釣りの話を書けと言われている気がしたので女装少年が釣りに行く話
アキだ。俺は男だが女装している。大好きな蒼大が男なので私は女になりたくて研究している。いずれ生物学界に革命をもたらすつもりで勉強している。理科の成績は五しか取ったことがない。
そんな俺なので虫取りとかペットの世話とか釣りとかが大好きだ。
なので今回は釣りの話をしよう。竿とリールが休刊になってるのを知って震えているのは内緒だ。
春の釣りと言えばそろそろ始まる産卵期を狙った釣りになるだろう。バス釣り業界ではプリスポーンと呼ばれている時期だ。
三月末ごろからなのでまだ少し早いが、この時期にブラックバスの大型が良く釣れる。バイブが効くぞ。
食べられる魚を釣るのが信条ではあるが、ブラックバスの唐揚げとかは美味しいから悪くはないだろう。池の魚特有の泥臭さはあるのだが、ムニエルとかに良くしている。
ブラックバスは生きたまま運ぶと法律に引っ掛かるので絞めてから輸送しよう。まあ食べるなら他の魚の方が美味しいけど。ブルーギルも骨が多いのが難点だが美味しい魚だ。雷魚や鯰も食えるし美味い。この辺りはわざわざ食わないだろうが鯰は高級魚だ。是非食べてみて欲しい。絶滅が危惧されるうなぎの代わりに養殖した鯰を食べるという話もある。アメリカ開拓時代には鯰や鰻が親しまれていたらしい。美味い魚だ。
春と言えばヘラブナ釣りのシーズンでもあるな。釣りは鮒に始まり鮒に終わると言われている。マブナはお馬鹿なのでサナギ粉の練り餌でポンポン釣れてくる。ヘラブナは草食で餌釣りでは釣れにくい。最近では餌の質が良くなって鯉でもヘラブナでもわりと釣りやすくはなっている。
さて、では今日は何を釣るか。うちの近所で釣れるのでカワムツを釣ってみよう。
カワムツはオイカワの近縁種でオイカワと交雑して数を減らしている魚だ。交雑種はオイムツというらしい。
婚姻色といって春頃には綺麗な虹色になる。雄の大型のものは髭もゴツゴツしてて少し怖い。塩焼きで食べる。
大きくても十二センチ程度なので小さいのをたくさん釣って唐揚げにするとポリポリして美味い。
餌は小麦粉を練った団子で十分だが、サナギ粉も安いので入れよう。寒いと食いが渋いのでお昼頃が良く釣れる。
延べ竿で浮き釣り。最も原始的でシンプルな釣りだが、だからこそ大人も子供も楽しめる。魚に触れるなら女の子でも楽しめる釣りだ。
……女の子になりたいとは思ってるが魚にきゃーきゃー言ったりはしないな。
釣れた。カワムツやオイカワは本当に綺麗な魚だ。細かい鱗を取って腸も抜かないと駄目だが。
あ、鮎の腸は抜かなくても食べられる。鮎は友釣りという釣りかたをするが、鮎は遡上してくる時にはほとんど餌を食べないからだ。こけなんかは時折食べるが虫は食べない。なので腸も美味しく食べられるのだ。
友釣り以外では毛鉤に食いつくこともまれにあるらしい。
魚の腸は高級食材として塩漬けにして食べるものもある。なので異世界で魚を釣ったらそのまま火で炙ってその辺りの岩塩でもかけるといい。新鮮なら腸も苦味が美味しい調味料になる。寄生虫はほとんど熱で死ぬ。刺身で食わなければ大丈夫だ。洗えば流れるし。
カワムツは腸は抜いた方がいい。じゃりっとするし。カワムツとかは指で捌けるんだよな。いわしなんかは指で捌いた方がいいって言われる。
キラキラ光る重りに反応して狂喜乱舞するカワムツたち。こういうのを見るのが釣りの醍醐味だよね。綺麗だ。
「アキちゃん、釣り?」
「蒼大! 一緒に釣る?」
「暇だしいいぜ。これ料理するのか?」
「唐揚げと塩焼きの予定」
「おお、美味そう」
当然美味いので蒼大に食べてもらう予定である。カワムツ釣りは一番簡単な釣りの部類だが、場所によってはブルーギルやブラックバスが食ってきたりする。竿が弱いと釣り上げるのが怖い。
ヘラブナ釣りをしてた人がネストを作っていたブラックバスを釣ってしまって大変そうだったのを思い出す。延べ竿でブラックバスは止めよう。餌釣りだと簡単に釣れてしまうブラックバスである。あれはルアーで釣るから面白いの。
そのあと蒼大とめちゃくちゃ釣った。帰って調理して食べてもらったよ。母がニヤニヤして見てきたが幸せだ。
さて、川釣りだけだと非難されそうなのでヒラメを釣りに出かけよう。海釣りと言えば船釣りが良いのだが、漁船に乗せてくれる人を知らないので陸っぱりだ。
ヒラメやカレイは砂場に生息する魚で、陸から釣る場合は遠投する必要がある。キスやコチなんかもこの辺りに生息しているので、ヒラメやカレイを狙っていると釣れてくる。
餌はゴカイやマムシだが、グロいので女の子は検索してはいけないシリーズ。吐くよ。
私も別にゴカイなんて……キモい。だって牙がウニウニしてるし。あ、噛まれた。痛くはないんだけど噛んでくるのコイツ。うえー、気持ち悪いよう。こんなところだけ女子力高くても困るんだけど。
なんとか餌をつけて遠投。重りの重さと竿の長さ、硬さが遠投する時は大事。重りが重すぎて竿を壊した経験あるけど。普通は竿は折れないからね。
今回のタックルはスピニングリールロッドである。タックルというのはゲームでいう装備のことだね。釣りは魚というモンスターと戦う現代のファンタジーなのだ!
ヒラメを狙ってるのにハゼばかり釣れてくる。あると思います。現代では高級魚扱いされて天ぷらを塩で頂くスタイルになっているハゼだが、釣れやすくて釣り人的にはあんまり美味しくない。高いから美味しいわけではないよね。
ヒラメを狙っているのだが釣れなかった。カレイは釣れたのでフライにしようと思う。
カレイのフライは香りが良くて美味しい。香りを邪魔したくないので味付けは塩だけだ。
蒼大をわざわざ呼んで食べてもらう。
「普通にうめえ。ハンバーグやステーキより好きかも」
「だよね。魚は健康に良いし。あんまり釣れなかったけどたくさん食べてね」
「わりぃ。最近かーちゃんも俺がここで飯を食うのが当たり前みたいに飯を作ってくれないんだが」
「腐腐腐、蒼大君のお母様も私のお友達だからよ」
「なんなの母さん。キモい」
どうやら蒼大と私のお母さんは触れてはいけない世界の住人のようである。
海釣りでは釣れなくていい魚が良く釣れる。危険な毒針を持つ魚は多いので気を付けよう。