41:次なる魔の手
貧乏令嬢の仕事がいただけたので初投稿です!
「なっ……『天滅のニーズホッグ』を、倒しただと……!?」
黒魔導組織『黒芒嚮団ヴァンプルギス』が首領・ヴォーティガンは絶句した。
玉座の上で震え上がる。“何なんだ、あの男は”と。
「クロウ・タイタス……! 優秀な騎士だとは思っていたが、まさか、こんな……!」
相手は神話の邪龍だぞ? 『七大災禍』と謳われた強敵だぞ? 大昔の魔導騎士たちが、命を捨てても封印することしか叶わなかった存在なんだぞ? これからの計画の要なんだぞ?
それをお前は、どうして倒してくれてるんだよ……。
「さ……最初は圧倒されていたはずだ。ニーズホッグから逃げ惑うしかなかった。小細工を使って反撃に転じた後も、すぐさま半殺しにされていた……」
全身を挽き肉にされ、片腕を失い、そのままどこかの集落へと落下したクロウ。
その時点でヴォーティガンは勝ちを確信した。あの傷では、もはや黒龍がとどめを刺すまでもなく死ぬだろうと思っていた。
だが、
「あそこからだ……瀕死の身体になってから、ヤツの戦闘力が跳ね上がった……!」
そして幕開ける虐殺劇。
伝説の邪龍が嘘のように弄ばれた。すべての挙動を叩き潰され、一方的に命を摘まれた。
あの時のクロウはまさに死神。黒龍の視界を借りていただけに、ヴォーティガンの感じた脅威は計り知れなかった。
筋骨隆々とした腕が、情けなくも恐ろしさで震える。
「ハハッ……クロウよ、オレぁお前さんが憎らしい。おかげで二十年間も練り続けてきた、帝国の連中を苦しめまくる計画が狂っちまったよ。だが……くく、なるほどなぁ……!」
ヴォーティガンは小さく笑う。
テロ組織の王としてでなく――かつて、『レムリア帝国の王になるはずだった者』として。
「――民衆たちを守るために力を発揮するとは、カッコいいじゃねぇかよクロウ!」
彼は堪らず破顔すると、心からの賞賛を送った――!
そう。盤面が狂ってしまったのは、偶然にもクロウ・タイタスが小さな集落に落下してしまったからだ。あそこで運命が変わってしまったのだとヴォーティガンは確信する。
「龍が飛来し、民衆たちの逃げ惑う声が響いてからだ。あそこからあの坊主は、恐ろしいほどの変貌を遂げやがった……!」
人々の叫びに応え、クロウ・タイタスは立ち上がった。
そして放たれた雄々しき宣誓。『絶対に人々を守り抜く』という騎士としての誓い。
それと同時に溢れた殺意は、まさに正義の心の現れだった。
「半死半生の身だろうが関係ない。誰かを守るためならば、修羅へと覚醒できる男か……!」
悪を赦さぬ断罪者、クロウ。
かの若者に対し、黒魔導の王は尊敬の念を抱いた。彼にならば裁かれてもいいと、嘘偽りなく思ってしまった。
――なお。実際にはクロウに守護の気持ちなど一切ないのだが。
ただ単純にブチ切れまくって鬼と化しただけなのだが、ヴォーティガンには彼が最高の騎士にしか見えない。
“自分という魔王に対し、時代は勇者を輩出したか”と的外れな妄想に酔い痴れていた。
「クククッ……いいぞクロウ、近いうちに顔を合わせよう。そろそろオレも、舞台に上がってやろうじゃねえか……!」
対峙する瞬間を心待ちにするヴォーティガン。
彼は顎髭を撫でながら、「だがその前に」と言葉を続け……、
「――生き残ってみせろや、クロウ。あのクソビビりな帝王は、ある意味オレより恐ろしいぜ……?」
新作です↓!
『異世界メシ屋一代記 ~料理一つで、悪徳都市を成り上がる……!~』
https://ncode.syosetu.com/n0022hv/




