第78話 敗戦
ローレンがマルアから離れて数時間後、ヒヌアン達のいる戦場へと降り立った
ヒヌアンが率いる残りの兵で魔軍側の兵をほとんど壊滅させた。ラーヴァナの配下であるジャターユとアルナは火、光の勇者候補に倒された
一方で、人国側もそれなりの被害を出す結果となっていた。光の勇者候補はカインのみを残して、4人が死亡。火の勇者候補はレイ、ダグラスを残して、3人が死亡。
だが、それでも魔国側3万の兵をほとんど壊滅させたのは好成績といえるだろう
「ハァハァ。…ロー!なぜこっちにきた?あっちの状況は?…おい!左腕はどうした!?」
空から現れたローレンに驚きながら、ヒヌアンが言った
「ハァハァ。ローレンだと?さっきまでラーヴァナの大量の魔力を感じたが、すぐに消えた。まさか、やられたのか?」
パズズは驚きながら言った
「ヒヌアン。すぐに撤退だ。わけは後から話す!」
(どうやら、パズズは状況が飲み込めていないようだな。魔軍は壊滅状態だ。ここで引いても追ってはこないだろ)
すると、カインがローレンの存在に気づき、すぐに駆け寄ってきた
「団長!!左腕が!!あちらで何があったんですか!?」
「いいところに来たなカイン。すぐに撤退命令を出せ!全軍すぐに引くぞ!カインとレイ、ダグラスで指揮を取れ!殿は俺とヒヌアンで務める!質問は後だ。急を要する!早くしろ!」
「…はい!!」
カインはすぐに後方へと走っていった
「まったく。なにがなんだか。とりあえず、パズズ!お前はここで倒すぞ!」
ヒヌアンが大剣を構えて言った
「…残念だが、それはまた今度だな。いくら俺でも勇者2人相手はちときつい。それに、一度情報を整理する必要があるようだ。城に帰らせてもらうとしよう!」
パズズの周りに風が吹き荒れた
「な!待て!!」
「ヒヌ!待て!今は撤退が優先だ。深追いはまた今度だ」
「…。そうだな。それじゃ、後退しながら話してもらうぞ?」
「あぁ。実は…」
ローレンが戦場で起きた出来事をヒヌアンに話した
「…な、なんてことだ。アイルが?それに、ルドラの裏切りだと?…おいおい。こりゃ本格的に世界問題になるぞ」
「あぁ。どっちにしろ抜けた穴と兵の損失が多すぎる。俺たちの意向で決められる問題じゃなくなっている。とりあえず、北と南の大国にはこのことを伝えるためにヴァイスに飛んでいってもらった。俺たちは東の国まで後退だ。そこで光の魔王ルシファーと連絡を取る」
「おいおい。光の魔王まで裏切りなんてやめてくれよな?」
「ルシファーに限ってそれはない。信用できる人物だ。この先どうなるかは国王達次第だが、俺達はとにかく無事帰還できることを優先しよう」
「あぁ。そうだな」
そしてローレンの予想通り、西、北の王国と領土は瞬く間に魔国側に占領された。そして、すぐさま東側に避難した人国は防衛戦の準備を整えることに成功し、南東にかけてラインを引くことで魔軍の進軍を食い止めている形となったのだった
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「…と、ここまでが戦争で起きた出来事だ。あちらの主力は魔神ラーヴァナ、勇神ルドラ、魔王ヴァーユ、ガルダ、風の魔王パズズ、勇者ガルアだ。対してこちらは元勇者ノンデル、オリエンス、アンデル国王、勇者ヒヌアンと俺。勇者候補カイン、レイ、ダグラス、光の魔王ルシファー、光の魔王候補ヴァニ、だけだ。はっきり言って、勝ちの目は薄い」
ローレンが険しい顔で言った
「マルアはどうなったんだ?」
空がルシファーに聞いた
すると、ルシファーは何も言わず首を横に振ったのだった
「そうか…。」
「敵の魔軍は10万以上の兵がいるのに対して、こちらは集められるだけ集めて4万が限界だ。まだ、ラーヴァナ達の力が馴染んでいないせいなのか分からないが、主力達が戦場に出てきていないだけ防衛戦も苦戦はしていない」
空は地図を見て言った
