第45話 コウの実力
ルシフェルと別れた空達はグルーシスダンジョン攻略に向けて歩みを始めた。
ゲートに入ると目の前が数秒暗くなり、すぐに明るくなったのだ。
目を開けて辺りを見渡すとそこは、広大な樹海が広がっていた。
グルーシスダンジョンは1階層ずつに広大な樹海が広がっており、全10階層になっている。
しかし、ベテランのBランク冒険者でもグルーシスダンジョン攻略には2ヶ月はかかると言われている。
理由は単純で、カルディアダンジョンの倍の階層、そして樹海による方向感覚の鈍りからボス部屋までの到達時間が極端に長くなることだ。
空達ももちろんそのことを事前に把握はしており、食料や物資などは空のスキル収納に納めてある。
「ダンジョン前にコウのステータス確認しても大丈夫?」
空がコウに聞いた
「はい。大丈夫ですよ。」
「スキル 鑑定」
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ステータス
コウ・アルフレンダ(23)女 Lv.180/300
ギルドランクA
種族 獣人(狼)
職業 武闘家、双剣
体力 19600/19600
攻撃力 4500
防御力 2950
魔法力 4000/4000
使用可
魔法 風、光
スキル 『獣人Lv.5』
身体強化+40%
『無詠唱』
詠唱無しで魔法使用可能
ユニーク
スキル
『野生』
5感が研ぎ澄まされる
装備 【灰色の装甲】Lv.3/5 ランクC
スキル 攻撃力+15%
耐久力+10%
武器 【双剣】
スキル 攻撃力+10%
身体強化+10%
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「やっぱり、ダンジョンを攻略するとレベル上限は上がるんだね」
「そうですね。初ダンジョン攻略でレベル上限は上がります。2階目以降はレベル上限は上がらないとヴァニから聞きました。」
「空、コウが加わったから前衛を私とコウで担当する?」
「…そうだね。その方が僕もいいと思うけど、戦闘に関してはコウの方が経験値は上だ。コウの意見を聞きたいな。」
「わかりました。…私が前衛、リルと空で中衛をお願いしたいですね。理由は2つあります。私は戦闘経験値が2人よりもあること、私が前衛をすることにより敵に集中してしまうことです。つまり、このパーティーのキーマンはリルです。私が敵対している際はリルが前衛、中衛、または他の敵と戦ってもらうことになります。その場合、的確に指示を出せるのは空です。なので前1人、後ろ2人の方が理にかなっていると思います。」
「たしかに。コウの実力なら魔物1、2体なら簡単に捌けるからね。わかった。それでいこう。」
「危なくなったら無理せず声かけてね!」
「はい!では参りましょう!」
そして、3人は広大に広がる樹海を緊張感を持ちながら進んでいった。
1時間程歩いた3人は1体の魔物とも遭遇せずに進んでいた。
「カルディアダンジョンと違って、そんなに魔物が出てこないわね。」
「そうだね。魔物は出てこないけど樹海の雰囲気のせいで緊張は解けないけどね。」
「…こちらですね。」
コウが鼻をすすって言い、左斜めを指差して誘導した。
「コウは道を知っているの?」
リルが聞くと
「いえ。前来た時のダンジョンよりも樹海の大きさと木の高さが段違いです。道はほとんど分からないですね。それでもより強い魔物の匂いなどは嗅ぎ分けられるのでそれで道を探索しています。匂いが強いということはボス部屋のはずなので。」
コウが言った
(さすが、獣人なだけあるな。これなら樹海でも迷わなくてすむ。)
空がそう思って、目の前の枝を右腕でどかそうと触った瞬間、枝が空の腕に巻きついた。
「!!なに!」
空はすぐに枝を剣で振り払い、巻きついた木に剣を向けた。
するとその周りの木々が動き出し、穴が空いていた箇所から青白い光が浮き、顔のような形に変化した。
「まさか!私の鼻をかいくぐるほどの擬態なんて!?」
コウが驚いて言った。
「!!これはトレント?数が多すぎるわよ!」
木は地面から抜け出し、根が足のようになり地面に立ち上がった。
そして木々が繋がっていた枝達は集まり、腕のようになったのだ。
(スキル 鑑定)
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グルーシストレントLv.110 ランクC
スキル『樹皮』
防御力+40%
耐熱
防水
防風
『鋼葉』
葉が鋼のように硬くなる
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「!!2人とも葉に気をつけろ!どんどん数が増えるぞ。10体以上はいる!」
「空、リル!後退してください!私が前に出る。」
そう言ってコウは空とリルの前に出て、魔物達の前に立ちはだかった。
「リル!コウの援護を頼む!僕は後方でサポートに入るから、2人で捌けない場合は呼んでくれ!」
「おっけー!いくわよ!」
「火魔法 身炎上火」
リルの体と剣に炎が纏った
