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28/64

28:この人は私がいないと駄目なの、クロウくん!!!

俺はディアベル、気持ち的に初投稿やってます。




「クロウ様。ブラックモア団長より、アナタ様の面倒を見るよう仰せつかっております。どうか何なりとおっしゃってください」


 晴れやかな笑みを浮かべるフィアナさん。娘さんの成長に気付けたことがとても嬉しいようだ。

 そんな彼女に、ひとまず俺は任務書の束を差し出した。


「ではこちらの確認を。達成報告はフィアナ支部長に上げよと、団長から」


「そうでしたね、拝領いたします……って、なんですかこれは!?」


 書類を見たフィアナさんがギョッとする。隣のティアナパイセンが「ママが大声上げた!?」と驚いた。


「ク……クロウ様は確か、三日前に任務を受けたばかりですよね? それなのに全部こなされている上……!」


 震える手から何枚かの書類が落ちる。

 その文面には『狡猾な人型の魔物を百体討伐せよ 324/100』『俊足を持つ四足獣型の魔物を百体討伐せよ 215/100』『自然に擬態する植物型の魔物を百体討伐せよ 156/100』『繁殖力に優れた虫型の魔物を二百体討伐せよ 413/200』と、依頼された討伐数を大幅に越えた成果がズラリと並んでいた。

 それを見たパイセンが「うぎゃッ!?」と叫ぶ。


「えええ……なによこれ……。もしかして、このあたりにあんまり魔物がいなかったのって……」


「クロウ様、アナタのおかげだったのですねぇ……」


 呆然とするティアナさんとフィアナさん。そんな彼女たちに対し、俺はそこまで誇れる気にはなれなかった。


(別に好きでやったってわけじゃなく、ムラマサが暴走した結果だからなぁ……)


 この三日間はもう思い出したくもない。

 呪いの装備たちが好みの部位をワーワー叫んで、俺を戦いに駆り立てた。

 何かを食べたりはしないアーラシュくんも、使い手が死ぬところが見たいようで“タタカエタタカエ”うるさかった。

 使った後に自殺させようとしてくる特級クソ野郎だが、戦場で果てる姿も好みらしい。アイツマジでなんなの?

 おかげで最近寝不足でイライラするし、ただでさえ不愛想な顔がもっと怖くなってる気がするんですけど。


(はぁ、呪いの装備全員を満足させなきゃ眠れもしないとかふざけんなよ……)


 もうワンオペ育児はこりごりである。こんな状況を作ったムラマサに、改めて怒りがわいてきた。

 ともかくそうした事情で奮闘したわけだが、それを二人に伝えるわけにはいかない。俺はキリリッとした顔をして『断罪者』ムーブすることにした。


「――依頼された数など、所詮は些事。目に付く『悪』は全て滅ぼす。それが、俺の騎士道ゆえ」


「「ッッッ!」」


 瞳を見開くアナ親子さん。これで俺への印象は悪いものではなくなっただろう。

 高いモチベーションを持ち、会社の命令以上に働くシャカリキ新人クロウくんとして覚えめでたくなったはずだ。

 俺は最後に、ここまで担いできたクソデカ袋をフィアナ支部長の前に置いた。


「こちら、依頼された魔物の採取部位になります。どうか確認を」


「わ……わかりました。ではクロウ様、ここの支部には宿泊室もありますので、そちらでお休みを……」


「有り難う御座います」


 キビキビと頭を下げ、では失礼をと支部長室を立ち去っていく。

 ――さぁて久々にベッドで寝られるぞぉおおー--っ! 楽しみだねー、うふふっ!



 ◆ ◇ ◆



「――依頼された数など、所詮は些事。目に付く『悪』は全て滅ぼす。それが、俺の騎士道ゆえ」


「「ッッッ!」」


 その瞬間、フィアナとティアナに戦慄が走った。

 この青年は、なんて苛烈な怒りの気を放つのだと。


 ――それから少しばかりのやり取りを経て、部屋を立ち去っていくクロウ。

 彼の気配が完全に消えるや、下級騎士ティアナが泣き出すように喚いた。


「なっ、何なのアイツ!? アイツやっぱり、コネ入団の六級騎士なんかじゃない!」


 酷く狼狽するティアナ。母には言えないが、イタズラをしようとした時から彼の恐ろしさには気圧されていた。


「ねぇママ、アイツって一体……」


 困惑する彼女に、フィアナは答えることを決める。

 副団長・アイリスより伝えられた、『断罪者クロウ』の経歴を。


「彼があそこまで悪を憎むのも仕方ありません。――なにせ彼は、故郷を魔物と黒魔導士に滅ぼされたそうですから」


 フィアナは静かに語り出す。


 元々彼は外地でアイリスが見つけ、こっそりと鍛錬を付けていた隠れ弟子だという。

 アイリスをよく思わない者は多い。それを考えたら、公表しないのは賢明な判断だろう。

 ――そうして着々と実力を付けてきた彼だが、ある日悲劇が起きた。


「ママ……故郷を滅ぼされたって……」


「ええ。クロウ様と、彼が逃がしてあげた子供以外は……すべて皆殺しにされたそうです」


 それが彼を『断罪者』に変えたのだろうとフィアナは思う。

 以降、偶然にも魔導兵装を手にしたというクロウは、故郷を襲った黒魔導士を怒りのままに抹殺。

 それからは師のアイリスと合流し、先日の『四方都市襲撃事件』でも活躍。全身の筋肉が断裂するような鬼神のごとき戦いぶりを見せ、街の防衛に貢献したという。


「それほど苛烈で、正義に燃えた方なのです。よほど侵し難い精神をしているのか、団長に次ぐ『伝承克服者』の資質もあるとのこと」


「なっ、それって呪いの装備さえ使いこなせるっていう!?」


 母の話に、改めてティアナは戦慄した。

 ああ、なんて悲しく……そして熱い騎士なのか。『自分とは違いすぎる』と、彼女は胸が締め付けられる思いだった。


(……アタシには、悲しい過去なんて一切ない。ただ偶然に武家貴族に生まれて、当たり前に騎士を目指して……)


