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プロローグ

 俺はあれから崖に転げ落ち続け、ようやく地面に叩きつけられた。

「なんで、こんなことになったんだ……。YouTuberになった小中学校の友達のたかしに、イベントに誘われて会うためにこんな山奥にやってきたのに!」

 とさっき転げ落ちた時に口の中に入った土やら砂やらを吐き出して声にもならない声で叫んだが、誰も何も答えてはくれなかった。


 俺は確か、昔小学校で流行ったホラゲー「閉鎖村」20周年を記念のハロウィンイベントに参加していた。


 ゲームの舞台になった心霊スポット|旧日暮村跡地《 きゅうひぐれむらあとち》のど真ん中でゲーム関係者と大人気YouTuberと抽選で選ばれた数人の視聴者と一緒にハロウィンのゲーム実況イベントに参加していたはずだ。


 今頃たかしとみんなで当時の思い出を聞きながらワイワイゲームを楽しむはずだったのに、なんで今さっき山奥から転げ落ちているんだ?


 たかしと一部の関係者が遅刻してから間を持たせるためにみんなが和気あいあいと当時のゲームの思い出を話していたのに。


 誰かがお札を外したか何かで徐々におかしくなって、いつの間にか殴り合いの喧嘩になって武器まで飛び交うようになってついに死人が出てパニックになってみんなこの廃村から逃げようとしていたはずだ。

 最後の力を振り絞り、転げ落ちてボロボロになった身体をゆっくり起こそうとするが、体のあちこちに刺さった破片が生きようともがいている俺を止めようとする。


 このままでは、俺はもう死んでしまう、いや、死ぬのは嫌だ。


 俺は痛みに耐えながら身体を起こし、あたりを見渡してみる。


 血と殺虫剤と土の混ざった嫌な臭いで、鼻をつんと刺激する。


 そして後から燃えカスの臭いがして、何かが飛んできた。

 スマートフォンは落とした弾みでスイッチが入ったのか懐中電灯に照らされている。

 朦朧とする意識の中で照らす光に目を凝らすと、スマートフォンの隣で仰向けの小動物が右半身をバタバタと動かし続けている。頭蓋が割れて中身が顔を出していた。


 あれが直撃していたら、俺があぁなっていたのか……。


 あのツンとする殺虫剤の臭いから、殺虫スプレーで作った即席の爆弾なんだろうな。


 そう思うと、今更ながら全身から冷や汗があふれ出し、小刻みに震えていた。


 山奥でもぬけの殻になっていた彼らのキャンピングカーを見た時点でそのままにげるべきだった……。



 いや、こんなイベントに参加しなければ良かった。


 あの集落の呪いだか祟りだかもうわからない…頭のおかしくなったYouTuberとかゲーム関係者とかが襲い掛かっても返り討ちにして……。

 やっとあんな薄気味悪い暗闇から解放されると思ったのに、あのころの、あんなに小さな、たかしのせいで…。


 突然、小動物の奥にあるスマホが鳴った。助かった…。俺は着信音が途切れる前に這いずってスマホの方に向かっていくが、だんだん痛みが激しくなり、次第に意識がもうろうとしてきた。

 誰が俺に電話をかけたのかは分からないけど、今ここで電話をとらないとたすけを呼べない。もしかしたら、たかしか?それとも。

 ようやく、掴みかかった命綱をつかまないと。

 そして、ようやくスマホを手に取って着信に出て、助けを呼ぼうと思ったが声が出なかった。

「もしもし、……ちぁいさん?うちあいさん!……もしもし?」

 間違い電話だった。

 スマホのスピーカー越しに聞こえるのは知らない男の声だ。

 この際、間違い電話でもいい、ここで助けを呼ばないと。そう思っても、あたりに充満している殺虫剤と火薬の臭いでむせて咳き込んで上手くしゃべれない…。

「もしもし、うちあいさん!あなた誰ですか!おちあいさんじゃないですね!あなたは一体誰なんですか?」

 そして、電話が切れたところで俺は力尽きた。


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