3:強襲、『紅血染刃ダインスレイブ』
3話目です。初めて小説書きました。
「無理じゃ……どんな策を考えようが、黒魔導士に敵うわけがない」
重い空気が集会所に漂う。
隣村の村長と大人の男たちは、『今後の村の防衛策』について議論を交わしていた。
事の発端はクロウの故郷・タイタス村の壊滅にある。
その下手人たる黒魔導士は野放しのままだ。いつこの村も襲われるかわかったものではなかった。
ゆえに大人たちは意見を出し合うも、甘い考えは村長がぴしゃりと跳ね除けてしまう。
そのような流れが三日も連続していた。
「野盗風情と一緒にするな。ヤツらの使う『魔導兵装』、その脅威は有名じゃろう?」
「あ、あぁ。たしか魔力の影響で、『神話』や『逸話』の能力を本当に得ちまった武器のことですよね? 見たことないっすけど……」
「うむ」
魔導兵装――それは人類に残された最後の切り札の名だ。
千年前、世界中に溢れ出した高濃度の魔力は、生物だけでなく一部の物品にまで影響を及ぼした。
それらはかつて、特殊な能力を持っていたと『想像』されていた、伝説のアイテムの残骸だった。
「元々は大昔の遺物。当然の話、壊れているモノがほとんどじゃ。一欠片ほどしかないモノも珍しくはない。
じゃが、手直しするなり通常の武具に欠片を仕込むなりすれば、伝説の何分の一かの能力は発揮する」
その力は絶大だった。
絶滅寸前に追いやられた人々は、魔力によって異能を得た武器群を『魔導兵装』と名付け、魔物の脅威に抗った。
それによって人類は、かつての権威を取り戻していったのだが……しかし、
「……黒魔導士の連中め。人類の希望の力を、我欲のために振るいおって」
苦々しげに村長は呟く。
人類が絶滅の危機を脱したことで――贅沢を求める程度の余裕が生まれたことで、凶行に走る者が現れてしまった。
その最たる例が黒魔導士だ。彼らの起こす事件は、徐々に凶悪性を増していた。
「特にタイタス村を襲った者は、大量のゴブリンまでも使役していたという話じゃ。襲われたらひとたまりもない。
ここはやはりっ、『魔導騎士』を呼びに行くべきじゃ! 正統なる魔導兵装の使い手、国家の守護者……彼らなら……!」
「ちょっ、ここはド田舎っすよ!? 騎士サマが常駐しているようなデカい街まで一週間はかかる! それに道中で魔物に出くわしたらどうすんだよっ!?」
一人の村人の反論に、他の者たちも「そうだ!」と叫んだ。
「つか村長! 無事に依頼できたとしても、騎士が来るまでに村が襲われない保証はあんのかよ!?」
「動ける人間は限られてんすよ!? 無謀な上にそんなチンタラとした策に人を割けるかよ!」
「ここはみんなで黒魔導士ヤローを撃退する手を考えましょうやっ! 力を合わせれば、きっと……!」
自分たちの手で解決しようと奮起する村人たち。特に若手の者たちはやる気だった。
だが、村長はあくまでも意見を変えない。「兵装使いを舐めるな!」と声を荒らげる。
「ワシはかつて見たことがある。『鈍壊』の二つ名を持つ騎士が、魔物の巣を小山ごと砕いてみせた様を……!
