5:~無駄に旅立ちの時~
心機一転、初投稿です!
「っ……」
――黒魔導士を葬った後のこと。不意に身体の自由が戻った。
俺は表情を歪めながら倒れ込む。あまりの動きに全身の筋肉が千切れかけ、もはや立ってはいられなかったからだ。
「だっ、大丈夫かクロウくんっ!?」
「坊主っ!」
「クロウにいちゃぁん!」
村長さんに村の大人たち、そして助け出した故郷のチビたちが駆け寄ってきた。
「あぁ、みんな……よかった……」
彼らの様子に安堵する。
俺が魔剣に操られていたことに気付いてないようだ。そうじゃなかったら近づいてすらこないだろうからな。断罪者を気取って自分で戦ってるように見せる作戦が上手くいった。
それに幸運がもう一つ。どうやら彼らには、『この光景』が見えていないらしい。
『たっ、助けてくれぇぇえええッ!?』
『ゴガァァァァァッ!』
耳に突き刺さる断末魔。
黒魔導士やゴブリンたちの死体から、薄っすらとした本人の姿が――おそらくは魂が抜け出し、俺の魔剣に吸い込まれていく。
『イダイダイダイダァッ!? ウギャァァァアアアアアッ!?!?』
絶叫と共に、肉と骨が砕き飲まれるような音が響いた。
刀身の中に消えていく魂たち。まさに捕食と呼ぶに相応しい光景だ。
――『黒妖殲刃ムラマサ』。
俺の魔剣、超こええ。
改めてそう思いながら、俺は意識を落としたのだった――。
◆ ◇ ◆
「――くっ、クロウくん! 出ていくとはどういうことじゃっ!?」
襲撃事件から一日。俺は疲労感を残しつつ、村の入口に立っていた。
背後には、村長さんをはじめとした村の者たちが。彼らは一様に困惑していた。
「なぁ待ってくれクロウくんっ!」
みんな俺のことを心配してくれていた。
一応、彼らにとってはクロウくんってばヒーローだからな。
俺への好感度がマイナスだった同世代連中はプラマイゼロになったって感じだと思うが、大体の者は俺を好いてそうだった。
ぶっちゃけずっとこの村に住んでチヤホヤされたい。今なら可愛い彼女も出来ると思うし。あと純粋に筋肉痛で身体やばいし。
だけど、
「申し訳ない。俺は、ここには居られない」
出ていく決意は変わらない。俺はゆっくりと歩み出した。
「そんな……せめて理由を……」
理由? そんなの決まってる。
……腰に差した魔剣、アホソードのムラマサのせいだよバァァァカッ!
――魂 魂……――
(だまらっしゃい!)
魂大好きな鬼畜ソードを脳内で怒鳴る。
はぁ~。黒魔導士やゴブリンどもを食いまくったコイツだが、どうやら一晩で消化してしまったらしい。
朝起きたら普通にたましーたましー喚いてたよ。腹ペコの幼児かお前は。
(ま、完全に身体を奪わない程度には余裕があるみたいだけどなぁ)
今は自分の意思で動けている。
ただし、腕に力を込めておかないと村人たちに刃を向けようとしやがるけどな。
あと「捨てりゃいんじゃね」と思ってボットン便所に落とそうとしたら、俺の首を斬ろうとしやがった。ホンマゴミ。
というわけでさっさと出ていかなきゃマズイと思ったわけだ。
でも『俺呪われてます』って本当の理由を言うと、どこにどんな噂を流されるかわかったもんじゃないからな。
再び表情をキリッとさせて、最後に村長さんたちに振り向いた。
「……あの黒魔導士に仲間がいないとは限らない。俺がこの村にいたら、報復の巻き添えに合ってしまう」
「そっ、それはっ」
「――そして何より。俺は、魔導兵装という力を得た。
もう二度と、善良な人たちが泣かないように……俺はこの力で、悪しき存在を殺し尽くす」
刃を掲げ、村人たちへと宣言する。
ふっふっふっ……これで自然に出ていけるだろう。
俺には故郷を滅ぼされたというバックストーリーもあるしな。
とっさにやることに決めた断罪者ムーブ、なかなか便利だぜ。
「クロウくん……」
「……それに本来、魔導兵装を使うには国の許可が必要だと聞く。それをもらうために、まずは帝都を目指そうと思う」
そうそう、免許制らしいっすからねー魔導兵装。
人を余裕でブッ殺せるアイテムなのだ。無許可で振るうのは実は違法だったりする。
クロウくんはいい子なので犯罪はしません。
まぁ人混みの多い帝都にヒト斬り刀のムラマサを持って行くのは不安だが、そこはこっそり魔物を狩って満腹にさせておけばいいかな。
無許可で振るうのは違法? バレなきゃ犯罪じゃないんスよ。
その後は人の少ないところでこっそり暮らしつつ、呪いを解く方法を探していくさ。
「また、コレも遊ばせておける代物ではないだろう」
そう言って、背中に携えた大剣『ダインスレイブ』に目を向けた。
あの黒魔導士が残していった魔導兵装だ。
クソ重いことを除けばイイ子なんだよなぁ、この子。
柄を握ったら“血が欲しい~!”って感じの波動が伝わってきたけど、うざいからムラマサでゴツゴツ叩いたらおとなしくなった。
あの骸骨筋肉曰く、ダインスレイブのほうが格上らしいのにな。きっと謙虚な性格なのだろう。俺は聞き分けの良いイイ子は大好きですよー。
「魔導兵装は希少な戦力。次は平和のために用いられることを願って、帝都に提出する(※持ってったらお金貰えるらしいしね!!!!!!!)」
「そうか……本当にしっかりとした子じゃのぉ、キミは」
「そんなことは(※あるよ!!!!!!!)」
これにて問答は終わった。
村の者たちはまっすぐに俺を見据え、俺を見送ってくれる。
「疲れたら、いつでも帰って来なさい。みんなで出迎えてやるからのぉ」
「……ありがとうございます、村長。では、またいつか(※もう帰りたい……)」
筋肉痛を隠して旅立つ。
あぁ、次に帰った時には、ムラマサとさよならバイバイできてたらいいなぁ。
そんで『悪を許さぬ断罪者』なんて気難しいキャラ付けはさっさと辞めたい。
こんなキャラ疲れるだけだし、なによりコレで有名になっちゃったら、ヤベーヤツの討伐依頼とか頼まれちゃうかもだからね!
