31:死ぬな!!!!!!クロウくん!!!!!!
新陳代謝してるので初投稿です
魔導騎士団・シリウス支部にて。
支部長フィアナは、目の前の男に訝しげな視線を送っていた。
「……スペルビオス宰相。六級騎士クロウに対して、ドラゴンを単独で狩って来いとかどういうことです……!?」
鋭く問いただすフィアナ。
まったく戯言にしか思えない命令だった。悪い冗談ならやめて欲しい。
「いきなり来訪したと思ったら、そんな無茶苦茶を言ってきて。
ドラゴンなんて、上級騎士が複数人でかからなければいけない強さの魔物でしょう。それをあの子一人に任せるなんて……」
「お黙りなさい、フィアナ支部長。これは王の決定です♡」
そう言って、スペルビオスは任務書を突き付けた。
そこにはこの『レムリア帝国』の紋章が。
「王からの依頼は絶対遵守がルール。期日から選別メンバーまで、必ず守らなければいけませぬ。支部長だろうが団長だろうが、文句は言えないはずですぞ~?♡」
「くっ……」
悔しいがその通りだった。
元より『帝国魔導騎士団』は、王家によって設立された存在。
今でこそ商人や民間人からの依頼も受け付けているが、本来は王の手足なのだ。それゆえ決して逆らえない。
「やれやれ、不服そうですなぁ支部長殿? アナタに比べてクロウくんは聞き分けがよかったですよぉ?
実は彼に会ってきましてねぇ。ドラゴンを倒せと言った時には驚いてましたが、『このままでは民衆に被害が出るかも!』と付け加えたら、二つ返事でオッケーしてくれましたよぉ~~?♡」
「っ!? そ、そんなことを言ったら受けるに決まってるでしょう! クロウくんの過去をわかって言いましたねッ!?」
いよいよ激怒するフィアナ。そんな彼女に対し、スペルビオスは悪意にまみれた笑顔を浮かべた。
そう。クロウ・タイタスの来歴は、騎士になるに当たって上層部へと知れ渡っていた。
彼がアイリスの弟子であること。呪いの装備を操れる存在『伝承克服者』であること。そして、黒魔導士と魔物の群れに村を焼かれ、苛烈なる『断罪者』として立ち上がったことも。
「クロウ様は外地の人間……何の血筋も持たない平民。まさかアナタたち上層部は、そんな彼が『第二のアイリス』となるのを防ぐために、こんな……」
「おぉ~~~っとっ、失礼な妄想はやめてくれますかなぁフィアナ支部長!?
逆に王や私めらは、クロウくんに伝説になって欲しいと思って、ドラゴンの単独討伐を依頼したのですよぉ?」
「伝説……?」
「そう! 今、この国は大変な状況にあります! 内地に魔物どもが流れ込み、不安がっている民草は多い!
それゆえにっ、この人がいれば安心だ~と思えるような存在を生み出そうとしているわけですよ!」
それがクロウくんです♡ と、ふざけた口調で宰相は言う。
「だからこそ、あえて無理っぽく思えるような条件を付けたわけですぞ。困難を達成してこそ、男は英雄になれるってわけです!♡」
「調子のいいことを……!」
「はぁい、絶好調でございます! というわけで、そろそろお暇しましょうか。はぁ、美人な女性との会話は楽しかったですな~♡」
また来ますぞーと言いながら去っていく宰相に、フィアナは二度と来るなと叫びかけた。
「はぁ……」
一人になった支部長室で溜め息を吐く。
――フィアナは確信した。上は確実に、クロウを殺す気であることに。
それも『民のために!』という言葉を使って、凶悪な魔物に単独で挑ませるとは最悪だ。
そう言われたら、あの青年は逃げることも出来ないだろうに。
「クロウ様……。アナタは苛烈で、何よりお優しい人ですからね……」
どうしようもない娘のことを信じ、仲を取り待ってくれた素敵な男の子。
そんな彼のことを、フィアナは心から案じていた。
そして……一つの決断を下す。
「……王からの任務は絶対遵守。単独でドラゴンを狩れと言われたら、必ず一人で成し遂げなければいけない」
非常に厳しい条件だ。
だが、武器の指定は特になく、ドラゴンに辿り着くまでの道中までも一人でいろとは言われてない。
ならばサポートのしようもある。
「クロウ様。アナタを預かっている身として、出来る限りのことはしますからね」
※なお二つ返事の真実。
宰相様「民のためにドラゴン狩りましょ!(こう言えば頷くでしょ♡)」
クロウ「わかった(偉い人怖いよぉ逆らえないよぉ!!!)」




