第40話 魔物
魔国アンゲルスについた空達。
魔国アンゲルスは大きな山脈に囲まれた窪みに作られた街だ。
この窪みは昔竜族の寝床にするため竜族が開けた大きな穴だったそうだ。
全方位が高い山脈に囲まれているので3つある門は洞窟の入り口のようになっている。
その入り口を抜けるとまるで現代のギリシャにあるサントリーニ島のように断崖沿いに白を基調とした家が段々と立っていた。
美景の魔国アンゲルスには白の教会や武器屋、道具屋、宿屋などがあった。
地面には不規則に並んだ白の石畳が綺麗に引き詰められている。
街には大浴場が有り、そこからの美景の絶景はたまらないそうだ。
アンゲルスの中央には開けた広場が4つ並んでおり全て大きな通路で繋がっている。
現代のサントリーニ島は奇跡の島と言われているが魔国アンゲルスは綺麗に統一されている白の街並みと魔国とは思えないほど活気のある街から天使のいる街と言われている。
空達はルシフェルに街を案内され多種族が住んでいる街を見て言った
「なんでこの街にはこんなにもいろんな種族が住んでるの?」
「俺の理想は多種族が争いもなく手を取り合い過ごせる国家を作ることだ。だから魔王達にも人と争わないように説得をしている。人は自分よりも力のあるものを恐れて争い、そして魔族は自身の力を打診して争う。なら人と魔族が手を取り合い、人々は知識を魔族は力で協力しあえば争いはなくなるはずだ…。だが、それも簡単じゃないけどな。やはり、心の内を見せられるようになるにはまだまだかかりそうだ。」
ルシフェルは笑っていった。
空はどこか雰囲気がローレンに似ているように思えた。
「そういえば。野良の魔物って何?」
リルが聞いた
「あぁ、それについては…」
ルシフェルが答えようとしたところ1人の少女が近寄ってきた。
「…ルシファー様…。任務…完了…。そ…ちら…は?」
「冒険者の空とリルだ。今城に連れて行くところだ。ちょうどいい【ヴァニ】も一緒に来るといい。」
「わか…った…。」
その少女の名前はヴァニといい
身長は小柄で150cmくらい、黒髪に赤のグラデーションで長めのツインテールをしている。
赤で統一された露出の多い服に、腰には細く長い剣、そして背には小さな黒いコウモリのような羽が生えていた。
4人は光の魔王の城についた
城を基調とした城で大きな柱に何段もの階段があり、城というよりは聖堂に近い作りになっている。
4人は2階に上がり客間に入った。
客間には大きな白のテーブルに、白と黒のソファのようなものが両脇に並んでいた。
ルシフェルが豪勢な1人がけのソファに座り、空達は対面の長いソファに座った。
ヴァニはティーカップに紅茶のようなものを持ってきて3人に配り、ルシフェルの斜め後ろに立っている。
「やっと落ち着いたね。さて。空達がなぜアンジュ大陸に来たのか、その目的を教えてくれないか?」
ルシフェルが話を始めた。
空が答えた
「僕たちは魔国アンゲルスにあるグルーシスダンジョンを攻略しに来た。」
「…やはり。そうか。」
空はアイテムボックスからローレンからの手紙を出してルシフェルに渡した。
「光の勇者ローレンから領主にと手紙を預かってる。」
ルシフェルが手紙を開き読み、少しの間沈黙が続いた。
「…こうなったか。ヴァニ!3本矢の2人を呼んできてくれ。」
「…わか…った…。」
ヴァニはそういうと黒い塵となり消えていった。
そしてルシフェルは空達に言った
「単刀直入に言おう。今は君たちにダンジョンを案内する気はない。はっきり言って君たちのレベルでは攻略は不可能だろう。」
空達は驚いた顔をしていた。
ルシフェルは続けて言った
「君たちのことが嫌いなわけじゃないよ。むしろ好感を持っているから忠告しているんだ。」
すると黒い塵が集まりヴァニが現れた。
「ルシファー様。お呼びしました。」
「入っていいぞ。」
ルシフェルがそう言うとドアから2人入ってきた。
「紹介しよう。コウとマルアだ。この2人とヴァニを含めて俺の側近である3本矢と呼んでいる。」
コウは狼の獣人の女で顔つきは犬っぽく、髪が腰まで後ろに伸びている。
そして腕と脚には灰色の毛が生えていて、鋭い爪をしていた。
マルアはエルフで肌の色が少し黒く、髪は白く長い。
服は薄着でエルフというよりはダークエルフに似ていた。
「ルシフェル様この者たちは?」
マルアが言った。
「こちらは冒険者の空とリルだ。これから話すことは君たち全員に関係することだ。だから2人を呼んだ。聞いてくれ。」
ルシフェルが言った。
ルシフェルはローレンからの手紙の内容を話した
【拝啓、ルシフェル・アンゲルス。
先刻水の魔王と勇者が対峙した。そしてそれを受けて、我々人国は水の魔王との戦争に至ることになった。準備が整い次第、魔国クリシュナに進軍を開始する。……まぁ、ここまでは建前の報告だ。親しい友としてルシファーに頼みがある。俺の中でラーヴァナがなぜノンデル王国に変装までして潜入しにきたのかがわからない。そしてこの進軍を受けて、他の魔王達が黙っているとは到底思えない。そちらでも情報を集めて欲しい。頼む。…あと、空達のことを君に任せたいと思っている。君の判断で空達に助力をしてあげて欲しい。頼んだよ。
