなたに侵食されてしまった芹葉ちゃんの魂を浄化させ助けようとしているのがわかります。そして彼は芹葉ちゃんの意識が段々とわかってくるようになると言いました」
???「………おい、きみ、大丈夫か!?」
ナレーション「………すると芹葉ちゃんは彼の呼びかけにわずかに身体と唇を震わせて答えます」
??? (芹葉)「……あっ、はい……なんだか久し振りに自分の身体で誰かとこうやってお話しができた気がします。あなたが……私を……あの暗い闇の中から助け出してくれたんですか……?」
???「………あぁ、そうだ。きみはあの得体の知れない存在に長い間ずっと身体と主導権を奪われ続けていたんだろう?」
??? (芹葉)「………はい、その通りです。いつの頃からか、私やみんなの身体はあの誰かに操られてしまっており……恥ずかしながら何もできない自分にはがみしている思いだったんです。お願いです! あの誰かに身体の自由を奪われ、みんなの尊厳と清楚を踏みにじった存在を追い払うための力を下さい! みんなのことを助けたいんです!」
???「………当たり前だ、実はもう既に解き放っている。じきに結果がわかる。………というわけで、きみを【ダークルーム】ごと巻き込んで身を守るよ。あぁ、それと………オレの名前は、如月 無月 と言うんだ。それで………きみの名前は……?」
???「………私は私立檻姫学園の2年生の、巽 芹葉 といいます。短い間ですかどうか宜しくお願いしますね、無月 さん?」
無月「………あぁ、宜しくな、芹葉ちゃん」
ナレーション「………如月無月と名乗った彼は【ダークルーム】で芹ちゃんを守りながら辺りを警戒しつつここに来た理由をぽつぽつと話し始めました。芹ちゃんが事情を聞いている間、あなたはこの不定形少女の存在に自らが脅かされることとなり、苦労して手に入れた女の子たちの身体を次々と手放す事態となりました。"霊力の矢"すら取り込んでしまい、あなたは七草姉妹の身体を手放してしまいました。そして後を追うように片葉 奏子ちゃん、室町柊子ちゃん、黒川 唯花ちゃん、水垣 翼ちゃん、響 莉子ちゃん、渡瀬 澄水ちゃん、風宮 夏帆 ちゃんと………いう感じで。そこには花ちゃんや月ちゃんなどあまたの女の子の身体も含まれていました。あなたが現在憑依•身体の支配を強めているのは、千羽 緋奈 ちゃんただ1人だけとなってしまいました。彼女たちは芹ちゃん同様、すぐに無月と芹ちゃんが回収、侵食されてしまった魂を浄化させていきました。もちろん芹ちゃん含め、みなの思いは緋奈ちゃんも救うことです。芹ちゃんにだけ真実を話した無月はあの不定形少女が冥土に似せて作った魔法だと明かしました。追い詰められた緋奈ちゃん………あなたは正気を取り戻した七草姉妹と奏子ちゃんの手で跡形もなくやられることになりました。無月と学園の女の子たちは場所を移動しつつ、あの大浴場の温泉そのものが実体を持たない存在の霊力を回復させていたと説明すると、七草姉妹たちは驚きました」
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無月「………きみたちを襲ったあの実体のない霊体も、もしかしたらこの温泉の効能に引き寄せられてきたのかもしれないな。特に、奏子ちゃん、清白ちゃん、鈴菜ちゃんは霊能力者なんだから、霊体に隙を与えちゃいけないのに……除霊に気を払いすぎて乗っ取られちゃったら元も子もないでしょ?」
清白「………うっ、返す言葉もありません」
鈴菜「………お姉ちゃんに同じ思いです」
奏子「………無月さん、あなたが私たちの学園に来た経緯を話して下さい」
無月「………詳しい事情はここにいる芹葉ちゃんに話したんだけど、オレの仲間がこの学園に通じる紋様を壊したら地下へ降りる階段が現れて……辿っていったらここに辿り着いたんだ。きみたちがあの存在に囚われたことを知り仲間には待機してもらってオレひとりであの不定形少女と潜り込んだんだ。きみたちを救ったからにはきっとこの世界を解き明かす鍵になるはずなんだ。きみたちはこの先オレたちが保護するけど、この世界がどうなっているか、清白ちゃんや鈴菜ちゃんには特に肌で感じて欲しいんだ。だから、一緒に来てくれると助かる」
ナレーション「………無月は疲れた身体を癒すため、今日のところはこの学園に留まった。妹やあくあにはメッセージを飛ばしておいた。朝か昼か夜かわからない数時間後に無月たちは学園を出発。学園から元いた世界に戻る道のりを通り地上へ出るとそこにいたのは奏でした」
「………お兄様 ご無事で何よりです!!」
「………ただいま、奏、あくあ。心配をかけたな」
「………いえ、無月さんが無事ならそれで………あの、無月さん。そちらにいらっしゃる方々が………」
「………あぁ、例の学園に囚われていた生徒たちあだよ。霊能力者がここにいる3名なんだ」
ナレーション「………彼女たちは自己紹介を済ませて改めて無月が話し始めた」
「………清白ちゃん、鈴菜ちゃん、ここがオレたちの変わってしまった日常の世界だよ」
そう言ってオレは水の紋様がある建物を中心に指を指しながら話し始めた。
水の紋様を水系統で壊せばあの学園に戻り、温泉に浸かって回復することができることは、この不定形世界を安らぐための場所としては最適だった。
むしろ、水の紋様にはまだ種類があり、あの学園以外にもまだまだ行けそうな場所があるとわかった。
それと………こつ然と消滅した母さんたちや級友たちの足取りは依然掴めていないことを、オレは奏やあくあから聞いて知った。
本当になんなんだろうな、このつぎはぎだらけの世界はよ………?