 自身の過去を振り返るティアナ。

 流されるように彼女は修行を始め――すぐに気付くことになった。自分には、ほとんど才能がないことに。


(それでもママを失望させたくなくて、三回も落ちた末にどうにか合格して……最低ランクより一つ上な、五級騎士にも出世できたけど……)


 そこで完全に頭打ちだった。所詮、自分は下級騎士にしかなれないのだと、彼女は自身を哀れんだ。

 元より熱いモチベーションなどもない彼女である。それからは訓練することもなくなり、気に入らない後輩に細々(こまごま)とした嫌がらせをするような女に堕ちてしまった。


(そんなアタシと比べて、あのクロウってやつは……)


 先ほどの討伐数を見ればわかる。

 アレは異常だ。彼がどれだけ強かろうが、休憩も睡眠もろくに取らずに戦い続けなければ、あれほどの戦果は挙げられないだろう。

 まるで自分すら燃え尽くすような『悪への憎悪』に、ティアナは呆然とするしかない。


「どうなってるのよアイツ……コネ入団で、実力もないから六級騎士になったって噂だったのに……」


「それは、どこかの貴族が撒いたデマでしょう。アイリス様のような外地の人間が活躍することを良く思わない者はいますからね」


 不毛な話だと、フィアナは深く溜め息を吐いた。


「そもそもクロウ様の存在は、しばらくは上層部内で秘匿にしておくという話でした。

 『伝承克服者』は強力な存在……それが敵組織に知られたら、集中して狙われてしまうでしょうから」


 だというのに貶めるような形で情報漏洩を行い、彼に無用な注目を集めさせるとはどういうことか。

 クロウの評価を下げたいがゆえに『伝承克服者』であることは漏らしていないようだが、このままではそれも危うい。

 苛烈ながらも平和のために戦うクロウと比べて、あまりにも下衆すぎると彼女は呆れる。


「……きっとクロウ様には、これからも様々な困難が降りかかるでしょう。

 ティアナ。そんな彼のことをアナタに教えたのは、支えになって欲しいからです」


「えっ、支えっ!?」


「そう。……先日までのアナタになら、わたくしは決して彼の情報を伝えなかったでしょう。

 ですが、クロウ様はわたくしに『母ならば娘を信じろ』とおっしゃいました。ならば信じてみせましょう」


 フィアナは柔らかく微笑むと、娘の肩に手を置いた。


「騎士ティアナに命じます。――彼がこの地にいる間で構いません。わたくしも協力しますから、どうか気にかけてあげてください」


「っ……わかりました、支部長……!」


 緊張気味ながらも、少女騎士は強く頷いた。


 正直に言えば断りたい。自分はどうしようもない駄目女のままだと、母に伝えてしまいたい。

 それにクロウのことも怖い。背後に迫って斬られかけた時のように、いつかはクズな自分も殺されてしまうんじゃないかと恐怖するが――しかし。


(アイツのおかげで、ママはもう一度アタシを信じてくれるようになった。……最初は『余計なことを』って思ったけど……でも)


 それでも、嬉しかった。プレッシャーには感じるし、駄目な自分がどう頑張ったところで無駄だとは思うが、それでも母の信頼には応えたい。

 彼女に再び信じてもらえるようになった恩義くらいは、クロウに返してやりたかった。


「アイツ、あの調子だと無理して死んじゃいそうだからね。ここは騎士団の先輩として、不真面目な遊びでも教えてあげるわ」


「ふふっ、それはとても信頼できる言葉ですね。任せましたよ、ティアナ」


 苛烈すぎる青年を想い、母と娘は微笑み合うのだった。

 ――なお。

 

 

 

「あ~~~~~~~~~~やわらかいベッド最高じゃぁあ~~~~~~~~~!」

 

 ゴミのようなとろけ顔で寝台に沈むクロウ。

 その様子からは、親子が心配するような『自分すら燃やし尽くしそうな断罪者』感などまっっったく見られなかった。


「シャワーも浴びたし、今日はもう寝ちゃおっと。じゃあみんなおやすみー!」


 ――魂ィ!――

 “血ィ……!”

 “ハラワタ! 腎臓!”

 “散華! 自害!”


「はいはいおやすみー」


 邪悪なる叫びを慣れたように無視し、クロウは毛布に潜り込む。

 ……こうして彼は、美人親子に『この人は私たちが支えないと……!』と思わせていることも知らず、すやすやと眠りに就くのだった。

 

 

 

 

 



※アナ親子がお小遣いをくれるようになりました



『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 主人公のマイペースさが魅力ですね
[一言] 呪いの装備ども赤ちゃんプレイすぎるW
[一言] でも実際主人公って体操られてるけど 精神は汚染されてないよなぁ
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