白き鴉
今日は2話投稿です。1/2
「よいしょっと、今日のカレーもいい感じだなぁ。」
と、上機嫌で俺がカレーを作っていたところ、突然サイレンが鳴り響き、食堂の大型ディスプレイに警告の二文字が浮かび上がる。
『警告、出雲第3主力艦隊が接近、第1警戒ラインにて防衛軍と交戦を開始。至急各特務部隊も防衛体制に入られたし。』
と、放送が繰り返される。
「カレーはまた今度か…今回誰が指揮するんだ?」
と、俺が食堂から駆け出し、専用機用の格納庫へ行くと…
そこにはなにもなかった。ただ花怜が頭を抱えているだけだった。
「なぁ、花怜どうした?これ?」
「あぁ、司か…専用機なら今朝方防衛軍に回収されたらしい。整備不良とか言われてたらしい。」
…このタイミングでの回収は不審に感じる。
「他に何があったか?」
と、彼女に聞いてみる。
「あぁ、あったさ。…もしかして司お前無線切ってるな?」
…忘れてた。
「ごめん、忘れてた。」
と、無線を起動させると、様々な怒号が鳴り響く。
「切っていい?」
「私がお前に説明してやるから切っていいぞ。」
やれやれと言いたいかのように肩を竦めながらも無線を切って良いといってくれる。
「専用機の他の被害ならあるぞ。『信濃』を防衛軍の上層部が奪いに来た。」
「じゃあ、なんで花怜がここにいるんだ?俺たちもそっちにいかないといけないんじゃないか?」
「大丈夫だ。白井と第2、第5特務隊が信濃を防衛してくれている。私たちは『ヨークタウン』を旗艦に山城を守るぞ。」
と、言いつつ戦力を見せてくる。
特務隊だけの戦力なら、駆逐艦7、巡洋艦4、空母2…戦艦がないのがかなり痛い。それに魔術機も最新鋭機、専用機は全機回収、残ってるのは40機の型落ちばかり。
「嵌められたな。花怜。どうする?」
「せめて、専用機が1機でもあれば…いや、キャメロットに救援を出すか?いや、絶対に間に合わない…」
せめて、専用機があれば?…あれなら回収されないはずじゃ…
「ある、専用機なら。」
「は?何を言って…司止めろ。あれには乗るな。」
と、花怜が俄に焦った声をあげる。
「白鴉に乗る気なのか?止めろ。止めてくれ。司お願いだ。乗らないでくれ。」
と、しおらしく上目使いですがり付かれて、一瞬決意が揺らぎかけるがそれをぐっと堪えて
「ごめん、花怜。蒼穹達が帰ってくる場所を守らないといけないから。」
「じゃあ、私がお前の替わりに乗る‼」
「それはダメだ‼」
ついキツい言い方になってしまう。
「お前はあれには絶対に乗るな。あれは誰にでも乗れるものじゃない。」
「でも‼」
「花怜、お前は『蒼鴉』に乗ってくれ。」
「あれは完成してないんじゃ?」
「完成はしてるぞ。あれは。それはおじさんが保証してやる。」
と、二人の男が現れる。
「なんで?こんなところに父さんと橋口さんが?」
「いやー、俺達色々あって職場止めてきたんだわ。で?こっちで雇ってくんない?」
「「は?」」
そうとしかでなかった。
「防衛軍はもうどうしようもない所まで来てしまったいる。すまんな、司。私も今日から晴れて無職だ。」
…この人が見捨てる防衛軍ってなんだよ?そこまで腐ってるのか…
「じゃあ、俺らの専用機は?」
「すまない、無理だった。」
「デスヨネ。」
「だが、代わりのものは持ってきたぞ。」
と、父さんからケースを渡された。そのケースは確か…
「これって…父さん?」
「お前用の中和剤と増強剤だ。あるだけ全て持ってきておいた。どうだ?これだけあれば少しは楽になるだろう。」
中を見てみると中和剤、増強剤共に9本ずつ入っていた。
「多分足りない。」
「そうか…」
「でも、大丈夫だよ。これだけあればかなり時間が稼げる。」
「…まさか、司…」
「俺はいなくなったりしないよ。父さん。」
と、俺が言うと父さんはなんとも言えない顔をし
「そうか、私がお前に言うことは1つだ。」
「なんだよ、急に改まって。」
「必ず戻ってこい。」
「あぁ、わかった。」
「じゃあ、行ってこい。」
と、バシンと肩を叩かれる。
「行こうか、花怜。」
「私が前に出て戦うからな。」
「慣れない機体で前に出るなよ。」
「でも、そうしないとお前は‼」
「大丈夫、花怜。俺はまだ消えてやりはしない。限界と思ったらすぐ退くよ。」
まぁ、退けるかはわからないけど…
なんて思いながら花怜を置いていくように更衣室でパイロットスーツに着替え、天翔邸の地下にある第1格納庫の扉を開ける。
「久しぶりだな、『白鴉』。」
そこには所々崩壊した格納庫内部とその中央に鎮座する全身を鎖で縛られた1機の魔術機があった。
「とりあえず、その邪魔な鎖を取ってやるよ。『解けな』。」
と、右手をかざすと、鎖だけが消えて純白の機体が目の前に現れる。
「よし、」
と、そのままコックピットを開きシート裏の医療キットに薬を入れていって、最後にシートに座り、スーツとシート固定する。
「さぁ、まずは起動できるかが問題なんだよな…」
と、手を接続用の機材に突っ込む。
「神経接続開始、ウッ、ふぅ、一応改善されてるってのは本当なんだな…」
神経接続をしたことを合図に機体が起動し、コックピット内には周辺の風景が写し出され、同時にウィンドが開き父さんの顔が写った。
「司、起動はできてしまったか。」
「うん。」
「今はその力に頼るしかない。頼むぞ、司。」
「わかってるよ、父さん。で、父さん達はどうする?」
「私か?決まっているだろう。指揮をとる。」
「ここでか?」
「ヨークタウンでだ。」
他愛のない会話を続けているうちに機体の自動点検が終了し、出撃可能となる。その事は父さんも気づいたようで
「第3秘匿射出門を開門、ならびに『白鴉』を出撃位置へ。」
その号令と共にゴウンと床が開き、機体が降りていく。
「移動完了。『白鴉』出撃。」
この号令と共に真っ暗だった場所に光が灯り、次の瞬間文字通り射出される。
蒼い穹へと
そして、
紅い戦場へと
「ねぇ?君は空が綺麗だって思ったことある?」
と、とある騎士に言われたことをふと思い出した。
正直その時俺がどう答えたかは覚えていない。
でも、今なら多分こう答えるんだろうと思う。
「あぁ、綺麗だと思うよ。」
「だから、この穹を守らないとな。」
その時禁断の力を秘めし鴉が舞い降りた。
しばし、キツイ展開が続きます。
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