ヒロイン?にゲスる嫡男様
「見えてきたんじゃないですか?」
クリアのその言葉につられて顔を上げると、眼前には比較的小規模な町らしき建物の数々が見えてきた。
「やっとか……長かった」
汗を拭って格好つけてみるものの、疲れ果てたせいで生まれたての子鹿のようにプルプルと震える脚が格好つかない。
それに獣道から山道に入ったのが今から三日前だったから、三日間魔獣に遭遇することなく飯も食えていない。
最後の食事があの焦げた肉。
絶食三日目は腹が減らないというがあれは本当らしいな。
町へ開けた道を見つめながら感慨に耽っていると、後ろの方から馬の蹄が地を打つ音が聞こえてきた。
「馬車……ですね」
「あの紋章は……知らねえな……
どっかの地方貴族か何かか?」
焦げ茶色の艶やかな毛並みを靡かせる凛々しい馬二頭が引く馬車は、一言で言うなら豪奢。
大きな木造の車輪が回るたび、車体に散りばめられた宝石がキラキラと光る。
「あれって無茶苦茶ガタガタ揺れるけど、意外と乗り心地いいんだぜ」
「貴方があれに乗る機会に恵まれていたとは……俄には信じられませんね」
「おちょくってんのか……」
上品に口許を手で隠して笑うクリアを罵りながら、馬車の方に目を向ける。
屈強そうな馬の脚力に引かれて走る馬車は、あっという間に俺たちの所にまで来て止まった。
止まった……?えっ?
そして馬車の扉が開く。
そこから出てきたのは、よく肥えた腹を震わせる如何にもといった風の貴族らしき男性。
身形だけは綺麗に整えていて、オーダーメイドらしき絹のような服を身に纏っているが、体型とのミスマッチ感で逆に笑えてくる。
続けて出てきたのは、銀色の甲冑で体を覆った騎士が三名。
これについては特に描写するようなこともない。
三人で異なる所など背丈くらいなものだ。
「おい、私にそれを寄越せ」
貴族らしき男性が指差したのは、俺の隣の空間。
相変わらずの真顔で佇むクリアだった。
「と、言うわけだ。
一緒に来てもらう」
騎士の一人が一歩前に出てクリアの手を引こうとするが、当の本人はその手を払う。
その上あろうことか俺に問いを投げ掛けてきた。
「だそうですが、ついてこい……とはどのような意味を込めて仰っているのでしょうか?」
「は?
い、いやお前が美人だったから自分とまぐわってほしいとかそういうご相談じゃなかろうかでございましょうか?」
いきなりの超展開で思考がまとまらないせいで口調すらまとまっていない。
「ふふっ、私が美人……ですか……
ありがとうございます」
何故か俺に礼を言ったクリアは体の向きを変え、貴族らしき男性に言葉を返す。
「すみません、たった今私はそこの彼に求婚されてしまいましたので……
申し訳ありませんがご期待には添えません」
してねえよ!
つかお前……そんな如何にもまとわりついてくる虫を払うようなこと言ったら……
「おい小娘……!
黙って聞いていればふざけたことを抜かしおって!
私をアーマリア家の嫡男と知っての狼藉か!?」
案の定彼は額に血管を浮き上がらせると、唾を散らして怒鳴る。
ああ、やっちゃったよ……
これどうすんの……また俺指名手配されるの?
三国目となってくるとそろそろ国際指名手配されかねないんだけど……
そんな俺の最早諦めに近しい心情など全く知らないといった様子で、クリアは変わらず無表情を貫いていた。
溜め息を溢すのも、リンゴのように顔を赤くしたなんとか家の嫡男様に聞こえないようにしなければいけないんだから全く持ってやっていられない。
はぁぁ……
ぜんべいがぶくましたって……もしほんとうにそんなことになったらぽいんとがいくつになるのかしらべてみたんですけど
325700000にんだったので……
631400000ぽいんとになりますね。
やったーしょせきかかくていだー()
しらべてけいさんしてこのどりょくにめんじてぶくまとぽいんとひょうかをください