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【16本目】イル・ポスティーノ(1994年・伊)

【感想】


 「イタリアのアカデミー賞」ことダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で6部門にノミネート(うち編集賞受賞)されたほか、米国のアカデミー賞や日本アカデミー賞など海外の様々な映画賞でも評価されたイタリア映画です。


 パブロ・ネルーダを演じるフィリップ・ノワレは、【ニュー・シネマ・パラダイス】で映画技師のアルフレードを演じています。【ニュー・シネマ・パラダイス】は映画がいかに人の人生を豊かにするかを描き切った名作ですが、それに対して


【イル・ポスティーノ】は、そういった文化の正の側面のみならず、負の側面をも描き切った名作と言えます。


 【ジョジョの奇妙な冒険】第5部のブチャラティのお気に入りの映画でもあるこの作品は、彼と同じ漁師の家出身の男性・マリオを主人公としています(ブチャラティもその辺がノスタルジー感じて気に入ったんかな?)ただマリオの場合家はナポリの沖合の孤島にあり本土の社会から隔絶しているうえに、虚弱体質のマリオには島を出られる体力もありません。田舎すぎるために娯楽も映画くらいしかなく、毎日を無気力に過ぎしていたマリオを変えたのが、詩人・パブロとの出会いでした。




 表現についての質問がきっかけでパブロと詩を語り合う仲になったマリオは、隠喩メタファなどの表現について学び始めます。文化によって人生が豊かになっていく場面は【ニュー・シネマ・パラダイス】でも描かれた光景ですが、あの映画で文化に救われたのが未来のある子供だったのに対して、この映画では人生に行き詰っていた青年が救われる、というところに、この映画なりの優しさを感じます。




 そんなマリオが、終盤であのような死に方をするという結末は、文化のポジティブな面とは異なる、ネガティブな側面を映し出していたといえます。彼が共産党大会に出向いたのはパブロに捧げる詩を詠むためであり、彼に出会わなければその日の騒動に巻き込まれることもなかったからです。


 詩を発表しに来ただけのマリオの政治のいざこざに巻き込まれて死ぬという末路は、文化が他人と共有するものである以上、表現をする者は他人、社会、ひいては政治の大きなうねりと無関係ではいられない、という一側面での現実を反映しているように思えてなりません。


 


 


 共産党員のパブロ・ネルーダに影響され、自身も後半で共産党員となった、というこの映画の展開に、忌避感を感じる人もいるかもしれません。しかしながら劇中では、もっぱらフィーチャーされるのはもっぱら詩とその表現であり、共産党としての主義主張が作中で強調されていたわけではありません。マリオが死ぬ直前に共産党大会で発表しようとした詩も、共産党員としての彼ではなく、詩人としての彼に捧げられたものです。むしろマリオは、党員仲間の郵便局長に対して、「この島の選挙で共産党が勝ったとして、それが何になるんだ?」と共産党員としての活動にむなしさを感じてもいます。


 まぁそれでも政治色は完全には拭い去れていないですし、そもそも地味な上に悲しい結末なので人を選ぶ映画かもしれません。ですが、【文化で豊かになる人生】というキーワードに響くものがある人がいたら、この映画をお勧めしたいと思っています。




【好きなシーン】


 マリオがパブロへ送る詩として、島の中のいろんな音を録音するシーンですね。


 ただ寝て起きて寝る、ただそれだけの場所であったはずのマリオの世界が、パブロとの出会いでどれだけ豊かなものに変化していったか、それを物語る名シーンだったと思います。




 スクリーンで見えるマリオの住む島は自然豊かな美しい島ですが、詩人に出会う前のマリオにとって、その島は鬱屈とした日々を過ごす呪いの場所でした。上記のシーンは、偶然のパブロとの出会いによって言葉の可能性に目覚め、言葉での表現によって自他を認識することを覚えたマリオが、何てことない島の日常に意味を見出したことを証明する場面です。


 例え結果的にパブロとの出会いが死につながったとしても、マリオにとって彼との出会いは情景に美しさを感じる感性の目覚めであり、人生に潤いを与えてくれる恩恵だったことが、このシーンでわかります。

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