第43話 成長
ルシフェルにダンジョン攻略の許可を得る為、アンジュ大陸にてサーペント討伐を目の前にした空達。
サーペントは硬い皮膚で覆われており、物理、魔法が効きにくい魔物である。
さらに、蛇のように素早い動きと口からの毒液は1匹のサーペントに高ランクの冒険者パーティーでもかなり手こずる魔物だ。
そして、空達の前に現れたサーペントは空達とほぼ同じレベルであり、訓練前の空達なら確実に手こずる相手だろう。
「ルシファー様、空達の訓練終了はかなりお早い決断だと思うのですが、何かありましたか?」
コウがルシフェルに聞いた
「あぁ。これから戦争が起きる為かここ最近冒険者がダンジョンに来るのが多くなっている。しかし、ダンジョンゲートの門番からこの2ヶ月でダンジョンに入った冒険者が1人も出てこないと報告を受けた。グルーシスダンジョンはそれなりに難易度があるダンジョンだが、過去こんなことは初めてだ。ダンジョン内で何かが起きている。それにダンジョンはクリア数が少ない方が難易度が上がるからね。」
戦争が起きる場合、その国の騎士団、そして軍隊が戦場の最前線に立つ。
しかし、戦争の相手次第では冒険者は戦争に参加もしくは、国の護衛を国から依頼されることがある。
国からの依頼なので依頼金は高く、さらに言えば戦争の前線の参加は護衛よりも5倍は金額が高くなる。
その為、冒険者はクリアすれば確実にランクが上がるダンジョンを選ぶのだ。
「そうですね。ダンジョンは入ってきた冒険者の死体から魔力を吸い取って成長します。中で冒険者が息絶えるほどそのダンジョンは難易度が上がると言われていますね。」
コウが答えた。
「その通りだ。その為、これ以上の時間は待てなくなった。不本意だが空達にはダンジョンに向かってもらう。だが、この大陸の魔物を倒せないなら元も子もないからね。その為の最後の試練さ。さぁ、始まるよ。コウもしっかりと見ているといい。」
「はい。」
空達の戦いが始まった。
先陣はリルがきった
リルは剣を構えて魔物に向かい全力で突っ込んだ。
リルの赤色の剣は一直線に魔物に到達し、気づけばリルは魔物の背後に立っていた。
その速さはまるで赤の閃光のように赤い線が魔物を通り過ぎたように見えた。
魔物は何が起きたのか分かっていない。
ふとした瞬間に後ろにいる敵に驚いている様子だったが、すぐさま後ろに振り向き攻撃を開始しようとしていた。
だが下半身が動きもせず、自身の視界が崩れ落ちていく。
その瞬間魔物は気づいたのだ、自身の上半身と下半身が真っ二つに斬られていたことに。
リルはこの2ヶ月半で自身よりもレベルの高く、硬い皮膚を持った魔物を一撃で倒せる力を手に入れていた。
これにはルシフェルも驚きの表情が隠せないでいた。
(…まさか、ここまで。…けどまだだよ。)
リルが背後を向き斬り裂いた魔物を見ると、先程真っ二つに斬った上半身と下半身がうねり、結合しようと再生し始めていたのだ。
コウは言った
「爬虫類族は硬い皮膚や独自の吐物で有名ですが、真の真髄はその回復力にあります。」
現代においても、爬虫類の回復能力は人間を圧倒するものである。
例えば、トカゲの尻尾の蘇生や、足の生え替わりなどがあげられる。
一説によると、爬虫類の細胞分裂回数は人間の比ではなく、細胞自体が独自に働き傷の蘇生、また生え替わりなどが起こると言われている。
「なるほどね。一太刀じゃ倒せないってこと。なら、再生できないほど細かく斬撃を入れてあげるわよ。」
リルは剣を構え直した。
「火魔法 身炎上火」
リルの剣と体は炎を纏った
「…無詠唱??!!習得したのか!」
ルシフェルが驚き言った
「はい。この2ヶ月半で1番成長したのはリルさんです。悔しいですが、私と同じかそれ以上に強くなりましたよ。リルさんの本領はここからです。」
コウが少し悔しがりながら言った
リルは魔物に向かって突っ込み、剣先を向けた
【剣技 炎凱火魚】
リルの突き技は火を纏った魚群のように細かい斬撃が魔物に襲いかかり全身を突き、貫通させた。
だが魔物はそれでも再生をしようと徐々に傷が癒えていく。
リルは剣を大きく振りかぶり言った
「まだよ!【剣技 赫虎の火爪】」
リルは剣を瞬きの間に上下左右に振りきった。
まるで猫科の爪のように火を纏った斬撃が全方向から魔物を襲った。
リルの斬撃は魔物を細かく斬り裂き、魔物は肉塊となって地面に落ちていった。
細かく斬られた魔物は再生することはできずリルの勝利となったのだ。
「…ふぅ。やったわね!。」
リルが笑顔で言った
