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森へ  作者: 藍内
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傷ついた犬

 ある日、年老いた白い犬がのそりのそりと田んぼのあぜ道を歩いていた。そばにいた少年が近づいても脇目もふらず、道をまっすぐに歩いてる。その道の先には森があった。

 次の日、今度は毛並みの悪い猫が、のそりのそりと言うよりは、ふらりふらりと歩いていた、前日の犬と同じ道を。

 少年は昨日と同じようにそれを見ていた。少年の名は悟という。悟は二日続けて動物が弱々しい歩き方でこの道を通っていることに、多少の興味をひかれながらも眺めているだけだったが、一緒に散歩をしていた妹の加奈子は、

「あのねこ、なにか悪い病気なの?」

「多分な」

「ねえお兄ちゃん、かわいそうだから家へつれてこうよ」

 と、猫を助けようとした。しかし悟は首を振る。

「むりだって、絶対父さんに怒られるぞ。いちいちノラ犬になんかかまうなよ」

「でも……」

 加奈子は反対されても猫を連れて行こうとした。

「やめろって、家にはそんな余裕ないんだから」

 そう言って怒りながら少年は、猫を心配する妹の手を引いてその場から離れた。

 少年の家が経済的に恵まれていないのは本当である。妹の心臓が生まれつき良くなく、治療費の負担が大きいのが原因だった。野良猫を連れて帰らないよう妹を説得するのに、その事情を持ち出してしまったことに少年は悔やんだ。

 猫を連れて帰れなかったからか兄に怒られたからか、元気がなさそうにうつむいている加奈子に、悟は軽く頭をなでた後、

「ごめんな」

 と小さく呟いた。


 朝、少年達はいつものように早起きをして学校に行く支度をする。妹の加奈子が授業で使う色鉛筆を忘れたと言って道具箱をひっくり返している間に、悟は玄関に向かう。

「早くしないと置いてくぞ」

「待ってー」

 悟はゆっくりと靴を履いてから一度家の中を振り返り、扉を開けてからもう一度振り返った。加奈子が廊下を歩いて着たのを確認してから外に出る。すると、家の前の道を犬が右から左へ歩いていこうとしているのが目に入った。

 二日前の犬とは違う。二日前の犬はあれ以来姿を見せていない。あの犬は白かったが、目の前の犬は秋田犬のように茶色い毛並みをしている。

 犬は歩き方がおかしかった。ゆっくりと、幼児でも簡単に追いつけるぐらいの速度でしか進まず、時折バランスを崩しかける。犬が少年の前を横切り、後ろ姿が見えるようになるとその原因が分かった。犬は大けがをしていた、交通事故にでもあったかのように。脇腹は血だらけで、右の後ろ足は半分もげていた。

 悟は玄関から出ようとしていた妹をあわてて制止する。

 傷だらけの犬は、数歩進むごとに大きく口を開けて喘ぎながらも必死で歩いていた。

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