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50:真夜中の来訪者

初投稿です




「――はぁぁぁ。なんかとんでもないことになっちゃったなぁ……」


 目覚めた日の夜。

 久しぶりの食事やお風呂を楽しんだ俺だが、気分はかなり憂鬱だった。

 用意された部屋のベッドに転がりながらグチる。


「まさか、冗談で言った『帝王を叱る』って案が採用されちゃうとは……!」


 そう。王太后のエルディア様は俺の冗談を冗談ととらえず、マジで採用しちゃったのだ。

 っていやいやいやいや、有り得ないだろ……! そのへんの村人の俺が王族叱るとかやばすぎるだろ……!


 しかも、


「“民衆たちの前で堂々と”って、無理だろそんなのぉ……!」


 考えただけで胃が重くなる……。

 エルディア様が言っていた俺の表彰の件だが、彼女はあれこれと手を回して帝都のド真ん中でやることにする気らしい。

 何万人もの人々が見る中、帝王と会わなきゃいけないってことだ。

 それだけでも緊張で吐きそうになるだろうに、しかも叱れと!? マジで無理だよぉ……。


「うぅ……陰キャラのクロウくんになんてことをさせるんだぁ……! もうおうちかえりたいよぉ……!」


 ベッドの上をコロコロしながら俺は泣く。

 ……はぁ、きっと帝王様ブチ切れるだろうなぁ。民衆たちも流石に『なんだコイツ』って目で見てくるだろうなぁ。


 一応俺ってば、今や世間じゃ話題の存在らしい。

 なんか俺が倒したドラゴンって『天滅のニーズホッグ』とかいうやばいヤツらしくて、つまりすごい偉業を成しちゃったってことだ。

 でもだからってさぁ、それで強気になって目上の人にワーワー言ったら、周囲は『アイツ調子乗ってんな』って思ってくるだろ。


「きっと帝都の人たちに石なげられるよぉ……。都会に住んでる人たちからしたら、俺なんてド田舎から来たイモ野郎だし」


 騎士の資格を持ってるだけで、何の権威もない人間ですからねぇ俺。自分たち以下のいなかっぺがすごいコトしたからって大仰な発言をしてたら、間違いなく反感食らいまくるだろう。

 立場も権威もないくせに力だけあって上に噛み付くヤツとか、見てて腹立つだろうし空気読めない危険人物にしか思えないだろ。


「はぁ、もしちょっとした貴族の婿養子の立場とかだったら違ってくるんだけどなぁ」


 立場ってのは印象に箔を付けますからね。元々がただの村人でも、偉い立場だとしたら『そうなるまでの経緯や努力』を周囲に想像させるだろう。

 よくわからん村人の発言と、『貴族の家紋を任されるに至った村人』の言葉では、重みというのがまるで違う。


 んで……もしも王族の婿養子とかだったら、もう物語としては最高のワンシーンだ。


「村人が王に強い発言をしたら『不敬罪』だし、貴族だったら『忠言』だが」


 王族が王に逆らったなら、それは『下克上』を意味することになる。

 “お前を王とは認めない。お前の君臨を許さない。お前を玉座から、引きずり降ろしてやる”って言ってるようなもんだ。


 しかもそいつが民衆の血筋だったら、周囲は盛り上がるだろうなぁ~。

 民衆ってのは自分と同じ属性を持った権力者に肩入れしちゃうからな。

 自分と同じ立場のヤツが成り上がるのは嫌いだが、自分より偉いヤツが自分と同じ趣味趣向やルーツを持ってたりするのは大好きなんだよ。


 複雑な生き物だなぁ民衆は――って話を、村で唯一友達だったフカシくん(※魔物に食われて死んだ)が言っていた。

 アイツただの小金持ちのくせに発言がやたらデカイんだよ。


 ま、それはともかく。


「いい加減に現実を見ようぜ、クロウくん……! 俺は貴族や王族の婿養子どころか、一般の彼女すらない童貞野郎なんだ……ッ!」


 ありえない妄想をやめ、俺はもう一度涙した。

 現実は残酷だ。一般童貞市民の俺は何の立場もないままなぜか帝王(※三十歳以上年上の人)をみんなが見てる前で叱責し、帝王をブチ切れさせた挙句みんなから『アイツやべぇよ』って目で見られないといけないんだ。

 断ろうと思ったけど、エルディア様ってばすごくノリノリだしな。

 それに元々提案したのは俺だしさぁ……今さらなしってのは、それこそなしか。はぁ。


「ま、もしもの時はエルディア様が庇ってくれるだろ。うん、処刑だけはないと信じよう……」


 もういい。辛い未来のことを考えても涙がポロポロ出るだけなので、俺は寝ることにする……!

 というわけで、片腕を消して……っと。


「ふぅ。腕がないのは変な感じだなぁ」


 肘のあたりから欠けてしまった左腕を見つめる。


 ――進化したムラマサの能力、『魂の具現化』は強力だ。

 魔物を呼び出すことが出来るし、自分自身の魂を具現化させることで欠損部位を補うことが出来る。

 だが、具現化を維持するには相応の『魔力』が必要になるらしい。

 

「ヴィータちゃんの剣から風が出るのも、アイリスさんの剣が光るのも、魔導兵装に溜められた魔力のおかげなんだよなぁ」


 ゆえに、二人とも常時ビュービューピカピカできないってわけだ。

 大気中に溶け込んだ魔力を兵装が再び取り込むまで、待たないといけない。

 ……ンで、これからは俺もソレに気を遣わないといけないってわけだ。

 特に俺の場合、ムラマサの魔力が切れたら死ぬからな。


「グチャグチャになった内臓も、ムラマサが補ってくれてるんだもんなぁ。文字通り、命綱を握られちまったな……」


 部屋の隅に立てられた黒刀を見る。

 今はドラゴンの魂に大満足して、のんきにグーグー寝てやがる。


「はぁ、こっちが帝王の件で悩んでるのにさぁ……」


 つくづく自分勝手なアホソードだ。

 まぁいいや。未来の問題は未来の俺が何とかすると信じて、クロウくんも今日は寝よっと!

 おやすみー--------!

 

 

 そして。


「――……クロウくん、もう寝ているのか?」

 

 眠りに落ちる中、アイリスさんの声が聞こえたような気がしたのだった。 



 




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― 新着の感想 ―
[一言] 初投稿…………って、何だっけ?(ゲシュタルト崩壊中)
[良い点] 思ったより力業で生きてた‥‥‥ もはや歩く呪具じゃないか。
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