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あれ?今回誰もクズってない……かなしい

「成る程、そういう訳でしたか。

理解しました」


俺が嫌なことを思い出していると、後ろからそんな声が聞こえてきた。


「な……!?」


とっさに振り向くと、今まで見たこともないくらいの絶世の美女がそこにはいた。

身長はヒール込みで170前半くらいで、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる豊満な肢体。

薄く紅色に塗られた唇にぱっちり開いた大きな琥珀色の眼、雪のように白い肌はきめ細かく手入れがなされている。


髪型はプラチナ色のショートヘアだったが、髪の毛の一本一本が重力に逆らうことなく真下に向かって伸びており、もともとストレートの人が縮毛矯正した挙げ句にストパーでもかけたような感じになっている。


服装は何かのコスプレかと思うほど露出が多い紫色のショートドレス。

しかし、無表情というよりか無感情と言った方が差し支え無さそうな彼女に妙に似合っていた。


「……何者?

何の気配も感じなかったんだけど?」


長々と描写したものの、俺は美人に鼻を伸ばすようなことはしないタチだ。

睨み付ける目線が胸部に行くことなんて正直あり得ない。


「まぁ、随分と自己評価が高いご様子ですね。

別に私でなくとも貴方を後ろから刺すことなんて容易だと思いますが……」


そう言って俺を見る謎の美女。


俺が座って彼女が立っているのだから必然的に彼女が俺を見下ろす形になるわけだが、絶対零度と揶揄されそうな程に感情の起伏を感じさせないその双眸は、明らかに俺を見下している。


そんな下らない事で最近よく下る腹を立てた俺は、立ち上がって彼女を見下ろす形になる。


俺の身長は175センチ、この世界では低い方だし181あった前よりも低い。

それどころか身体スペック全てに於いて劣っているわけだが、これに関しては正直俺の行動によるものが大きいだろう。


「地面からの距離じゃ人の価値は図れないと思いますよ……


まあ私は、人ではありませんけど」


俺の心を当然のように読み当てると、彼女は背に一対の翼を開いた。

それは、俺にトラウマに近しい物を植え付けた人擬きのような純白のものではなく、赤黒く染められた趣味の悪いコウモリの羽みたいなものだったが……






「ラレリア帝国軍軍部総括兼ラレリア城メイド長、

エイル・レーヴァ・クラミリ・B・ロッテルクリア・ミロル・イアハート、と申します。

気軽にクリアとでもお呼びください」




彼女は俺から一歩距離を置き、そのままショートドレスの裾をつまみ一礼する。


これが魔界流の挨拶なのかどうかは知らんが、今の俺に気の利いたことなど返せる筈もないのだ。

彼女の洗練された仕草を見て……


「は?」


なんて間の抜けた声を溢す以外なかったのである。


「魔王様の勅命で異世界最強の魔術師様をお迎えに参りました……が、この調子だと魔王様の願いを叶えられそうにはありませんね」


俺はもう頭がずぼらな人間が住む部屋のコンセント付近みたくこんがらがっていた。

話が飛躍しすぎて訳がわからない。


まず魔界と人間界、これは実際に次元が分かれているとかいうことではなく、魔族の住む土地と人族の住む土地を区分けするためそう呼ばれている。


人族と魔族は遥か昔からお互いに差別意識を持っていて緊迫した状況が続いているが、双方自界の統一を果たせていないためそれどころではない。

20年程前に人族側の主要国家と魔族側の当時ほぼ全ての国家で不可侵条約が結ばれてから今に至るまでそれは破られずに続いている。


因みにこれは人族と魔族での不可侵条約であって、人族同士と魔族同士は普通にドンパチやりあっているのだが……


その中でもラレリア帝国といえば大国中の大国。

俺が今いるクライトル王国が日本だとすれば、ラレリア帝国はロシア。

そんな国のお偉いさんが、異世界から来た最強魔術師を迎えに……?

俺のことか、いや俺のことなんだろうが……


ここで俺は新たな疑問を覚えた。

俺は異世界に転移してきたわけではない。

転生したのだ、理由はよくわからないが。

つまりまぁ俺は赤子の時から今の年齢に至るまでこの世界ですくすくのびのび、とは決して言えないがまあ育ってきたわけで、今さら来る理由がわからない。


「……いくつか質問がある。


まず一つ、どうやって転生者の俺の存在を知ったか。

次に、ラレリアの魔王様とやらは一体何が目的なのか。

一番最初に言った、成る程、とはどういう意味か。

何故今さら俺のところに来たのか。

最後に、なんでお前みたいなお偉いさんを寄越してきたか。


答えられねえってんならお引き取り願おうか、さもなくば手は借りたくねえが騎士共に突き出す」


俺はそんな疑問を整理するために目の前の白金ショートヘアに質問攻めを開始する。

しかし、彼女はそんな俺を見て少し呆れたように目を細めた。


「信じるんですね……我ながら途方もないようなことを話している自覚はあるのですが……

まあその単純さこそ、貴方がここで這いつくばってる理由とも言えましょう。


いいでしょうお答えします。


まず一つ目の質問についてですが、魔王様が圧倒的な力を持つ存在の戦闘を感知したからです。

この時それが世界の外よりのものであると、仰っておりました。

そして戦闘が終わって数週間後、この世界にその存在の因子が落ちてきた、と。


二つ目の質問については、まあ簡単な話です。

魔王様は退屈していらっしゃいます。

せめて自分と戦って1分でも持つ相手を探し続けて何百年、諦めかけた時に見つけた最高の遊び道具。

血眼になって探すのも当然でございましょう。


三つ目に関しては、別にたいした理由ではありません。

これです」


彼女がそう言って手元の空間から取り出したのは、大型のハンマー。

おいおいどういうことだ……?

それで殴られたら心を読まれるとかか?

殴られた覚えなんてねえぞ……


「カマを掛けました。

人の心を読む特殊能力なんてものを想像なさったのかも知れませんが……

読心、蘇生、転移、時間操作はどんな特殊能力でも魔道具でも魔術であっても不可能です。


この魔道具は相手の頭を叩くとダメージを与えることなく記憶を消すことができる。

我が国の国宝です。


一人ずつカマをかけ、違ったらこのハンマーでぶっ叩くのです。


私はこの方法で貴方がこの世界に来てから十数年の間、この方法で探し回っておりました。

ある意味、待ち望んでいた出逢いとも言えるでしょうね」


彼女はそう言いながらも、全く待ち望んでいなさそうな無表情でそう告げる。


それでも綺麗に見えてしまうんだから、美人というのは得だ。



















いや明らかにバカだろこいつ。


じわとーこするとき、もじすーがみえない。

これはゆゆしきじたいだ。


これはもうぜんべいがぶくまするしかない。

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