◆ ◇ ◆
「――本当に、立派な子じゃのぉ、クロウくんは」
しみじみと呟く村長。
村の者たちと共に、過ぎ去っていく背を静かに見送る。
……先日の戦いにて、容赦なく黒魔導士らを葬っていったクロウの姿は、助けられた彼らでさえも恐ろしく感じるものだった。
一体どれだけの激情を爆発させたのか。素人目にもわかるほど凄まじく、何より自身の肉体が壊れかねないほどの剣技の数々。アレを繰り出すクロウの様は、いっそ狂気的にも見えた。
だが、
『あぁ、みんな……よかった……』
無事な自分たちを見て、そう言って微笑んだクロウの姿に――恐怖心など吹き飛んだ。
ああ、彼は心の底から平和を願って戦っていたんだ……!
無力な我々を守るために、もう二度と故郷の惨劇を繰り返さないために、正義の怒りを胸に戦い抜いたのだ。
そのまま意識を落としたクロウを前に、誰もが「ありがとう」と感謝した。
そして今日。クロウは唐突に旅立ちを決めた。
それに驚く村長らだが、心の底ではわかっていたことだ。『断罪者』となった彼は、悪を狩り取る鴉として、羽ばたいて行ってしまうのだろうと。
「……村長さん」
見送る村長に、少年少女らが声をかけた。
クロウの同郷だった者たちだ。彼らは意を決して村長に告げる。
「アイツは……あの人はこれから、過酷な戦いを続けると思います。もう二度と、オレたちみたいに故郷をなくすヤツが出ないように」
「じゃろうなぁ……」
「だからっ! 近隣の村に伝えていきませんかっ!? 『断罪者クロウ』の話を!」
瞳を燃やす少年少女たち。熱い想いが村長にぶつけられる。
「クロウの話が伝わっていけば、旅先で彼を助けてくれる者が現れるかもしれないっ! そんな形で彼に恩返しができるかもしれない!
たとえ無力なオレたちだろうと……何も出来ないのは、もう嫌なんだっ!」
「ッ――」
彼らの想いに、村長は静かに感激した。
クロウの勇気と優しさは、こうして他の者たちの心にも火を灯していたのだ。
改めて、かの若者に敬意を表する。彼こそ、今の世にもっとも必要な存在なのだと確信する。
「よしわかったっ! こうなったら詩でも本でも作りまくって、広めまくってやろうではないか! 『断罪者クロウ』の、旅立ちの日の物語をなっ!」
「やったぁ!」
喜び笑う少年少女たちと、自分たちも手伝おうと駆け寄る村の者たち。
こうしてこの村を発信地に、クロウの存在は世界中に広まっていくことになるのだった。
――なお、クロウからしたらありがた迷惑である!!!
そもそも彼は断罪者ではないし勇気も優しさもありはしない。
全て呪いを隠すためにテキトーに演じていただけで、中身はクズな小市民なのだ。
出来ることならバトルなんて二度とごめんだと思っていた。
だが村人たちは気付かない。
「よ~し歌とか作っちゃうかー」
「それいいなー」
無邪気にクロウの存在を広める計画を立てる村人たち。
もはやただのファンクラブである。
彼らはクロウが“みんなに疑われてない”と思って放った『あぁ、みんな……よかった……』というセリフを、“みんな、無事でよかった!”という意味に解釈しており、すっかりクロウ大好き人間と化していた。
さらにクロウが“好感度これでプラマイゼロだろな~”と思っていた少年少女らは、実は元々彼を好いていたがために好感度は限界突破!
のちにクロウの存在を広めるべく、吟遊詩人や歌手となって世界に羽ばたいて行くのだった……!
かくして、本人の知らないところで盛り上がりまくる村人たち。
クロウが「今日は野宿かなぁ。虫きらいなのに……」と情けないことを言っている間に、とんでもない事態になり始めていたのだった……!
※次回、いい加減にヒロインとか出したいと思います!(※ここまでオスまみれ)(※出したいだけで出せるとは限らない)(※このままじゃ書籍化できない)
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