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初恋の君へ

作者: dark


 最初に、この手紙を読んだら、捨ててほしい。それだけは約束してほしい。


 手紙を書いた理由は私がどういう人間だったのかを知ってほしいと思ったから。誰にも伝えられないことを書いて、気を楽にしようと思ったから。


 あなたはこの手紙を読むと気味悪がると思う。忙しいと思うし、無理に読んでほしいとも思わない。


 もし、読んでくれるのであれば、もう私は大丈夫かもしれないが、私を助けてほしい。




 この手紙を読んでいるということは、あなたに会って直接渡すことしかできないから、再会していることだろう。あなたとの再会を心から楽しみにしていると同時に、申し訳なく思う。あなたはどう思っているだろうか?

 久しぶりに会って話そうと思ったのは、「あなたが元気そうにしている姿を見たかったから。あなたが今何をしているのか気になったから」と答えるだろうと思う。多分、薄っぺらな理由だけしか、会ったときは話さないと思う。あなたとの再会を楽しい思い出とするために。


 本当の理由は、安心したかったから。あなたは元気に暮らしているということを確認したかったから。



 手紙を渡す前に、何の話をして、どこまで話しているか分からないが、私は鬱病になった。何をするにもやる気がでない。今後どういうことを仕事にしていこうか。どういうことが自分には向いているのか。何がしたいのか。そもそも私は何のために生きているのだろうか。常に疑問に襲われる。その疑問から逃げるように、ベッドに籠るようになった。しかし、眠れない。悪夢を時々見てしまうから。


 あなたと別れたのは大学1年のときだから、時間も経過し、あなたとの記憶も薄れてきている。遊園地に行ったこと、水族館へ行ったこと、京都旅行をしたこと、楽しかった思い出として残っているが、少しずつ消え去り、今ではあまり覚えていない。本当にごめんなさい。

 そして、あなたと別れた夜の、あの電話の会話は正直何を言ったか覚えていない。別れたくなくて必死に何かを言ったような気がするけれど、「別れよう」と言われたショックが大きすぎて混乱していた。本当に今思うと、馬鹿な奴だと思う。


 あなたと別れた次の日も普通にバイトだった。しかし、あなたのことなど忘れて、普通に仕事が出来てしまった。バイトの内容が辛いせいだとは思うが、私には別れを悲しむ心がないのかと同時に疑問に思った。

 よく考えれば、あなたと私は違う大学へ進み、ときどきしか会うことができなかったし、月に1度か2度くらいしか会えなかった。今更だけど、その時点で気づけばよかったけど、私があなたを幸せにできるわけがないじゃないかと思うようになった。別れて正解だと思うようになった。その時に、悪夢を時々見るようになった。



 悪夢の内容はあなたには失礼かもしれないが、あなたが「私を幸せにできなかったのに、あなたは幸せになるの?他人を幸せにできるの?」と私を抱きしめ、耳元に囁いてくる。


 この夢を見たとき、最初は別れたショックのせいだと思っていた。時間が解決するだろうと思っていた。けれど、月に1度か2度くらいはその夢を見ていた。どうすれば見なくなるのかを考えたとき、あなたの幸せそうな姿を見れば解決するだろうと思った。成人式の同窓会の綺麗な姿を見て以来は、その夢を見なくなった。けれど最近になって、また見るようになった。だから連絡して会って話がしたくなった。幸せなのかを確認したくなった。


 そして、今日あなたと会い、あなたとお話ししているのだろう。私は、あの時と変わらず笑顔で話ができているだろうかと不安になるが、この手紙を読んで、私のことを気味が悪い人間だと思っただろう。私の笑顔の裏には、そんなことを考えていて、幻滅しただろう。私は今日、救われたかどうかは分からない。あなたへ申し訳なく思ったので、手紙を書いた。



 続きを書こうと思ったけれど、これ以上は長くなりそうなので、止めておこうと思う。続きが知りたいなら、またいつか会いましょう。



 最後になったけど、突然の連絡でも会ってくれて、本当にごめんなさい。


 そして、ありがとう。


閲覧していただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まですんなり読めました。 [気になる点] その後が気になります! [一言] 別れても好きな人っていますよね。 きっと元カノもあなたの事を思い出すタイミングはあるはずです。 その時に良い…
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