「…なるほどな。兵がこちらの方が圧倒的に少ないから、後ろから奇襲をかけたいというわけか」
「流石だな。話が早いじゃないか」
アンデル国王が言った
「つまりだ。奇襲をかけるためには魔大陸を南から西にぐるっと回る必要がある。たが、その為には1つの難所があるわけだな。…魔国エブリスの領地内を通らなくてはならない」
「あぁ、そうだ。それにラーヴァナの力は今や増大すぎる。他の魔王達がいつラーヴァナ軍に加担するかは時間の問題だ。この作戦は一刻を争う」
「フッ。ルシファーもなかなか人が悪いじゃないか。俺はリルを助けるのに魔国エブリスに行かなくてはならない。つまり、俺を先遣隊として使うつもりってわけか?」
「そうゆうふうに捉えられても仕方ないね」
「まぁ、いい。この作戦を聞いて俺なりに考えはまとまった。はっきり言っておくが、俺はあんた達人国側につくつもりはないぞ?」
「ほぅ…。それはどうゆうことだ?」
アンデル国王が眉間にシワを寄せて言った
「俺はリルを救出するのが最優先事項だ。あんたらの思惑通り俺が先遣隊として攻め込んでやる。だが、その後のことは知らん。俺は俺のやり方でイブリースを倒す。戦争の優先順位は低いと思ってもらってかまわないさ」
「言うじゃないか小僧」
「その小僧に力を借りなくちゃいけないんだ、言い方を考えた方がいいぜ?」
「ヒヌアン様。やっぱりこいつ斬っていいですか?」
紫色の髪をしたレイが剣を握り言った
「やるか?力の差もわからないやつがでしゃばるなよ?」
「2人とも止めろ。たしかに、空の言うことはもっともだ。あくまでも空は先遣隊として敵地に向かってもらう。そこで気を引いてもらえれば俺たちの進軍もスムーズにいくはずだ」
ヒヌアンが冷静に言った
「わかってもらえればいいさ。それで国王達にも聞いておきたい。ラーヴァナを討伐したとしてその後はどうするつもりだ?」
「どうする…か?我としては人族の復興を最優先し、今までと同じ平和を築き上げるつもりだ」
アンデル国王が言った
「俺も同じだ」
ノンデル国王が言った
「そうか。なら、ラーヴァナ討伐後も俺はあんた達につく気はないぞ」
「どうしてだ?」
「あんた達の理想とした平和でここまでの戦争が起きたんだ。同じことを繰り返すだけなら、俺はついていけない。…俺はルシファーにつく。ルシファーの理想としているその思想とこの国の現状を見れば誰が導けるかは一目瞭然だ」
「空!一国の王の前だぞ?たしかにルシファーの思想は誰もがそう望むものだ。だが、その為には人族の復興をしないといけない。理想の現実もないものと同じだよ」
「ローレンまでそっち側かよ。実際今の状況がそうだろ。ルシファーはあんた達を受け入れてこの国に留まっているのを許している。確かにここにあるものだ。ここには奴隷制度も何もない。あんた達は国でそうゆう裏稼業にどれだけ目を瞑ってきた?またそれを繰り返しても同じだ。次のラーヴァナが生まれるだけで、何も変わらない。魔王イブリースは俺が討伐する。残るはラーヴァナとパズズ、闇の魔王だけだ。討ち取って仕舞えば魔大陸はルシファーが統治することになる。これは理想論じゃない。たしかにある現実だ!」
「2人とも!戦争中にあるないと口論している場合じゃないぞ!…空の俺への忠誠心はわかった。たが、とりあえずまずはラーヴァナ討伐が優先だ。俺が求める国作りもそれをなくしてできないからね」
ルシファーはローレンと俺の間に入って言った
「…はいはい。とにかく俺の出発は1週間後だ!それまでにあんた達が準備を整えろ。俺達には時間がないからな」
「…達?」
「あぁ。きたぜ」
キーっとドアが開くと共に、ボロボロの姿で灰色の髪の毛が伸びた女が現れた
「…よう。コウ。久しぶりだな」
「失礼します。…空。強くなりましたよ!」
俺はコウに向かって強く抱きしめ、再会を噛み締めたのだった
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