あんな力を振り回す犯罪者に、素人が敵うわけがない! しかも魔物まで従えてるんじゃぞ!?」
「だったら寝込みでも襲えばいいだろ!?」
「って無茶な!? 居場所もわからんのにかッ!」
「ンなもん今から探してやらぁ!」
集会場に怒号が響く。
誰もが未曽有の窮地に混乱しながら、吐き出すように喚き合った。
「けっ、村長は臆病なんだよ! あのクロウって坊主は、大量のガキどもを連れて逃げてこれたって話だろ? いざとなれば俺たちも逃げるくらいはできるだろ!」
「ッ、馬鹿を言え! あれは、あの子だから出来た話じゃッ!」
ひときわ大きく怒鳴る村長。その剣幕に、意見した男は押し黙る。
「……誰もが聞いたことはあるはずじゃ。タイタス村の神童・クロウくんの噂を」
――その少年は隣村でも有名だった。
冷静かつ聡明で、子供らしい我儘も一切言わない子だったという。
幼き頃から懸命に働いていた彼のことを、疎ましく思う者はいなかった。
「彼に助けられた子たちは言っておったよ。『オトナの男って感じで、アイツのことはみんな一目置いていた。女子たちなんかは全員惚れてて、逆に緊張で話せなかったくらいだ』とな……」
口調に熱を込めながら、村長は続ける。
「彼らは泣いておった。クロウくんへの感謝と共に、己がふがいなさに涙していた。
『自分たちは他人の心配なんて一切せずに逃げてきた。それなのにクロウは、小さな子たちを助け出して見せた!』と。
『自分たちが遊んでる間に、アイツは必死で身体を鍛えていた! みんなのために逃げ道まで考えていた! それなのに自分たちはッ!』とっ!」
「っ……」
村長の話に男たちは黙り込む。
村の外に――魔物たちが潜む地に一人で出向き、みんなのために逃げ道を選定していたクロウの勇気。
襲われる危険を我が身一つに受け止めた献身ぶりに、大人たちはいたたまれなくなる。
――あのクロウという少年に比べて、自分たちは土壇場になってから騒ぎ、身内同士で声を荒らげ合っている始末。
ああ、なんて情けないのかと。
「そんな子でも、子供だけを逃がすのが精一杯じゃった……。
黒魔導士が他の村人を狙っとる間に、その配下たるゴブリンどもから逃れるだけでも必死だったのだぞ?
そんな命懸けの逃走劇を、『自分たちにも出来る』と言い切れるかっ!? 逆に襲ってやろうなどと言えるか!?」
「……」
口を開く者はいなかった。誰もが気まずげに押し黙る。
かの少年が多くの者を助け出して逃げ延びた偉業。
それは優しさと賢さを併せ持った彼が、入念な準備を行っていたからこそ出来たことなのだと理解した。
「はぁ、あの坊主に比べて……」
「ああ、オレらときたら……」
自分たちはいがみ合い、虚勢を張って無茶な策をやらかす気でいた。
これでは大人として立つ瀬がない。あの少年を見習うようにしようと、心から反省するのだった。
――なお、全ては勘違いである!
子供たちを助けたのは偶然で、クロウは徹頭徹尾自分のために動いていた!
大人びて見えるのも、単純にコミュ障であまり喋らなかったのと、ぶっちゃけツラと雰囲気がいい感じなだけだった――!
内面は怠惰でわりとクズな男である。
そうとも知らず、隣村の者たちは彼をきっかけに和解する。
「わ、わりぃ村長。つい熱くなっちまって、臆病だとか失礼なことを……」
「いやよい。ワシも少々頑固すぎた……」
殺伐としていた空気が変わる。
誰もが姿勢を改め、建設的な議論を行おうと向き合った。
「いっそ、クロウって子にも意見を伺ってみません? 自分らが見かけたときは、かなり沈んでたみたいっすけど……」
「うむ、優しい子じゃからな。村人全員を救えなかったことに傷付いているんじゃろう。だが彼なら、きっといい意見も……」
こうして、改めて話し合い始めた――その刹那。
「ゴっ、ゴブリンの群れだぁぁぁああー----っ!?」
集会所の外より、村人の悲鳴が響き渡った――!
