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主人公にクズる女神様

「はぁ……やってらんねえよなぁ」


俺はどこを目指すでもなく歩き続け、遂に疲れてその場にへたれこんでしまった。


「ったく……お高く止まりやがって……

不愉快極まりないね」


先程の姫騎士のことを思い出すと、少しやるせなくなる。


「全くどうしてこんなことに……」


俺は、自然と自分がこうなった経緯を思い返してみた。




-------------


あれはいつものように妖魔の類いを片手で蹴散らした後の帰り道だった。

俺はコンビニでおにぎりを1つ買って帰宅する途中だった。

はずなのだ。


いつも使う信号をおにぎりを頬張りながら待ち、青になった信号を渡りきった瞬間……


「は?

……なっ!?妖魔か!?」


俺が見たのは背中から羽の生えた美しい少女だった。

そして回りは一面の白に包まれ、ここが現実と隔離されていると気付く。


一目見て、彼女から自分への敵意を感じ、高位の妖魔かなにかだと判断した俺はそれに殴り掛かった。

霊力の薄い膜で体を覆えば、人外への物理攻撃が可能になる。

世界で唯一無二の俺オリジナルの陰陽術式な訳だが、まあその話は置いておくとしよう。


俺は飛ぶようにして相手への距離を詰め、固く握った拳を叩き付けるように投げ出す。

こういう時はとりあえず速さが大事なのだ。

一回怯ませれば後はボコ殴りにして終わり。

人間ならまだしも妖魔は体を使う技術なんて皆無に等しいからな。

鍛え上げた肉体と磨き上げた霊力を扱う技術と格闘技術の賜物だ。


「俗物よ、沈め」


彼女が言葉にしただけで体に異常なまでの負荷が掛かるが、俺は世界最強である。

沈めといわれて沈むような柔な体はしていない。


「誰が沈むか……よ!」


「……っ!?」


体制を持ち直した俺を見て、羽つき少女の顔が驚愕の色に染められる。

生憎俺は人間やめてるからな。

相当な負荷が掛かっていることは想像に容易いが、耐えなきゃ死ぬって分かってる。


脳内麻薬を意図的に分泌させるような感覚で気持ちを昂らせ、彼女の頬に一撃叩き込む。


「ぐっ……!」


羽つき少女は殴られた拍子に体が傾くが、どうやら深手を負わせるには至らなかったようだ。


「けどま、それで充分よ……」


俺は彼女を蹴り倒し、腹の上に馬乗りになった。

そして両の手首を片手で掴み、彼女の頭の上の床に押さえつけて抵抗を封じる。


「質問に答えな、お前は何者だ?

触れてみて分かったが妖気が一切感じられねえ、頭を文字通り破裂させる勢いで殴ったのに倒れもしねえ、後その殺意剥き出しの目、妖魔というよりかは人間に近いような気がしないでもねえな……」


俺は刺々しい視線に刺されながらも、絶対的優位が崩れない内に状況の整理を図ろうとする。


「……低俗で野蛮な下等生物如きと一緒にするでない。

我が名はグライトリア、神族である。


そして矮小な存在たる貴様に命ずる。

あの世界から去れ」


彼女の艶かしい唇から発せられたそんな戯れ言に、笑うしかなかった。


「……ぷっ。

ふはっ、あっはっは!

おもしれえ!

矮小な存在に組伏せられてる女神様……っぷ」


もう女神様の顔は真っ赤である。


「冗談だろおい……なぁ女神様?


煽り文句も相手を考えろよ?

悪いが俺は紛れもなく最強なんだ、神にだろうと悪魔にだろうと負けるわけがないだろう?」


顔を赤くして額に青筋を浮かべていた女神様だったが、俺の台詞をきいて余裕を取り戻したかのように落ち着き払って話し始めた。


「……そうだ……認めよう。

貴様は最強だ。


地球と言う惑星全体のパワーバランスを壊すほどまでにな。


それ故に、だ。

神族議会によって貴様を葬る事が満場一致で決議された。


決定事項だ。

世界のために死ね、矮小なる最強よ」


は?

と思ったのも束の間。


いつの間にか俺の回りを尋常ではない量の空を浮遊する兵士達が囲んでいた。

数を言葉で表すなれば、文字通り数万の軍勢。

見たままを言うなれば、最早その様は群がる羽虫の如く。


一人一人が目の前の女神を自称する羽つき少女に匹敵する強さを持っているのだと理解する。


「え……」


静まり返る空間の中、一際目立つ装飾の施された衣装を着る男が大声で叫ぶ。


「平穏を乱す異端児に正義の鉄槌を!

均衡を崩す特異者に神の雷を!


全軍!突撃せよ!」


----------------




「……うっ!!」


そこから先は思い出すだけでも身の毛のよだつ光景だった。

殺しても殺しても無限に沸く軍隊。

その上一人一人がとてつもない強さ、当時は段々と身体と精神を疲弊させていく自分の姿がとてもちっぽけに思えたというもの。


しかし、俺にとって一番の恐怖だったのはそんなことではない。


数万人の一人一人が俺個人に対して明確な殺意を持って殺しに掛かってくるのだ。

人間はどんな状況であっても多数には叶わないのだと思い知らされる。


そして数時間近く経ったその時、俺の体は引き裂かれ貫かれ千切られ焼かれ、二度と地に足をつけて歩けなくされていた。


最期の時、俺の痛々しくなった姿を見て狂喜乱舞する奴らを見て、俺は初めて神に救いを求めた。


目の前で騒ぎ散らす外道共が神なのも忘れて、だ。

我ながら矛盾してると自嘲したのは、転生後十数年の月日が経っても笑い話にならない。

ぜんべいがないた。

ぜんおれがすっきりした。

ぜんゆーざーがぽいんとひょうかとぶくました。

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