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32:娘貸し出しサービス

運動始めたので初投稿です


「申し訳ありません、クロウ様」


 宰相様に『ドラゴン狩ってこい』と言われた翌日。

 シリウスの街の門前にて、俺はフィアナ支部長に頭を下げられていた。


「わたくしは無力です……。アナタ様に下されたドラゴン討伐について、微々たる支援しか出来そうにありません……」


 すごくしょげているフィアナさん。ちょっと涙目になっている。


「任務の条件は『単独でのドラゴン討伐』。特に武器の指定はありませんでした。

 その点を突き、クロウ様にいくつかの呪いの魔導兵装を貸し与えようと思ったのですが……」


 彼女は悔しそうに呟く。「スペルビオス宰相はそれを読んでいました」と。


「魔導兵装庫はもぬけの殻になっていました。倉庫番曰く、宰相の部下たちが運び出していったそうです。

 曰く、『いざという時の戦力として、余っている魔導兵装は王都に集約させる』とのこと。また所有者の決まっている兵装も管理を厳しくし、一時的な他の騎士への貸し出しにも、城まで許可を取りに来いと……」


 なるほどなぁ。そりゃ急だとしても、表立って抗議しにくい理由を出したもんだ。

 実際問題、内地に魔物が入り込んでる状況だ。国の中枢に力を集めるのは当然だろう。

 で、そんな状況だからこそ兵装の管理を厳しくするのもまた当然か。


「このタイミングでの指令など、どう考えてもクロウ様への嫌がらせ。あぁ、我がアリトライ家にもっと力があれば、アナタ様のことを庇護できましたのに……!」


 先ほどからフィアナさんはこの調子だ。すごく優しい人なのだろう。

 俺は気にすることもなく、キリッッッとした顔で彼女の肩に手を置いた。


「フィアナ支部長、どうかお気になさらず」


「クロウ様……」


 いや~マジで気にしなくていいからね!?


 ……国やフィアナさんは俺のことを『伝承克服者』だと思って、呪いの兵装も操れるって考えてるみたいだけど、それ勘違いだから!

 呪いの兵装を抑えこめてるのは、俺の身体を操るクソソード『黒妖殲刃ムラマサ』の謎パワーによるものだから……!



(あと微妙に抑えきれてないしな。みんなうるさいし、クソ銃の『アーラシュ』なんて俺を自殺させようとしてくるし。そのへんどうなんだよムラマサくん?)


 ――今 無理。支配力リソース限界。我 成長途中――


(えっ、成長!? もしかして魂を喰い続ければ、やばい装備ももっと操れるってこと!?)


 そりゃあいいことを聞いたぜ。もっと魂を喰わせて……って、それで支配力上がったらダメじゃねーか!

 そしたら俺の身体を支配する力も上がるってことだろ!? ふざけんなアホ!


 ―チッ―


(舌打ちした!? お前、今『気付かれたか……』って感じで舌打ちしたよな!?)



 マジで鬼畜ソードだなこいつ!


 ……ともかくそういうわけで、これ以上やばい装備を持つのは危険な状態だったからな。簡単に押し付けられなくなったのはありがたい。その点、宰相様にはむしろ感謝してるくらいだ。

 まぁそんな事情はフィアナさんには話せないため、テキトーなことを言って場をおさめますか。


「フィアナ支部長。呪いの装備だろうと、希少な戦力。俺の手元に集めすぎるのは確かに問題だ」


「ですが……アナタ様の命を守るためにも、一つでも兵装があったほうが……」


 だからこのままだとその兵装に殺されるんじゃいッ! 頼むから善意で俺を追い詰めないでくれ!


 そんな激情に突き動かされ、俺は思わずフィアナさんの両肩を強く掴んでしまった。



「ク、クロウ様……!?」


「重ねてどうか、お気になさらず。――俺以外の使い手たちに渡り、それで誰かを守れるならば是非も無し。むしろそちらのほうがいい」


「っっっ!?」



 いやマジで呪いの装備みんなも使ってね!!!

 人格汚染にビビッて不良在庫にされると、俺のところに回ってきちゃうから! もう問題児はいらねーから!


 ……という意思を込めた言葉を吐いたところ、


「ア、アナタ様は……アナタ様はなんて……!」


(って、フィアナさん泣いちゃった!?)


 あぁっ、もしかして肩を強く掴みすぎたせい!?

 その状態で装備いらねーからって言っちゃったから、『アナタ様はなんて恩知らずなんでしょう! こんな酷い人は初めてです』ってショック受けてる感じ!?


(まぁそうだよなぁ、フィアナさんは善意であれこれしようとしてくれてたわけだし……。それを突っぱねられたらなぁ……)


 やっぱり俺はコミュ障なダメ男だ。配慮に欠けた言葉で、フィアナさんを傷付けてしまった。

 ここはさっさと立ち去ることにしよう。……『もう一つの善意』についてはマジでありがたいから、お礼は言ってからな。


「支部長。馬車を貸し出してくれたこと、心から感謝します。これでドラゴンがいるという山岳地帯まで一気に行ける」


 俺はちらりと後ろを見た。

 そこには一角獣の魔物『ユニコーン』が引く幌馬車が。

 さらに、


「そして、大切なご息女をともに付けてくれたことを」


 幌の中から、桃髪の少女が顔を出す。

 なんと支部長は、“道中のお世話係に”と、娘のティアナさんをよこしてくれたのだ。


「ママ……いえ、支部長」


 フィアナさんと顔を合わせるティアナさん。

 って、あれ? 実はついさっきまで“ドラゴン討伐のお供なんてこわいよ~!”ってビクビクしてたのに、ものすごく決意に溢れた顔をしてるぞ? なんでだ?


「クロウの言葉は聞いていたわ。……アタシ、必ずこの人の助けになってみせるわ」


「ええ、どうかお願いするわね。この調子だといつ死んでしまうか、わからないから」


 強く頷き合うアナ親子さん。

 えっ、なになに二人とも!? 俺の言葉ってなんのこと!? 死ぬってどゆこと!?


(よ、よくわからんけど……もしかして俺って、めちゃくちゃ頼りなく思われてるー-----!?)

 

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れさまでした 英雄って奴等はきっとこういう勘違いとすれ違いの狭間に生き急ぐ様に生きてきたんだろうなぁ (´-ω-`;)
[良い点] ムラマサくんと対話が成立しているw [気になる点] 回復力をくれる吸血刃と特に害のないモツ喰いくんはいいんだけど 自殺銃はほんと何なのアイツ あれって敵に持たせて自滅させるのが正しい使い方…
[一言] 宰相くん地味にファインプレー
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