記憶保持して輪廻転生した俺はやりまくりの学園生活をおくりたい5
前世で高校生の頃、鈴木君という同級生がいた。
彼は現代社会のテストの際民営化という言葉しか覚えていなかったので、全ての回答欄を民営化でうめた。
その結果を教師がいじり、彼の高校時代のあだ名はサッチャーになった。
今思うと解答欄を国営化でうめてレーニンとよばれるよりかは幾分ましっだったんじゃないかと思うが、この思い出の重要な点はそこじゃない。
つまり俺が言いたかったのは教師がつけたあだ名の影響力はすごいということだ。
「おいエロおやじ、ディスコにいかなくていいのか?」
ほらこうやってすでに吉田はそのあだ名で俺を罵倒しはじめている。
女の子になじられるのは好きなのでそれはまぁいいんだが、問題はこのあだ名のせいで俺のキャラがいじられキャラで定着してしまう可能性が高いということだ。
「おいエロおやじ無視してんじゃねぇよ」
吉田がわめいているが俺にとっては心地よいさけびなので無視しておいて、恋をしている際に星占い星占いで一喜一憂するというのは愚者のすることだと俺は思う。
恋というのはいわば総合力の勝負である。
容姿、成績、運動能力、コミュニケーション能力、そして学内における自分のキャラクターその全てをたした数値が相手の琴線に触れるかどうかで雌雄が決するものだ。
そもそも運などというのは情報不足による不確定要素にすぎない。
勝負というのは相手とそして自分の能力を最大限分析、理解し不確定要素をできるだけ排除し、その上で勝てる戦力と作戦をもって挑むものだ。
そうだから占いなどという不確定要素を最大戦力として加えるのは愚作にほかならい。
と少し脱線してしまったがつまるところ俺がくわえて言いたかったのは、あのテスト返しの一件のせいで俺の学内においてのキャラクターに汚点がついてしまう可能性があるということだ。
これでは俺の計画に傷が。
と思っていたが案外そうでもなかったらしい。
というのも体育の授業を終え靴を履き替えようとしていた俺は下駄箱にはさまっているそれに気付いてしまった。
それって何かって?決まってるじゃないかそれはラブレターだ。
ここはアニメの世界じゃないので果たし状などがはさまっているわけないだろ。
差出人の名前が書いてないのが気になる点ではあったが、とりあえずこの際やれれば誰でもいいので俺は指定の場所に指定の時間にいった。
しかしこんな雑草だらけでジメジメしてて乱雑に生え育った木々のせいで日差しも悪くロマンチックさのかけらもない体育館裏を告白場所に選ぶとはテンプレにしばられてろくにロケハンもしなかったどじっ子さんなのだろう。
そしてそのどじっこさんは須藤茜であった。
彼女は地味目で今までそんな目立つこともなく黒く重たい前髪を目にかかるまで伸ばしているせいで暗い印象をもたれるが、実はその前髪のベール奥に隠れる目はたれ目がちだが大きくパッチリしていてとても可愛らしい。
それに顔も小さく輪郭や鼻の形もいい
つまり当たりだ。
「君がこれを俺の下駄箱にはさんだのかな?」
俺はその返答をしりつつも儀礼的にラブレターをかかげ質問をする。
もちろん彼女はその小さな顔で小動物みたいにちいさくうなずく。
「俺に何のようだい?」
とこれまた返答を知りつつ儀礼的に質問するが、それに返答しようとした彼女の大きな黒目が俺の両目をしっかり捕らえていたので俺は少し違和感を覚えた。
そしてそれは正解だった
「あなた前世の記憶をうけついてるでしょ。」
俺は彼女の予想外の答えに声をうしなった。
「その驚きはイエスとうけとっていいわね。」
彼女はふざけた感じのしない落ち着いたトーンで俺に追い討ちをかけた。
「どういうことだ。」
やっと声をだせそうになった俺は先ほどまでとは違い心の底から質問をする。
「私も前世の記憶を保持して輪廻転生したの。」
彼女は淡々と質問に対する答えをのべる。
「いじめられて電車に飛び込んで自殺した前世の記憶をね。」
告白の場所にこの薄暗く人気のない体育館裏を指定した彼女は決してどじっこではなかった。
なんせその告白は恋の告白ではなかったのだから。