屋上3
少し、グロい表現があります。
グロい感じが出ているいいんだけど
彼の左手首から次々と血が溢れ出し、腕を、肩を、真っ赤に染めていく。
「――ぃてぇ.....っ」
「当たり前だ!!んなこと今すぐ止めろ!死にてえのかよっ!!!」
「.....そう、言ってる」
「っ!」
叫び声が上がるのを押し込め、喋ることすらも辛い様な状況で、それでも赤髪の少年に答える彼の左手首は、重力によって徐々に徐々に傷口を広げていく。
少年は、彼の言葉と行動に、嫌という程の現実を突きつけられ、言葉を失う。
それでも、想いは声になって溢れ出す。
「.....む。頼む、から。もう.....やめてくれ」
目の前の光景をこれ以上直視することを避けるように、祈るように、赤髪の少年は目を瞑る。
青髪の彼は、それでも言葉を返すことはなく(返せなかったのか)、腕に力を込め続ける。
時々耳に響く呻き声。
赤髪の少年は、それを振り払う様に何度も、何度もただ小さく頭を振る。
どのくらいたっただろうか。
時間にして数分も経ってはいないだろうが、呻き声に混じり、ぶちぶちっと何かが切れる音がした。
瞬間、少年は考えるよりも早く理解する。
目を開けたその先には、真っ赤に染まった彼と、ぱっくりと口を空けた左手首。
骨だけが、手とその先の彼を繋いでいる。
出血多量、激痛、ショック死していてもおかしくないはずなのに、青髪の彼は、満面の笑みを見せていた。
どうにもならない、そんなことはわかっている。わかっていてそれでも、言わずにはいられない。
「――――!!だめだっ!!逝くな!逝くな!!逝くな!!!」
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
「さんきゅ」
彼は、呟く。
これまでの、全てのことに対しての感謝を込めて。
「でも、ごめん」
彼は、呟く。
最期まで、悲しませたことへの謝罪を込めて。
彼は、薄く見える骨と骨の間に狙いを定めると、最後の力を振り絞り、右手を振り上げ、
「嫌だ!!!やめ――」
突き刺した。
「っっっっっ!!」
瞬間、声にならない声を上げ、彼の体は重力に引っ張られ、落ちて行く。
最期に聞こえたのは、自分の名。
最期に見たのは、親友の泣き顔。
それすらも、嬉しく思ってしまう自分はやはりどこか可笑しいのだと思う。
閉じられた瞳から落ちた一粒の涙は、赤い赤い血と混ざり、届くことのない言葉と共に消えていった。
「 だ」