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Place  作者: ゆきだるま
屋上
4/6

屋上4


左手から、腕が、身体が、離れていく。小さくなっていく彼が、スローモーションのように見えた。


彼は、少年が視認できる最後まで笑顔だった。


遥か下には、赤い血溜まり。

親友の姿など、もうわからない。


自身の右手には、彼の左手。

その先にあるはずのすました顔も、細い体も、足も、何一つない。


ただ、赤だけが見える視界。

突如、吐き気に襲われフェンスから転げる様に下りる。


四つん這いになって、嘔吐いている間に無意識に離してしまった左手が、ころりと目に映った。


涙が頬を伝っていた。


どうしてっ!何で!!ふざけるな!!!

わかんねえ、わかんねえよ!!!


悲しくて、悔しくて、情けなくて、不甲斐なくて.........


様々な感情が渦巻き、次いで激しい喪失感と自己嫌悪に、また吐いた。


もう吐くものなど何もなくて、それでも吐き気は止まらなくて、吐いて、吐いて、吐いて、吐きまくった。


そのうちに疲れてしまい、仰向けに寝転がる。

目に入ってくる青空に、再び吐きそうになるが、ぐっと堪える。


もう、あいつはここにはいない。

もう、どこにもいないんだ.....

そういえば、あいつと初めて会った場所.....屋上だったな。

その日もこんな真っ青な青空だったっけ。


徐に立ち上がり、彼の左手を手を繋ぐように右手で握りしめると、手を離さないようにフェンスを登る。

器用にフェンスの上に立ち、もう一度空を見つめ、昔を思い出すように目を閉じる。


そして、


彼がそうしたように、

なんの躊躇いもなく、

これからどこかへ向かうような軽さで、

足を踏み出した。


いつの間にか、一人称になってしまった...

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