「なにっ!?」
「まさかっ!」
即座に立ち上がる男たち。
集会所を飛び出すと、付近の丘より緑の人型・ゴブリンの群れが駆け降りてくるのが分かった。
元は猿から変異した魔物だ。子供程度の背丈しかないものの、その凶暴性は計り知れない。
「くっ……恐れていた事態が起きてしまったか……!」
もっと早くに行動していれば……。
苦い後悔が心中に過ぎるも、今は立ちすくんでいる場合ではない。村長は声を張り上げた。
「とにかく皆を避難させるぞ! 子供だけでもどうにか助けろっ!」
かの少年、クロウがやってみせたように。若き命を明日に紡がんと大人たちは決意する。
かくして、彼らが駆け出さんとした、その時。
「――おぉぉぉっと! 足止め役の参上だぜぇええッ!?」
「ぐげぎっ!?」
剛剣烈断――! 頭上より降り注いできた声と共に、一人の身体が真っ二つになった……!
おびただしい量の鮮血が、ほかの者たちに降りかかる。
「なっ……ひぃいい!?」
一瞬の困惑の後、事態を把握して混乱する村長ら。
全身に血を浴びてパニック状態になる。つい先ほどまで話し合っていた隣人の死に、誰もが恐怖で震え上がった。
「ぎゃははははっ! いい歳こいたオッサンどもがガキみてぇに震えてやがるっ! 情けねぇーなーおいっ!」
浴びせかけられる下卑た嘲笑。村長らの目の前には、骸骨のごとき風貌をした男が立っていた。
頬は瘦せこけ眼窩はくぼみ、身体も枯れ枝のように細い。
――だというのに、その手には身の丈以上もある大剣が。
「お前は……その手の大剣はっ、まさか……!」
その刀身を見て瞠目する。
大剣より溢れ出す深紅の微光。そのような武装が、通常のモノであるはずがなく……!
「それは、魔導兵装……っ!?」
「おうよッ! オレ様の相棒、『紅血染刃ダインスレイブ』よォ!」
言葉と共に、異常事態が巻き起こる。
先ほど斬られた村人の残骸から、鮮血が舞い上がったのだ。
それらは自ら飛び込むように、ダインスレイブの刀身へと吸い込まれていった。
そして、
「アァァァアァァア! 来たぜ来たぜ来たぜッキモチィぃいいいいいいいいいいいッッッ!」
嬌声を張り上げる骸骨男。
ドクドクと、まるで心臓のような音が大剣から溢れる。
それと同時に持ち主の筋肉が膨れ上がっていき、顔以外は大男という異形の姿に変貌していく。
「なにっ……!?」
「グヒヒヒッ、これが相棒の能力よ! ダインスレイブの逸話は『吸血』と『騒乱の激化』。斬った者の血を吸い取り、一時的にオレ様を強化してくれるのさァッ! ゲヒャヒャヒャッ!」
背を逸らしながら男は笑う。
爛々と輝く彼の瞳。人を獲物としか見ない残酷な意思が、眼光となって村長らを射抜く。
「つーわけでッ……テメェらも養分になっとけやァァアアーーーッ!」
「くっ!?」
血染めの刃が振り上げられる。
こうして、善良なる者たちの命が散らされんとした――その時。
「させるかッ!」
刹那、骸骨男はハッとした表情で横合いに飛んだ。
さらには大剣を盾のように構えた瞬間、その中心に強烈な突きが放たれる。
大男と化した彼の身体が、十メートル以上も吹き飛ばされていく。
「ぐぅぅぅううッ!? て、てめぇはっ……!?」
「なっ……おぬしは、クロウくん!?」
目を見開く骸骨男と村長たち。
両者の視線の先には、漆黒の刃を構えた少年・クロウが立っていた。
彼は冷たい美貌で村長らを一瞥すると、骸骨男に向かって怒気を放つ。
「――悪しき者よ。我が故郷を奪った罪、裁かせてもらうぞ!」
響き渡る断罪の宣告。
その堂々たる彼の姿に、村の者たちは確信する。
彼こそ。この窮地を救うべく現れた英雄なのだと――!
※(そんなわけ)ないです。
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
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