ミッション3:喋る猫を追え? / 3
ジューシュワシュワシュワ。高温の油の中で母ちゃん特性のたくあんコロッケが踊っている。余談だがこのたくあんコロッケ、父ちゃんの焼き鳥屋で人気のメニューだ。揚げるのは母ちゃん。出すのは父ちゃん。母ちゃんのコロッケのおかげで店が繁盛していることもあり、父ちゃんは母ちゃんに頭が上がらない。それでなくとも尻に敷かれているが。
死神とか天使とか機関銃とか、タイムリープとか、だいぶ日常から外れたな、俺。ぼんやりとそんなことを思う。
「大介、この時間の父ちゃんと悠介にはまだ会ってないけど、巻き込んじゃ駄目よ」
「……俺のことを1番に巻き込んでおいて何を言うか。いや、何でもない」
母ちゃんにギロリと睨まれ、揚げている最中のコロッケを投げ付けられないように訂正する。この時間の父ちゃんと悠介、ね。父ちゃんは恐らく、焼き鳥の仕込みで忙しい。悠介は中学か高校の部活だろう。2人に遭遇する前にタイムリープしたいが、しじみのことは忘れちゃならないだろう。忘れたいが。
猫が死神をするくらいだ、死神も人手不足なのか。そんなことを考えつつ、カラッと揚がったたくあんコロッケを見ていると、玄関の扉がガタガタと揺れる音がした。父ちゃんか?悠介か?それとも……追手か?俺も母ちゃんも身構える。しかし、トテトテと台所に現れたのは……しじみだった。




