よく考えたら一話に一回クズってたらそれちょっとイカれてるような気がするな
「少し順番がずれましたが、最後に何故私くらいなまでに高位の魔族が態々自ら貴方を探しに来たか。
ですね?」
変わらずの無表情で確認を取られたものだから、少し引きながら頷かざるを得なくなる。
そんな俺の姿を見て彼女は一つ間を置いて言った。
「魔王様のおぱんちゅを嗅いでたのがバレてしまったせいで半分解雇のような状態になってしまったからです。
再雇用して欲しければ転生者を探してこい、とのことでした」
二人の間に無言の時間が流れる。
先に会話を切り出したのは俺のほうだった。
「おぱんちゅ……か」
「はい、可愛らしいくまさんが居ました」
「くまさんおぱんちゅを嗅いだのか……」
「ええ、少し酸っぱい味がしました」
「くまさんおぱんちゅを嗅いだ挙げ句食べたのか……」
「そうですね、見つかったときは両腕を魔法で折られたのですが、必死で死守しながら逃げ回りました」
「くまさんおぱんちゅを咥えながら魔王城のなかを走り回ったのか……因みに魔王様は女なのか?」
「ロリです」
「女なんだなよか……」
「ロリです」
俺は彼女の話を聞き届けた後、少しずつ息を吸う。
肺胞のすべてがパンパンに膨れ上がるまで息を吸った後は簡単だ。
大声でこう叫ぶだけ。
「変態だあああああ!!」
「なっ!?防音結界!」
言うが早いか、俺とクリアの回りに展開されたのは群青色の半透明なドーム。
しかし俺にはそれがどういう原理でどうなっているのか全く分からない。
俺も魔術を学ぶ機会はあったが、如何せん陰陽術至上主義。
使えなくなった陰陽術にすがりついていたらいつの間にか置いていかれていた。
バカだったとは思うが、俺は陰陽術を愛しているのだ。
なんの取り柄もなく、一人も見方が居なかった俺を支えてくれたたった一つの長所だったから。
「いきなり何を言い出すんですか」
「丸々返ってくるぞ」
白け面で俺が言うと、クリアは仕切り直しとばかりに咳払いをした。
「ごほん。
ということで、私がこのまま弱体化した貴方を連れ帰っても魔王様のお心は晴れないでしょう」
くまさんパンツのしょんべんロリの心なんて今雨が降ってても五秒経てば晴れだろうが……
なんで俺こんな真面目に話聞いてんだろ。
「はぁ……んで?」
段々と飽きてきた俺は、あくび混じりに続きを問い出す。
「貴方には本来の力を取り戻して頂きます」
「無理だ」
間髪入れずにそう告げると、クリアは少し驚いたような声色で俺に言ってきた。
「……何故でしょうか?
ラレリア帝国での立場がある私が一緒になって力を取り戻す手段を探すと言うのだから貴方にとってもいい機会だと思うのですが……
力さえあればこんなところに居なくても衣食住は保証されますよ?」
クリアがどうにも検討違いなことをいってくるものだから、俺は心の中で嘲りながら彼女に話す。
「嫌だ、って言ってんじゃねえよ。
無理だって言ってんだ。
陰陽術っていうのは魔術とは違う。
術式の発動方法からその効果に至るまで似ているようで根本から違う。
どのくらい違うかって魔術で風を起こすのと自然に風が起こるのぐらい違う。
魔力と霊力っつうのは似ているが全く別物だ。
魔力を持っている人間に霊力が宿るわけじゃねえ。
霊力っつうのは病気でもない限りどいつにもこいつにも宿る魔力とは違って生まれつき宿る奴と宿らねえ奴が居るんだ。
というかこの世界に来てから霊力を持っている奴を一度も見たことがねえ」
俺は一旦言葉を切ると、彼女が自分に指を指して、私もですか?というようにジェスチャーしていたので説明を続ける。
「勿論お前も然りだ、魔力はえげつねえほど持ってるのかも知らねえが霊力に関しちゃ欠片っぽっちも見当たらない、先天的に霊力を持っていないって訳だ。
そしてそれは俺もだ。
この身体にはどうにも霊力が宿ってすらないようでね。
それに、俺の元居た世界でも霊力のない人間に霊力を与える方法なんてもんはなかった。
つまりどういうことか分かるか?」
俺は彼女に聞くと、彼女は眉を潜めたバージョンの無表情で唸る。
「つまり魔王様の願いを叶えるためには……
そのいんようじゅつとやらを使た頃の貴方の体を見つけ出して魂を入れる等と言う蘇生すら簡単に思える難易度の所業をやってのけるか、魔力も体躯も貧弱極まりない貴方を鍛え上げて世界最強の魔王と戦えるまでにするかしかない。
ということですね」
一々言葉に棘が合って不愉快だが、まあそういうことなのだ。
俺だって転生した後十余年は諦めきれずに何とか力を取り戻せないか方法を探したが、見つけられなかった。
今はそれどころじゃないからどうしようもないけどな。
「まあそういうこったから諦めて他を……」
「じゃあ前者の方法で行きましょう、貴方が今から修行したって1000年あっても魔王様には勝てませんもの」
「は?」
ぎゃぐてきなようそはかいむにするつもりだったのだがついついやってしまった。
はんせいとこうかいのえくすとりーむはりけーんなっくるぶっくまーく。