「すごいな。あの剣技は2つとも俺は見たことがない。親の剣術を自分の剣術に進化させたのか。これは俺の予想より遥かに成長したね。」
ルシフェルが驚きながら言った
「だが、問題は空か。」
空の剣術はサーペントを斬り裂けず、毒液を避けながら戦っている状況だった。
「空!」
リルが言い、空に近寄ろうとすると
空は左手をリルの方に向けて言った
「大丈夫!そこで見てて。」
空はニッコリ笑いながら言った
「空さんは魔術を使えばサーペント程度ならすぐに倒せるでしょう。ですが、ルシフェル様に認めてもらえるように剣術でサーペントに勝つつもりです。」
コウがルシフェルに言った
「そうか。その心掛けは気に入ったよ。しっかりと見届けるよ。」
ルシフェルは空は見つめながら言った
空はサーペントに攻防一体を繰り返していた。
だが、いつもの空なら息は上がって少し浮き足立つくらいだが、今は落ち着いておりしっかりと足が地についている。
前までの空なら自身の攻撃が通じないと少し慌てていた。
けれど、この訓練で培った経験と自身の非力さを認めることで、焦りは1つもおきなかったのだ。
「ふぅーーーー。」
空は深く深呼吸をしコンマ何秒か目を閉じた。
そして目を開けた空は本気の目をしていた。
空は右手で剣を少し強く握った
すると黒い塵が集まり、オーラのようにうねり空の剣に纏った。
「…!これは!?」
ルシフェルが空の技を見て言った
「闇魔法 天長主剣」
空は走り剣を構え魔物に向かっていった。
魔物は空に毒液を吐いた
しかし、空は闇魔法で自身を軽くしているので華麗に避けた。
それを見た魔物は毒液から毒霧に変えて放ち、空を毒の霧が覆ったのだ。
「空!」
「空さん!」
リルとコウは叫び、空の助力に向かおうとした。
しかし、ルシフェルが右腕をリル達の前に出して言った
「大丈夫。よく見てなさい。」
空を覆った毒霧を、空の剣を纏っていた黒色のオーラが回転しうねり毒霧を全て消し飛ばした。
魔物と空の距離はまだ1mはあるだろう。
だが、空は剣を魔物の首に向かって振り切っ
た。
すると剣から黒色のオーラが凝固した斬撃が飛ばされた。
「闇魔法 夜空」
剣から放たれた斬撃は夜空に浮かぶ三日月のようにうねり、真っ直ぐに魔物に向かい首をはねたのだ。
そして空はその間に魔物に近づき剣を振り上げ、勢いよく振り下ろした。
魔物は縦に真っ二つにされた。
そして、剣に纏っていた黒色のオーラが縦に細かい斬撃となり魔物を細かく斬り裂いたのだった。
空の剣から黒色のオーラが消え、ルシフェル達の方を振り向き言った
「これで合格?」
空の顔は少し口角が上がっていた。
「…あぁ。合格だ。君達ならダンジョンをクリアできる。よく2ヶ月半でここまで成長したね。すばらしいよ。」
ルシフェルが笑いながら言った
「い、今のはなんなんですか。」
コウが驚きながら言った
「あれは…」
空が言おうとすると
「闇魔法 天長主剣4大禁忌の技を進化させるとはね。いや、進化というよりは自分自身に合うように技を改良したのか。それでも闇の塵を全てコントロールしてオーラに変えるとは、出来てやれるものではない。」
ルシフェルが言った
「さすが魔王だね。一度見ただけでそこまで分かるなんて。この技は元々視認した物を塵に変える技、でもそれだと効力が大きい分魔力消費も激しいから自分なりに変えてみたんだ。より最小限に、そして剣術に乗せることで威力を最大限に引き出せる技にした。」
空が答えた
「なるほど。空の魔力と比例して技の規模や威力をあげれるようにしてあるわけだ。つまり、今の空の実力を最大限に生かしているのが今の形ってことだね。魔剣士としてとても成長を感じたよ。」
ルシフェルは笑いながら言った
「よし。君たち2人にはダンジョン攻略の許可をだそう。とりあえず、城に戻って1日休むといい。」
「やりましたね!空さん!リルさん!」
コウが2人に近寄って言った
「これもコウのおかげよ。本当にありがとう。」
「そうだね。コウのアドバイスと知識が無かったらここまで出来なかったと思う。ありがとう。」
空とリルがコウに言った
そして4人は魔国アンゲルスの城に戻り、ダンジョン前のひとときの休憩をとるのだった。
ご愛読ありがとうございます。
空とリルの成長した姿は圧感ですね。
リルとコウの実力は本当に僅差で剣術ではリルが、武闘ではコウが勝ち越しています。
次回はダンジョン入りの前のお話を執筆したいとおもいます。
この作品が少しでも面白いと思っていただけたら
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