【32本目】ゴジラ対ヘドラ(1971年・日)
ゴジラ映画2本目です。【ゴジラの逆襲】から放映順にレビューしようかなとも思ったのですが、深く考えずに好きな順でレビューしちゃえばいいやってことで。
(決して【逆襲】がコメントに困る映画だったからというわけではない)
【感想】
特撮の神様・円谷英二が亡くなって、スタッフもいろんな人が異動して、さてどうしよう?ってなっていた時期に東宝特撮が出した、怪作にして傑作です。
ゴジラファンの間では異色作として名が知られ過ぎて、好きと言ったら「対ヘドラが好きな人と違う自分!」って思われたいだけじゃねーの?みたいに思われる不安すら出てくる作品なんですけど、仕方ないじゃないか好きなもんは好きなんだから!ってことで今回紹介することに相成りました。
もうとにかくしょっぱなから絶妙に不安をあおってくるイントロで始まる「かえせ!太陽を」に心奪われます。メインの曲調は当時流行した歌謡曲っぽいのに、終末感のある歌詞やらところどころにある不協和音やら、ビビッドでありながらどこか不快感をもよおすオープニング映像やらで、一気にその世界観に引き込まれると同時に映画自体への期待感もMAXとなります。
その後に続く見るもおぞましいデザインの新怪獣に、白骨化する死体、ヘドロにまみれて死ぬ若者たち、途中途中で挟まれるアニメーションと、演出の暴力がスタープラチナのオラオララッシュのごとく視聴者の脳を殴ってきます。そこにあるのは1960年代までのゴジラとは全く異なる映像体験です。
よく放射熱線で後ろ向きに空を飛ぶゴジラが話題にされる映画ですけど、あのシーンもこの映画で山ほど繰り出される演出の暴力のたった一つにすぎないんですよね。「ゴジラが空を飛ぶシーンがあるらしい」と気になってこの映画を観た方は、見終えたころにはそのシーンのことどうでもよくなっている可能性も高いです。
ヘドラという怪獣自体に焦点をあてると、やはり意識してしまうのは初代ゴジラとの共通点ですよねー。ゴジラが核実験という科学の暴走によってよみがえったように、ヘドラも公害という科学の暴走によって誕生した怪獣なわけですから。そして何よりラストの【最後の一匹じゃない】というオチ。
また前に初代ゴジラのレビューでゴジラは科学文明の時代によみがえった龍神伝承、と書きましたが、海から現れるヘドラも妖怪・海坊主を彷彿とさせる(劇中でも一回言われる)ので、公害の時代によみがえった妖怪伝承、と言えます。
(関係ないですけど、映画が公開された1971年に、日本の漁船が海坊主らしきUMAを見たという目撃談がニュースになっています)
ただヘドラとゴジラとの間にある大きな違いは、ゴジラがよみがえった古代生物であったのに対して、ヘドラは20世紀に造られた全く新しい怪物、という点ですね。だから両怪獣の対決シーンは、映画自体のこれまでにない異色っぷりや、当時の東宝特撮の新体制と重なって、【伝統VS革新】の構図を見ているようでもありました。
あとやっぱり怪獣が襲撃しているにも関わらず緊張感のない人々も無視できませんね。特にヘドラに町を破壊されたからって山へ逃げてキャンプファイヤーで踊りだす若者たち。また若者たちだけじゃなく、おっさん連中もすぐそこで怪獣同士が戦っているのに麻雀にふけってたりします。
初代ゴジラに村や街を破壊されて「畜生……畜生……」と悔しがってた新吉少年が見たらなんていうかw
でもあの人々ってあの時代特有の、今のこの瞬間が楽しければそれでいいやとばかりにドラッグやセックスに情熱を注いでいた人たちのメタファ、と言えるんですよね。
刹那主義な生き方をしたキャラクターたち、という意味では、どことなく海の向こうで流行していた【俺たちに明日はない】や【明日に向かって撃て!】などのアメリカンニューシネマの匂いも感じる映画です。(ちなみにアメリカンニューシネマはベトナム戦争の影響で生まれた潮流。いつの時代でもゴジラは戦争に翻弄されるらしい)
【好きなシーン】
深読みし過ぎかもですけど、陸に上がって煙突の煙吸ってるヘドラがゴジラの咆哮にややっ!?って感じで反応するヘドラには何か色々感情を揺さぶられるものがありましたよ。
ゴジラが体育会系マッチョ、モスラがイケメン美少年だとしたら、ぶっちゃけヘドラって陰キャのオタクみたいな感じじゃないですか。僕含めた陰キャが感情を表情にあまり出さないように、ヘドラも一応生命体にもかかわらず、デザインと言い劇中での挙動と言い、感情みたいなもんが全然見えてこないんですよね。
だからあのゴジラに反応して驚いたようなリアクションをとるヘドラは、設定上なにもおかしいことはしていないはずなのに、違和感がすごかったです。「お前にも感情みたいなのがあるんだ!?」って感じで。
その違和感の根底にあるのは、僕の中にある【生物に見えないものは感情も持たない、という偏見】なのかもしれません。そういう意味では、ヘドラってすごい、人の既成観念をゆさぶる力を持った怪獣なんですよね。
あと山の中で踊っている若者たちを、茂みの奥から無表情でにらみつける老人たちも印象的ですね。彼らににらまれる若者たちはゴジラと同じような脅威を前にして、人類社会のために何も行動しないし、無力な自分たちに何の悔しさもわいていません。そんな若者たちをにらむ老人たちの目には、怒り、哀れみ、呆れ、その他もろもろの感情が現れてたように思います。




