英雄、来たりて
はい、無双です。
よろしくです。
「馬鹿めが‼我が艦隊によって焼かれよ‼」
そう、龍ヶ崎龍人はイキヨウヨウと言いながら、己の重厚な機体からも無数の銃器と背部の御自慢の巨砲を準備し、勝った気で
「全軍、射撃始め‼」
空に無数の殺意が撒かれた。
「ヤタガラスよりシステムへ、戦闘プランの変更を要請。」
と、綾音へと言うと
「え?でも、前から攻撃来てるのはどうするの?」
と、返事が返ってくる。彼女もこの状況に慌てているようだ。
「そっちは俺がどうにかするから、綾音は部隊の指揮に専念しな。」
「うん、わかった。システムより各機へ、戦闘プランを変更。全機指定のラインまで退避、『ヤタガラス』は単機で迎撃。」
そう彼女が指示を出すと
「ヨークタウンよりシステムへ、プランの変更を要請する。最早プランとして成り立っていない。」
と真辺さんが抗議してくる。
「システムよりヨークタウンへ、大丈夫です。これは蒼穹君からの要請です。しかも、『ヤタガラス』ならこれくらい出来ますよ。」
そう、綾音が真辺さんを宥める。
本当、俺への信頼度が高い高い。こりゃ綾音さんのために一肌でも二肌でも脱がないとねぇ…
「さて、いっちょやりますか。」
あくまで、簡単なことをやるって感じでやる気を出す。
目の前に広がるは無数の弾幕、普通そんな所に一人で放り出されたら心が折れるだろう。だが…
「残念なことに普通じゃないんだわ。」
それが答えだった。
「一時的に『ヤタガラス』のリミッターを解除、左腕部より『幻想の壁』を最大出力で広域展開用意。」
ビービーと警告音が鳴りながら、警告の文字がコックピットを埋め尽くす。
「アラートをカット、機体への付加を計測…現時点で予測を上回る付加を検知…流石にこの範囲はキツいか。流石に無理が利くからってやり過ぎるのはダメか…まぁ、いいや。『幻想の壁』起動。」
そう呟き機体を操作すると、ヤタガラスが左手を振りかぶり、蒼い純粋な魔力の壁を攻撃の嵐の前に展開する。
そして、攻撃が壁と激突する。攻撃は壁と激突すると次々に蒼い粒子へと変化させられ、その粒子はヤタガラスの左腕部の籠手へと吸い込まれていき、吸いきれなかった魔力は結晶となり左半身を呑み込んだ所で侵食を止める。
「…吸いすぎか…右半身は動くけど左ほ動かなぇな。一気に消費するしかないか。ヤタガラスよりシステムへ出雲第3艦隊への新攻撃プランを提示。承認願います。」
そう、言いながらシステムへ攻撃プランを送る。
「システムよりヤタガラスへ。蒼穹くん頭でも打った?」
そう、綾音が聞いてくる。それもそうだろうな…なにせ普通なら狂ってるしか思えない作戦だ。これではいどうぞって言われる方が困る。
「いや、頭は打ってないよ、正気だよ。正気だからこの作戦を提示してる。」
そう俺が言うと
「機体が取り込めなかった魔力を魔力砲を撃つことによって無理矢理消費、ついでに出雲第3艦隊を殲滅すると…蒼穹くんできるの?」
そう、聞かれるが
「もう、やり始めてる。」
と応えると
「蒼穹くん、拒否権って知ってる?…やるなら仕方ないか…」
やれやれと諦めたように言って
「システムより各機へ、作戦を変更、これより、ヤタガラスの最大火力をもって出雲第3艦隊を攻撃、その後ヨークタウン率いる第1特務隊は防衛軍基地を強襲し、魔術機及び旗艦信濃の奪還。第3特務隊を除く残りの部隊はエンタープライズを旗艦とし、防衛軍艦隊と交戦。ヤタガラス及び第3特務隊は遊撃。なにか異論はありますか?」
「第3特務隊はそちらの作戦に従う。」
第3特務隊のおっさんどもは二つ返事で承認
