屋上2
「ありがとな、――――。だけど」
彼の右足が、ゆっくりと後ろにずれていく。
それに気付いた赤髪の少年は、叫ぶ。
「ダメだ!!!――――!!」
「サヨナラだ」
流れるような動作で、彼は地面を蹴った。
ふわりと体の浮く独特の感覚、衝撃に目を閉じる。
しかし、彼を襲ったのはぐんっと身体ごと引っ張られ感覚だった。
左手首から伝わる体温に苦笑し、彼は目を開けて上を見る。
そこには案の定、歯を食いしばった少年の顔。
赤髪の少年は、彼が別れを口にするのとほぼ同時に動き出し、間一髪、彼の左手を掴んだのだった。
「あほがっ!!おまっ、ふざけ.....んな!!」
胸をフェンスに圧迫され、途切れ途切れになりながらも、少年は彼に文句を飛ばす。
彼は、そんな少年を静かに見つめる。
上半身は既にフェンスから乗り出ていて、2人分の体重を支えているのは、少年の左手のみ。
苦しいはずだ、落ちるのも時間の問題だろう。
小さく息を吐くと、青髪の彼は口を開く。
「おい、その手を離せ」
「こ、断る――っ!!!?」
瞬間、彼の体が下へとずれる。少年は右手に意識を集中し、絶対に離さないと決意を込めて強く握りしめる。
しかし、汗で滑りやすくなっているうえ、圧迫感から痺れてきていた右手では、大した違いはなかった。
「早く、そっちの手、出せ!おいっ、聞いてんのかっ」
赤髪の少年は、彼が考え直し、自分の手を取り、共に生きることを懇願し、声を絞り出す。
切迫した赤髪の少年の声を聞きながら、彼は目を閉じる。そして、自由な手を、自らのズボンのポケットへ。
取り出したカッターの刃を、カチ、カチ、カチ、とゆっくりと少年に見せつけるように出すと、自らの左手首へ。
一連の行為を目にして、少年は、彼に問う。
これから彼が行うことを拒むように.....
「なに、する気だ.....?」
聞こえているのだろうが、彼は答えなかった。
その代わりに、右手を一気に横へ。
「っあ゛あ゛あああああああ!!」
描写が難しい...