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【108本目】スペシャルズ!-政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話-(2019年・仏)

基本タイトルにあまり文句言わない俺でもキレそうになる邦題




【感想】


 手塚治虫の【ブラック・ジャック】は、法律の外側に存在する医者を主人公とした物語でした。正規の医者が治せない患者を、無免許医が類まれなる医療技術で治す、というのが基本的なストーリーラインになっています。


 あの漫画を見ればわかるように、あらゆる人間を救おうとすると、どうしても正規の手段では救えない人々が出てきてしまうものです。


 この【スペシャルズ】(原題【Hors Normes】。普通とは違う、とかそういう意味)は、正に【ブラック・ジャック】が手術する患者のように、正規の施設では手に負えないほど症状の重い自閉症の人々の援助に奮闘する人々を主人公とした映画です。




 日本公開のフランス映画で興行成績の記録を更新した【最強のふたり】の監督・エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュの最新作であり、【ブラック・スワン】などハリウッド映画の出演経験も多いヴァンサン・カッセルが主役、という豪華な布陣のこの映画は、トレダノとナカシュが26年前に実際に出会って感銘を受けた自閉症支援団体の職員の話を基にした映画です。


 要するに広義的には26年間の構想の結果製作された映画なわけですが、いざフランス本国で上映されるや否や200万人の観客を動員し、フランス版アカデミー賞のセザール賞でも作品賞含む9部門にノミネートされるという好成績を残しています。




 主人公のブリュノと、その相棒のマリクは騒音を出す、何もない場面で非常ベルを鳴らす、自傷行為を繰り返すために常にヘッドギアをつけている、といった具合の重度の自閉症故に社会からドロップアウトしている人々をサポートする職務に就いています。


 しかし正規の団体でも扱えない自閉症の人々をサポートした結果、施設は無認可で赤字経営、自閉症患者のサポートのために法的グレーゾーンも平気で踏み越えるために、IGAS(社会問題総合監査局)という政府の調査団体に目を付けられる、というのが物語の一つの軸となっています。




 あまりにも癖のありすぎる自閉症の人々を、たとえ政府から目を付けられよう友絶対に見捨てようとしないブリュノとマリクの姿に、「聖人すぎる」という印象を抱く方も少なくないかもしれません。しかし見続けていくと、彼らが宗教マイノリティであることなどが明らかになり、自閉症の人々をサポートすることが彼らの孤独を埋めることにもつながっている、ということがわかってきます。トレダノ&ナカシュ監督は【最強のふたり】でも貧しい黒人と白人富豪の障害者の友情を描いた監督ですが、相互補助によってこそ社会に生きる人々は孤独を埋め合わせることができる、というテーマは【スペシャルズ】でも見られます。




 さてこの映画の特筆すべき点は、やはり自閉症の人々に物語を与えなかった、という点にあるといえるでしょう。


 自閉症を描いた映画は【レインマン】や韓国映画の【それだけが、僕の世界】などがありますけど、この【スペシャルズ】はあれらの映画のように自閉症のキャラクターが健常者と絆を育んだり、ましてわかりやすい成長をするような物語展開は見られません。


 正規の施設でもさじを投げるような重度の自閉症患者をテーマにした話なので当然といえば当然ですけど、そういう意味では、【自閉症の人間でも成長できるし、健常者の人と分かり合える】という倫理観ではなく、【成長できない、社会に適応できないからと言って、自閉症の人々を見捨ててはいけない】という倫理観で物語が動いていることに今風な雰囲気を感じます。




【好きなシーン】


 こう言ったら何だけど何しでかすかわからない人たち(本人らが悪いわけではなく)なので、見ている間は常に参観日とか運動会の時の保護者と同じ目線で見ることになります。そういう意味では、下手なサスペンス映画よりも緊張感の持続する映画であるといえます。


 特に洗濯機大好きジョゼフ(めっさ母性本能をくすぐるビジュアルの俳優さんが演じてる)の出るシーンは常に「頑張れ……頑張れ……あぁ……」という感じで一つも目が離せなかったです。どんな失敗をしてもブリュノたちがフォローしてくれるので、共感性羞恥みたいな感情はあまり持たずに済むわけですが。




 あと中盤後半寄りくらいの、施設の人たちや自閉症の人たちが集まって【何の略語でしょうか?】ゲームをしてるシーンが、緊張感の絶えない映画の中で数少ないリラックスできるシーンで好きです。

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