「白鴉よりシステムへ、俺は動かなくて良いのか?」
司先輩はまだやれるとばかりに反論
「システムより白鴉へ、あなたの専用機を取って来てください。」
「わかった。」
結局綾音に諭される
「ヨークタウン及び第1特務隊はそちらの指揮に従う。」
そう真辺さんが言う。
「システムより各員へ、作戦を開始。」
そう綾音が言った瞬間画面にタイマーが出現し、それぞれが作戦通りに動き出す。
第1特務隊は防衛軍基地へと進行、それを阻もうとする防衛軍艦隊が動き始めるも、第3特務隊が第1特務隊を守るように交戦を開始する。
それを尻目に
「術式の改編及び、展開準備完了。…我ながらヤバイもの作り出したかも…まぁ、いいか、疑似バレル展開。」
そう唱えるとヤタガラスの左半身を覆っていた結晶が右腕の大剣へと移動し銃身を形作る。
「照準…は要らないか発射」
引き金を引くと光が溢れ穹に光が走る。
次の瞬間敵艦隊のほぼ全てを消滅させた。
「システムより各機へ出雲第3艦隊は旗艦長門及びビスマルクを除き消失。」
その報告を横にヤタガラスを残存艦へ突っ込ませる。
「敵は単機だ、安心して潰せ‼」
と、3機が迫ってくるが大剣を振るい切り裂く、そのまま剣を投擲することによって2機を串刺しにする。
「武器を捨てたぞ、囲んで潰せ‼」
囲まれるが、腰から2本のレーザーブレイドを引き抜き敵機を切り刻む。その数12機。
「化け物がぁ‼」
敵機が統制もへったくれもなくただただ俺へと突っ込んでくるが、大剣の砲口からプラズマ弾を撃ち撃退、そのまま敵艦へと突っ込む。
「ここからは私が御相手しよう。君はここで私が討とう‼」
そう宣言しながらヒラヒラと装飾のされた機体が突っ込んでくるが
「ヒラヒラと煩い機体だな…」
とだけ呟きながら敵機を真っ二つに切り裂く。
「私はきぞ…」
「何か言ったか?」
爆発の後からは当然なにも聞こえてこない。そんなことは気にせずひたすら突っ込む。
敵を適宜倒しながら手前のビスマルクへと突っ込む。濃密な対空砲火を掻い潜りながら船体へと肉薄し、主砲へ剣を投擲し、甲板へと雑に降り立つ。
や、やめろ、こちらは出雲第3艦隊だぞ。どうなると思っている‼貴様なぞ…」
「別にお前達が何処の勢力だろうとどうでもいいんだよ。」
「おまえ、わかって…」
「じゃあ、消えな。」
脚部装甲からナイフを取りだし艦橋へ叩きつける
「や、やめ…」
その瞬間ナイフが爆発し、艦橋が吹き飛び戦艦が崩壊を始める。
崩壊する船体から剣を引き抜き、長門へと突っ込む。
全力で逃げようと展開した魔術機を巻き込みながら無理矢理進路を変更するが、そこは戦艦。スピードで魔術機ましてヤタガラスに敵うはずもなくあっさりと追い付かれ、艦前部を切り飛ばされる。
「やめろ、お前は人間なのか?こんなことをして心が痛まないのか‼」
そう言われるが
「別に、攻めてきたのはあんた達だろ?それとも何か?お前らは正義の味方か?」
「貴様らのような劣った魔術師を統べるため…」
ブスリ…
艦橋の上から剣を差し込む。
「消えろ。」
続けざまにプラズマ弾を叩き込み撃墜する。
大きな爆発が起こり、周囲一帯を呑み込み、暫くして収まると…
大艦隊が存在していたはずの場所には無傷のヤタガラスのみが佇んでいた。
「これが…ヤタガラス、いや、蒼穹君の力なのか…これがまお…いや、英雄の力か…茜さん、貴女の息子さんは立派に貴女の遺志を継いでいますよ。」
と、この戦闘を見ていた真辺利彦は指揮をしながら呟いた。
というわけでまだまだ無双は続きます。
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