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プロローグ:母ちゃんが死んだ / 1

 某年4月1日、エイプリルフール。母ちゃんが、嘘みたいに死んだ──。



 俺、伊山(いやま) 大介(だいすけ)は元々、親孝行な方ではなかった。いや、どちらかと言わずとも親不孝な方だった。田舎とも都会とも言えない実家とのやり取りは数ヶ月に1度。優秀で親思いの2つ年下の弟に全てを投げ、飲み会と合コンと仕事に心身を委ねること数年。


母ちゃんの葬式中、ついに俺に罰が当たったのだと思った。還暦を迎えてはいたが、母ちゃんが大病や大怪我をしたことは1度もなかった。不摂生な俺が親を置いて死ぬことはあっても、その親が──母ちゃんがこんな形で死ぬなんて。事故死、だった。



 「大介、家に寄ってかないか」



 全てが終わった時、父ちゃんが俺にそう言った。弟、悠介もそうしないか、と俺に言った。悠介は20代で家庭を持ち、今は会社員をしながら実家で奥さんや子供と一緒に父ちゃん母ちゃんと暮らしている。もう、母ちゃんは居なくなっちまったけど。



 「……じゃあ、ちっとだけ」


 「ちっとと言わず、何泊かしていかないか。母ちゃんも喜ぶぞ」



 父ちゃんとそんなやり取りをしつつ、俺は都会のど真ん中のマンションにある自宅に帰っても悶々とするだけだろう、と小さく溜め息を吐いた。親不孝者なりに、親の死の痛みを噛み締めている真っ最中なのだ。


 父ちゃんの車に乗り、夜色に染まった半端に発展した田舎と形容するのが正しい景色が流れていくのを見続ける。悠介は心身ともに疲れ切っていたようで、車の後部座席、俺の左隣で眠ってしまった。俺は1人、流れゆく景色の何処かに母ちゃんの姿を探していた。

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