表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

13:源流

「ふぅ……これで終わりかな」


 俺は改修が終了した城壁を見上げる。うん、いい出来だ。

 老朽化してボロボロだったこのデモニア城の城壁。

 一部箇所は穴が空いていて、敵が侵入できてしまうほどだったが、三日を掛けて全て修復させた。


「すごい……本当に三日で終わらせるなんて」

「普通なら半年もかかると思ってたのに」

「さすが影の英雄様ですね!」

「いや、それほどでもないって……魔導師なら普通だってば」


 近くを通りかかった騎士たちがそう言ってくれた。

 まぁ普通にやれば半年は掛かっていただろう。

 俺は魔導師だから魔法を使っただけなんだけどな。

 修理用の建材は霊脈に接続して探し出して掘り出してきたり。足りない分は俺の魔力で補ったり。

 魔力量が多くて助かった……そうじゃなかったら途中でぶっ倒れていたかもしれない。


「いやぁ、本当に助かりましたよ! ゴブリンの襲撃があった時とかは空いていた穴から入られないように防衛する必要がありましたから!」


 なにはともあれ、喜んでくれたようでよかった。

 俺としてもこれから生活することになる場所の安全を確保したかったのもあるからな。


「それにしても……このへんにもゴブリンが来るんだな」

「ええ、我々がここに来てから結構ありますよ。レイナルド様が追い払ってからは彼らも来なかったのですが……王都に行かれてから少し活発化していましたね」


 首切り騎士の名はゴブリンにも届いているらしい。

 閣下がいないのを良いことにゴブリンたちはここにも襲撃に来ていたようだ。

 昨日もこの城の近くまで来ていたようだが……閣下の姿を見るなり逃げていったそうだ。恐るべし首切り騎士。


 城壁は修理したし、閣下も戻ってきたからしばらくは襲撃されることもないだろうが……あまり放っておくわけにはいかないだろうな。

 それに……ゴブリンがいるあたりはアレがあるかもしれない。


 それを確かめるためにも俺は広場の中央あたりに行く。

 むき出しの地面を触ると手袋越しに土の感触を感じる。


「《接続開始(アクセス)》」


 霊脈に接続すると、すぐに整備されていない魔力の流れを感じる。

 その流れに流されてしまわないように、俺は精神を集中させて流れを辿っていく。

 流れを渡っていき、流れの中心、この地域の源流を探り当てる。


 よし、見つけた。場所はここから北西あたりか。

 目的を果たしたから俺はゆっくりと意識を体に戻していく。


「って……うわあああああ!!」


 目を開けたら目の前にレイナティア閣下がいた。それも顔が間近にあってびっくりした。

 思わず後ろに下がってしまって、尻もちを着いてしまった。


「すまない、驚かすつもりはなかったんだ。君が三時間も動かないまま、地面に座っていると聞いて……」

「もうそんなに経っていたのか。それは心配をかけたな」


 周囲を見ればすでに日が暮れていた。

 集中して潜りすぎると、時間感覚が結構なくなるんだよな。

 今回は整備されていない霊脈だったのあって、普段より潜りづらくって余計に時間がかかったのもあるか。


「何をしていたんだい?」

「霊脈の源流を探ししていたんだ。このあたりの霊脈を整備するには源流から正さないといけないからな」


 この地域で作物が育ちづらいのは霊脈の流れが原因だ。

 その霊脈の整備を早めにするためにも、源流は探し当てなければならなかったんだ。


「源流の場所は北西あたり、たぶんあの山脈の麓あたりだろうか?」


 そういって山の方を指すと閣下は渋い表情を作った。


「あの辺りか……あそこにはゴブリンたちの巣があるとされているな」

「やっぱりか。そうなると迷宮があるかもしれないな。霊脈の源流にはよく迷宮があることも多いから」


 ゴブリンというのは魔物だ。魔物たちの多くは魔力の多い場所を好む。

 霊脈の源流付近は魔力に満ちているから、魔物が多く住んでいることもある。

 そしてその源流から溢れた魔力によって、迷宮を作り出してしまうこともよくあるのだ。


 迷宮は色々なパターンがある。

 ただの洞窟に魔物が住んでいる時もあれば、溢れ出た霊脈の魔力が周囲一体の構造を変えていることもあるし、それらを利用して作られた旧帝国の研究施設だったりすることもある。


 なんにせよ、源流までたどり着くのは大変そうだ。


「そろそろゴブリンの討伐に行こうと思っていたところだ。霊脈の整備にも必要なら、明日にも調査隊を組んでいくとしよう」

「なら、俺も一緒に行っていいか? 何か手伝えるかも知れない」

「もちろんだよ、ロシュ」


 俺の申し出にレイナティア閣下は嬉しそうに笑って答えてくれた。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