コウは両手を開き、爪を尖らせた。
「行くぞ!!獣人の力見せてやる!!」
するとトレントはツルを全方向から勢いよくリル達に向かって振り払った。
リルとコウの周りは勢いよく振り払われた無数のツルに埋め尽くされた。
コウは勢いよく地面を蹴り、姿が消えた。
そして勢いよく全方位に風が吹き荒れた。
それと同時に全方位埋め尽くされていたツルは粉々に全て切り裂かれたのだ。
そしてコウが姿を現した時、瞳孔が開き、牙が伸び、喉を鳴らし、腰まで伸びた髪が逆立ったのだ。
「遅い。」
そう言ってコウは地面を蹴りまた、姿を消した。
リルはコウが巻き起こした突風に舞う木の葉から顔を左腕で隠して言った
「!!速すぎる!私たちと戦った時は本気じゃなかったの!?しかも、これは風魔法?」
「いや、違う!これは完全にコウの身体能力で巻き起こされてる風だ。それにこれが本来のコウの実力なんだろう。」
空が言った
空の言った通り、本来のコウの実力は空達との訓練では発揮してはいなかった。
もちろん、訓練は本気でやっている。
しかし、殺す相手と殺さない相手では本気の度合いは違うだろう。
そして、コウの姿が消えるように空達には見えたが、それはコウの速さゆえの見え方だった。
獣人の爪は地面を速く蹴ることができるスパイクとなり、手や足の獣人特有の筋肉のつき方は強靭なバネとなった。
その速さは人が競える領域ではなかった。
さらに、コウの実力が発揮できているのは環境のせいでもある。
グルーシスダンジョンは背の高い木々が生い茂り、頭上に枝やツルが密接に絡み合っている。
その為、樹海の木やツル、枝はコウの足場となりコウのスピードをさらに加速させた。
コウは素早く地面を蹴ると縦横無尽に駆け回り、魔物達を爪で切り裂いていった。
しかし、トレントの樹皮は硬くコウの爪は深い傷をつけることは出来ず、付けた傷も治りかけていた。
それに気づいたコウは地面を削り減速して後退した。
「致命傷にはならないか!やはり、ダンジョンが強化されている!?」
コウが言った
「コウ!一緒に戦うわ!」
リルが剣を構えてコウに言った
「いえ!大丈夫です。見ていてください。ここからが本番ですよ。」
コウは両手を広げ、腕と脚に力を入れた
「風魔法 狼風双牙」
コウの腕、脚に風が纏った。
コウは脚に力を入れ、地面を力強く蹴り、魔物に向かった。
すると地面が削れるほどの強い風が巻き起こり、その風は魔物に向かって縦横無尽に吹き荒れた。
空とリルが瞬きする間にトレントの群れは全て切り裂かれ、地面は抉れ、魔物達が現れた辺りの樹海の木は全て切り倒されていたのだ。
風が巻き起こり、木の葉が舞う中堂々と立っているコウは空達の方を振り向き言った
「さぁ!行きましょう!」
空とリルはコウの実力で辺り一面抉れた樹海を見て、唖然としていた。
「す、すごすぎるわよ…」
「さすが魔王の側近だね。ここまでとは…。」
そして3人はボス部屋に向かい樹海を進み始めた。
1時間程歩くとコウが匂いを嗅ぐように鼻をすすり、進行を一旦停止した。
「どうしたの?」
空が言った
「この先に強い匂いを感じます。この匂いはアルラウネ。それも相当強い個体ですね。その奥からかなり強い匂いを感じるのでボス部屋がありそうですね。迂回して魔物を避けることもできますがどうしますか?」
コウが指を刺しながら言った
空が考えていると
「助けてくれーーー!!」
コウが指をさした方から男の大きな声が聞こえてきた
「!?コウ!魔物の他に人間がいるのか?」
「はい。いるようですね。どうやら襲われていると思われます。」
「助けましょう!ここで見捨てることはできないわ!」
リルが2人に言った
「よし!いこう!」
空達は声のする方へ走り助けに向かった
そして木々を抜けて救済に入ろうとしたところ、おぞましい光景が空達の目に入ってきた
アルラウネのツルが20人近くの冒険者に巻き付き樹海の木に吊るされていた。
そしてその人間達は白骨化している者や痩せこけている者、それについ先程捕まったのか暴れてもがく者がいた。
「なんてことだ…!」
「空!まずいわよ!」
魔物が逃げ回っている3人の冒険者の足にツルを絡ませて捕獲しようとしていた。
「まずい!リル!コウ!」
空が2人に声をかけた
空達3人は各々が冒険者1人を救出しに向かった。
空とリルは剣で、コウは爪で冒険者の脚に絡まったツルを切り払った。
「大丈夫ですか?」
空は魔物に剣を構え、後ろに倒れ込んだ冒険者に言った
「あ、あぁ。助かった。」
冒険者はそう言って不敵な笑みを空達に向けていたのだった。
投稿が遅れて申し訳ありません。
さて、今回のお話はいかがでしたでしょうか。
獣人族の身体能力がいかに優れているか分かりますね。
獣人族の中でも肉食獣の遺伝子を持った獣人族は超戦士と言われるほど戦闘に特化しております。
これからさまざまな獣人族や他の種族がお話に出てきますのでご期待していただけると幸いです。
この作品が少しでも面白いと思っていただけたら
ブクマ、評価、感想などおねがいします。