「………あと、お兄様。依然として祢音さんの足取りも掴めきれていません。彼女は今どこにいるんでしょうか?」
「………わからない。でもまずは学園の生徒を保護しつつ、あくあの仲間を探す。それが当面の目標だろう。それに………あのアイズモンがまだ潜んでいるかもしれないって思ったら……」
と、その時。七草姉妹たちが"霊力の矢"を放つ。すると空間に裂け目が現れ、そこを形作っていたアイズモンが消滅した。
「………ありがとう、助かりました」
清白「………いえ。先程聞いた話だと私たちの学園があった場所も、ここも既に安心していい場所にはならなくなったみたいですね。もしかしたら、私たちを操ったあの存在も………」
鈴菜「………その可能性は否定できないね、お姉ちゃん」
緋奈「………悪いけどあたし達は力になれそうにもないから後方で待機してるよ、ごめんね?」
「………構わないよ。戦うのはオレと奏、あくあ、そして清白姉妹が受け持つからさ。奏子ちゃんは近づく敵の撃破とみんなの守護を頼む」
奏子「………あぁ、任せてくれ!」
アイズモンを撃破しつつ、一旦水の紋様2は破壊せず、新たにできた雷の紋様がある建物を発見。七草姉妹が微弱な雷属性系統の技を放って破壊。その先に進むと羊に囲まれて動けなくなったあくあと同じホロライブVTuberのひとり、わためを保護した。
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▶︎如月無月たちはわためを仲間にしました。
▶︎わためは【雷魔法】と【混沌魔法】の一部を習得しました。
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清白「………無月さん、あなたたちが体験した世界のこと、ここにある紙とペンを使って図式化してくれませんか?」
「………あぁ、わかった」
ナレーション「………無月は清白ちゃんから手渡された紙とペンを使っておおまかなこちら側と形を失った虚ろな世界の図をだ円形にしてえがいてみた。但し、無月は画力が皆無なので時折奏の修正がつど加えられます」
ナレーション「………無月と奏から得た知見も加わると、七草姉妹は大変驚いた表情をしていました。いかに今自分たちがいるこのつぎはぎだらけな世界が不安定すぎるのかを………」
鈴菜「………お二人ともありがとうございます。今のでよくわかりました。私たちを、その場所まで連れていってくれませんか。それに………お二人からは違う波動をなんだか感じますので」
「………わかりました、お兄様それでいいですよね?」
「………あぁ、構わない。むしろ助かるよ、きみたちの存在が」
ナレーション「………というわけで、二人はあくあ+わために、奏子ちゃん、七草姉妹+芹葉ちゃんら学園の女生徒を連れて水月学園の図書館のあの本棚へと転移魔法で飛び、手順を踏んでそこに再び足を踏み入れることになりました。すると、無月は悪魔の少女、奏は天使の少女の姿へと入れ替わり、あとはみな姿が同じなところから、霊力がそれなりに高いことがわかりました」
奏子「………ここが無月くんたちが言っていたという………『形を失った虚ろなる世界』ね」
芹葉「………私たち、すごく不安定な場所に留まっていたんだね………」
夏帆「………うん、本当にね」
翼「………しかし、信じられないよなぁ」
莉子「………信じられないって、何が?」
澄水「………この世界そのものだね」
緋奈「………私たちがいた表の世界とこっちの世界そのものの見方自体が………」
柊子「………全然違って見えるってこと」
花「………ですね」
月「………そんな不安定すぎる世界で」
流花「……もしも皆さんと会えていなかっまら………」
あくあ「………私は。私とわためちゃんは………」
わため「………誰にも気付かれずに朽ちていたかもしれないってこと、だね?」
芹葉「………うん、考えただけでも恐ろしいよね」
清白「………それが、お二人の中に眠っていた違う波動の存在なのですね」
ルナ「………そうよ、私は悪魔。ルナでいいわ」
サラ「………はい。私は天使。仮名でサラと呼んで下さい」
夏帆「………とりあえず、あの水の紋様があった場所まで行ってみない?全体に【レビテーション】と【エアボール】だっけ? 頼むよ」
サラ「………わかりました。皆さん、わたくしたちの周囲へ……」
ナレーション「………というわけで円陣を組んだ一同は、私立檻姫学園を結んでいたあの場所へと、地面が不安定だらけなその場所へと向かったのです」
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