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11:武器の修理をしよう

 さて、赴任一日目。

 俺が最初にすることはやっぱりあれだろうか。


「武器や防具を見せて欲しいだって?」

「あぁ、騎士たちの武器や防具を見たが、消耗が激しい様子だったからな。だから修理でもしようかと思って」


 閣下に俺はそう説明する。

 先のゴブリン戦や広場に集まった騎士たちを見ていたが、彼らが身に付けている剣や鎧はボロボロだ。

 手入れをまともに出来ていない様子だし、買い換えるという余裕もなさそうだ。


 昨日ここへ着いた時、多数の負傷者が出ていた。

 あれも警戒にあたっていた隊がゴブリンに襲われたからだそうだ。

 彼らは優秀な騎士のようだが、装備はとてもじゃないが十全ではない。

 そのせいで遅れをとってしまったのだという。

 装備さえまともであったなら、昨日だって負傷者は出なかったはずだ。


「ロシュさまは鍛冶師でもあったのですか?」

「いいや、俺は土属性使いだから、魔法で修理できるだけだよ」


 リタの質問に、俺は否定するように首を振る。

 武具に使われているのは当然、鉄などの金属製のものが多いだろう。

 土の属性値の高い魔力は鉱物に対してとても融和性がある。

 だから俺は、こうした金属類の加工や修理などを魔法で行うことができる。

 鍛冶師みたいに一から作り出すこともできないこともないが、あまりやったことはないな。


「武具に関してちょうど困っていたところだよ。武器庫はこっちだ、案内しよう」

「閣下が案内してくれるのか?」

「君の仕事ぶりを見てみたくてね」


 おっと……これは緊張するな。


「団長、私も! 私も付いていきたいです!」

「あぁ、リタも一緒に行くとしよう」

「わーい! やったー!」


 リタは嬉しそうにしっぽを揺らして喜んでいる。

 なんか期待をこめた目をしてこっちを見ているんだが……。

 これからすることは地味な作業だぞ?


 レイナティア閣下とリタと共に、城の一角にあった武器庫にやってきた。

 武器庫の中には所狭しと剣や鎧などがあった。

 でも中には錆だらけの、武器と呼べそうにないものまである。


「結構な量があるな……」

「私達が持ち込んできた物もあるが、一部は旧大戦時代の物も残っていてな。だからこれだけあるんだよ」

「なるほどな」


 元々ここは旧大戦時代の頃に建てられた要塞だ。

 だからそういうものが残っていてもおかしくはないか。

 とりあえず直すものは、閣下たちが持ち込んできた武器や防具だけにしよう。


 俺は一本の剣を取る。刃はところどころ欠け落ちている。

 このまま使えそうにない剣だ。


「《調査(スキャン)》」


 手に持った剣の成分を調べるために魔法を使う。

 この程度の魔法であれば、手袋のおかげでスムーズに行うことができる。


 ふむ……鉄と炭素を含む合金、鋼の剣だな。実に一般的なものだ。


「閣下、あっちにある大戦時代の物も使ってしまってもいいか?」

「あぁ、構わない」


 許可も頂いたので、俺はそっちからも剣を取ってくる。

 こっちは錆だらけ、しかも折れているものだ。

 だけど材質は同じものを選んできた。


 俺は両方の剣を並べて地面に置き、近くに自分もしゃがみ込む。

 そして地面に片手をつける。手袋越しにひんやりとした、石畳の床の感触が伝わってくる。


「《術式構築(コントラクション)》」


 俺の手から伸びていくように、石畳の上に魔法陣が彫られていく。

 これは修理用の魔法陣だ。

 ここは魔導士らしく長々と詠唱してもいいんだけど、やっぱり面倒だからな。


 そのまま魔法を発動させれば、錆びている剣を少し分解し、もう片方の足りない部分を補っていく。

 そして仕上げに成形と研ぎも行わせれば、完成だ。


「こんなものかな」


 出来上がった剣は新品同様の輝きを取り戻している。

 出来栄えに満足しつつ、振り向くと閣下とリタが驚いた表情でこちらを見ていた。


「え? えええ? もう終わったの? 早すぎない? しかも詠唱は!?」

「あぁ、終わったよ。魔法陣を使ったから詠唱はしてない」

「何もしてないように見えたのに……」

「なら、剣を見てみるといいよ」

「本当に終わってる……なにこれ……」

「何って魔法だってば」


 信じられない物を見るようにリタは渡した剣を色んな角度から眺めていた。


「すごい……この剣ならなんでも切れそうな気がする!」


 ぶんぶんと振り回してはリタは満足げに頷いている。

 あとは実際に使って感想を聞いてみたいところだな。

 要望があったら個人の調整も受付たいところだ。


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