ローレン・デルホート】
手紙にはこう書いてあった。
「俺はラーヴァナがどうも何か企んでいる様に思える。あの女は裏で何かをやるのが得意だからな。ヴァニ。君は風の魔王と協力してラーヴァナの周りを探って欲しい。些細なことでも何かあれば報告を頼む。そしてマルア。君は他の魔王達の動きと監視を頼む。」
「…わか…った…。」
「かしこまりました。」
2人が返事をした。
ヴァニは黒い塵となり消え、マルアは風が吹き荒れ消えていった。
「さて、後は空達が聞きたかったことだね。魔物についてかな?…いいかい。魔物とは元々は魔族のことだ。魔族は元は人間のような考え方をもっていた。だけど3000年ほど前から魔族にはある特殊な能力が開花されたんだ。それは、人の負の魔力を吸収して魔族から魔物に進化してしまうことだ。負の魔力とは人々の日常的にでる些細な負の感情から出る魔力で、例えば、今日は疲れた、売れ行きが悪かった、事がうまく運ばない、などだ。その負の魔力を少しずつ魔力として還元された魔族は魔物に変わり、人々を襲っていった。」
「私も昔の話は聞いたことがあるわ。確かその突然変異した魔物達を止めたのが【初代光の勇者アーサー・デルホート】確か、【聖剣エクスカリバー】の使い手のはずよね。」
リルが言った
「そうだ。そして人々の勇者誕生とは逆に魔族にもそれは誕生した。魔族は魔物となり、そして人々を一定数襲った魔物は魔人となった。そしてさらに人々を襲い続けた魔人は魔王となったんだ。それが【初代闇の魔王ベルゼブブ】だ。そして初代の勇者と魔王が倒れても次の代の勇者と魔王が現れ、そしてそれが倒れたらその次の代がそんな戦いが2500年続いた。そしてそこから魔法の5元素に基づいた勇者、魔王が誕生して争いは沈静化されたそうだ。まだまだ溝が深いがね。」
「それで理性を持った魔物と野良の魔物の違いは?」
空が言った
「あぁ、すまない。話が脱線したね。理性を持った魔物は、魔王が魔力を与えた魔物が魔人に進化した者達だよ。だが、それは魔力を与える魔王によっては凶暴化した魔人の誕生にも繋がるけどね。魔力の還元は意思も入るから。それ以外は全て野良の魔物だ。まぁ、魔王になれば野良の魔物達を従える位は簡単だけどね。魔族は基本弱肉強食だから。」
数分考えて空は言った
「なんで僕たちは力不足だと思ったの?」
「橋での人間との戦いを少し見せてもらったけど、空とリル君たちはまだ経験が足りないようだね。それにあの男のタトゥーはブリンガンのメンバーである証拠。見たところランクはCかBのようだったが、その程度に苦戦しているようだとこれから先のダンジョンでは戦えないだろう。」
「でも、あの時は…」
リルが言いかけたのを空が止めた。
「たしかに。ルシフェルの言う通りだ。でも、そんな甘い考えはもお捨てたよ。」
空が決意したような顔で言った。
「フフフ。いい顔になったね。ここじゃなんだからついてきなよ。」
ルシフェルはそう言って空達を城からある場所へと案内した。
ルシフェルとコウと空達は魔国アンゲルスの東洞窟を歩いていた
「ルシフェル、どこに行くの?」
空が聞いた
「東の洞窟の中にダンジョンのゲートがある。その近くに俺が作った演習場があるからそこに来てもらう。」
ルシフェルが答えた
洞窟は一本道で途中道が一つ別れていた、多分そこがダンジョンの道なのだろうが、ルシフェルはそのまま真っ直ぐに進み大きな空洞まで案内した。
その空洞はとても広く、大きかった。
「さぁ、ここが演習場だ。空、リル。俺とここで戦ってもらう。かすり傷1つでもつけられたらダンジョンに行ってもいいよ。」
ルシフェルは翼と腕を広げながら言った
空達は演習とはいえ、初の魔王との戦いに少し胸を高鳴らせた。
魔王と冒険者ランクBでは力の差は歴然だった。
だが、空達は自分たちの力がどこまで魔王に通用するのか確かめるいいチャンスだと少し笑っていた。
こうしてルシフェルによる演習が始まったのだ。
今回はこの世界の魔物について書かせていただきました。
魔族→魔物→魔人→魔王
大まかな進化の序列はこうなりますね。
ちなみに魔物が魔王の魔力無しで魔人になるためには人々を1000人殺す必要があります。
そして魔人から魔王は10000人殺す必要があります。
つまり、魔王1人に対して武装した兵士が1万人いても少し心許ないということですね。
魔王の脅威がわかりますね!
それと、タトゥーの男の正体がわかりましたね。
ブランガンの内情についてはまた後ほど触れたいと思います。
次回はルシフェルが無双します。
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